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軍事・危機管理のプロが岸田総理に建言「国家安全保障」の新戦略

ある日突然、隣国の軍隊が侵攻してきて国土を蹂躙するという現実を目の当たりにしている現在、我が国の「有事」への備えに不安を感じてはいないでしょうか。今回のメルマガ『NEWSを疑え!』では、軍事及び危機管理の専門家として多くの提言を行ってきた小川和久さんが、国家安全保障戦略を見直すと明言している岸田文雄総理大臣への手紙の体で、「外交・安全保障」「安全保障」「災害対策」「サイバー・セキュリティ」に関する現下の課題と対応策をまとめて建言しています。

内閣総理大臣への手紙

内閣総理大臣・岸田文雄様

単刀直入に申し上げます。ウクライナ、台湾、北朝鮮と日本を取り巻く国際環境の動きも激しさを増し、国内的にも地震、津波、火山噴火、原子力事故などの災害対策、デジタル社会の実現に向けたサイバー・セキュリティ、そして新型コロナウイルス感染症対策など、推進すべき政策課題は山積しております。

しかしながら、残念なことに日本の政策は国家的司令塔機能を欠いた縦割り行政に阻まれて、どれもが弥縫策、パッチワークに終始し、実効性を欠くばかりでなく、はなはだしい税金の無駄遣いが放置されております。

以下、「安全なくして繁栄なし」の視点から、諸課題の優先順位を箇条書きで述べさせていただきます。

【外交・安全保障】

(1)尖閣諸島の領有権について、エストッペル(禁反言)の法理に基づき国際社会に強く発信し続け、同時に国際司法裁判所への提訴について、中国が嫌がろうとも対応を求め続ける。

(2)日中漁業協定の棚上げ海域のうち、尖閣諸島周辺の適用除外海域については、エストッペルの法理から見ても日本の領海であることを国際社会に強く発信し、協定の改正を求め続ける。

以上の(1)と(2)については、世界に日本の要求が届き、理解されるよう、中国の顔色をうかがうことなく、求め続けることが肝要です。

(3)領海に関する国内法を新たに制定し、少なくとも中国、ベトナムの領海法なみに強制力の執行を可能とする。

【安全保障】

(1)弾道ミサイル防衛につき、新たな装備が導入されるまでの間は、戦場で友軍の支援を求めるのと同じ発想で、米海軍のBMD対応イージス艦を日本側の負担(費用、人員)で配備し、「いまそこにある危機」に対処できるようにする。

(2)反撃力として敵の先制攻撃を抑止する能力を打撃力として位置づけ、量的には韓国のキル・チェーンの規模などを参考に海上自衛隊の艦艇と陸上部隊にトマホーク級の巡航ミサイルを配備する。

(3)核抑止力については、非核三原則のうち「持ちこませず」を「有事持ち込み」に変更し、米国の核の傘による抑止機能を万全なものとする。

【災害対策】

(1)米国の連邦緊急事態管理庁(FEMA)などを参考に、感染症対策を含む災害への司令塔機能を整備する。「屋上屋を架すがごとし」とする反対論は根拠がなく、容易に論破できるものばかりである。まずは小規模なチームを発足させ、実務の中で適正な規模に整備していくことが現実的である。

(2)米国の疾病対策予防センター(CDC)に相当する組織を日本版FEMAの外局的な組織として発足させる。

(3)日本には1個所も存在していない危機管理要員の教育訓練施設を関東、関西などのブロックごとに設置、国家的な災害対策能力の向上を図る。米国、台湾などに参考にできる組織が存在するが、小規模な予算で効果を得ている。

(4)首都・東京の抗堪性を高めるとともに、関西圏に副首都を建設し、東京とのホットバックアップにより災害時に国家機能が継続できるようにする。

【サイバー・セキュリティ】

(1)先進国で最も遅れている日本のサイバー・セキュリティを国際水準に向上させるため、国際的な専門家からなるチームを発足させ、あらゆる角度から日本の脆弱性を探り、リアルタイムで対策を講じていく。日本の水準に甘んじている限り、重要インフラを防護できず、デジタル社会は絵に描いた餅に終わる恐れがある。

岸田総理。以上はすべて、専門家の一員として私が関わったことばかりで、その分野の官僚や専門家も認め、また反論できなかったものばかりです。必要とする予算も驚くほど少なくて済みます。

しかし、これを実行に移すことができるのは内閣総理大臣をおいて他にありません。どうか、省利省益をこえ、国益のために同時進行させるだけの政治力を発揮していただきたいと思います。

国家安全保障戦略に上記が盛り込まれることを期待しております。2022年3月7日(小川和久)

image by: 首相官邸

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地方新聞記者、週刊誌記者などを経て、日本初の軍事アナリストとして独立。国家安全保障に関する官邸機能強化会議議員、、内閣官房危機管理研究会主査などを歴任。一流ビジネスマンとして世界を相手に勝とうとすれば、メルマガが扱っている分野は外せない。

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