MAG2 NEWS MENU

失脚どころか死の危険。プーチンの生命はキエフ遠征部隊の勝敗が握る

ロシアの圧倒的な軍事力の前に、時間の問題と思われていた首都キエフの陥落ですが、侵攻から2週間以上が経った3月14日現在、未だロシアの手に落ちることなくウクライナ側の激しい抗戦が続いています。12日に行われた独仏首脳との電話会談でもプーチン大統領は戦争をやめる意志を示さなかったとのことですが、戦闘はさらに激しさを増すことになるのでしょうか。今回のメルマガ『国際戦略コラム有料版』では日本国際戦略問題研究所長の津田慶治さんが、ロシア軍がここまで苦戦を強いられている原因を考察。さらにこの戦争に負ければ命がないプーチン大統領が、キエフの帰趨如何によっては停戦に動かざるを得ない状況に追い込まれるとの考えを示しています。

【関連】無理心中も同然。戦に負ければ殺されるプーチンが核ボタンを押す瞬間

国内外の動向をリアリスト(現実主義)の観点から予測・評論する、津田慶治さんのメルマガ詳細・ご登録はコチラ

 

キエフへのロシア遠征軍が窮地に

ロシアがウクライナに侵攻して、2週間以上がたち、南東部の侵攻は順調で中部に拡大しているが、ベラルーシからキエフを目指したロシア軍が、ドローン攻撃とウクライナ軍の善戦で、キエフ包囲の侵攻が遅れている。前回の「無理心中も同然。戦に負ければ殺されるプーチンが核ボタンを押す瞬間」に続き、この戦争と世界構図を検討しよう。

在米ウクライナ大使館へ外国人部隊志願の米国人は6,000人で、うち半数は兵役経験が無い等の理由で断念させ、およそ100名がポーランドに向かっているという。米国からの参加者は多くて1,000名程度になるようだ。

ウクライナ軍の練度が問題であるが、それをカーバーするほどの能力がある義勇兵は、多くは来ないかもしれない。

しかし、ウクライナ国民は、「ロシア撃退可能」が9割となり、それを裏付けているのが、現状の戦闘状況のようである。ゼレンスキー大統領も「われわれはすでに戦略的な転換点を迎え、目標に向かって、勝利に向かって進んでいる」という。そして、米傭兵会社は、すでに戦闘能力のある200人以上の傭兵をキエフに送っている。

プーチンは戦争に負けると命が危ないので、勝っている局面でキエフ遠征部隊の弾薬が尽きる前には戦争を止める必要がある。

また、露連邦保安庁(FSB)の情報機関のトップらを自宅軟禁処分として、ウクライナに関する誤った情報を報告した罪とした。そのほか、開戦に反対したロシア軍の将官8人前後がすでに解任されたようだ。政権の内部粛清が開始されて、この戦争の失敗を部下にかぶせている。

逆に、ナビウリーナ中央銀行総裁は辞表提出したが、受領拒否されている。中央銀行の外貨準備の多くをロンドンなどに保管していたが、その資産を凍結されてしまった。侵攻を事前にナビウリーナ氏に知らされずに、大失態になっている。

その心情をベラルーシのルカシェンコ大統領に、停戦は近くなったと話したような気がする。プーチンも自己の失敗を徐々に感じているようだ。

ベラルーシ軍は、ロシアの要請でもキエフ遠征軍の支援を拒否し、軍の300人がウクライナ義勇兵として、ロシアと戦うという。軍の拒否でベラルーシからの補給ができなくなっている。しかし、プーチンは、強引に補給やキエフ遠征部隊の援軍をルカシェンコ大統領に求めた。このため、ベラルーシの参戦も考えられる。

「人道回廊」で停戦したが、停戦時に補給路も安全になるので、補給が進むはずが、その後の戦闘でも激化していない。キエフ遠征軍の被害が大きく、補給もないようだ。

戦車と一緒に輸送隊も多くのトラックに食糧や弾薬を積み込んでいたので、この物資がいつ尽きるのかは分からないが、ドローン空爆や対戦車ジャベリンや多数の兵器で、破壊が進んでいるようだ。1日10台を破壊したとすると、10日で100台になり、遠征軍の多くを破壊できる。それが証拠に、車列がなくなり、攻撃を避けるために森に退避している。一部は泥濘に嵌り動けなくなり、放棄した車両もある。

国内外の動向をリアリスト(現実主義)の観点から予測・評論する、津田慶治さんのメルマガ詳細・ご登録はコチラ

 

しかも、ロシア製のイグラ型携帯型防空システム(MANPAD)がポーランドやルーマニアなどから多数、ウ軍に供与されて、ウクライナ軍将兵は使い慣れているので、それでロシア軍機を打ち落としているので、ロシア軍機の支援をキエフ遠征隊は受けられないようである。

しかし、最新鋭の兵器が苦戦なのに出てこない。何かが変である。最新鋭戦闘機はどこにあるのか、古い防空システムを潜り抜けるはずが、どうもロシア軍近代化の多額の費用は、将軍や政治家の汚職で、ほとんど実戦部隊の装備には回っていないようである。軍備は古い。1980年代以前の兵器が多い。

このため、キエフ遠征隊は2002年に期限切れの食糧を配布されただけで送り出されている。ロシア軍が弱いのは、将軍や政治家が汚職の限りを尽くしたからで、ウクライナは汚職に助けられたとも言える。

反対に、欧米諸国から多量の兵器がウクライナ軍に供与されて、それが戦場で使われている。いつか、戦況が逆転しそうな予感がする。ロシアは、いらだち、米国からの兵器輸送に対して攻撃すると宣言し、また、同盟国軍であるイラン軍に、クルド人自治区アルビルの米軍基地を攻撃させたり、戦線拡大も視野に米国との対決をも辞さないようである。

しかし、NATO加盟国もロシア軍に対する評価を一変した。通常戦では、ロシア軍には負けるはずがないとなった。ロシア、恐れるに足らずである。ソ連復興というプーチンの戦略全体が崩壊したようである。

それと、戦車を守る歩兵を十分に付けないために、戦車は対戦車ミサイル・ジャベリンの餌食にされている。ロシア軍の戦術面での欠陥も指摘されている。

そして、つい最近は、カラのトラックが放置されてるのをウクライナ軍が捕獲している。相当な物資が消耗されていることがわかる。

これは、どうも、キエフ遠征部隊が窮地にあるような気がする。

このため、早くキエフを攻撃して、キエフを陥落させる必要になり、攻撃を急いでいる。キエフ包囲のため、南に回り込みたいが、ウ軍の抵抗も強くて、なかなか進まないようであるが、キエフから15キロの地点まで来た。

この状況で勝っている東南部のロシア軍は、中部地域に進軍して、キエフ遠征隊を助ける必要があり、急いでいる。それと誘導ミサイルがなく、無誘導の爆弾になり、航空支援もない。軍近代化費用が汚職されて、十分なミサイル数もないことが判明した。汚職で普通の弾薬もなくなる可能性も出ている。軍事予算の多くが汚職で豪華なヨットに化けていたようだ。

このため、ロシア軍の装備も兵数が足りなくなり、シリア兵と装備を投入するが、言語が通じないので前線には投入できない。シリア兵だけで組織した軍団を作るしかない。または、戦線が伸び切っているので物資の輸送路の守備しかできない。ロシア兵と連携した戦闘はできないからだ。

しかし、まだ、ベラルーシ軍の参戦の可能性や相当な物量があるので、キエフを陥落させることもできる。すると、親露の傀儡政権を立てられるが、もしキエフ遠征隊の部隊全滅になると、負けたことになり、プーチンの生命が危うくなる。

その前には停戦する必要がある。キエフ陥落を目指すが、全滅はできない。この微妙な段階になっている。このため、ロシアとウクライナはオンライン形式による直接の停戦交渉を開始した。

キエフの攻防が勝敗を決め、停戦になるはず。その条件は、キエフの帰趨如何であろう。

しかし、ロシア軍がキエフを落として親露政権を立てても、ゼレンスキー大統領が、西部の都市リビウに逃げ、そこでゲリラ戦を長期に指揮すると、ロシアの国内経済が貧困化し、兵器弾薬も尽きていくことになり、長期戦での体力があるかどうかでしょうね。ということで、停戦がどこかで必要になる。

GDPが世界11位の国家は、どこまでゲリラ戦を戦えるのかは分からない。GDPトップの米国でさえ、ゲリラ戦では10年持たないからだ。

さあ、どうなりますか?

国内外の動向をリアリスト(現実主義)の観点から予測・評論する、津田慶治さんのメルマガ詳細・ご登録はコチラ

 

image by: Drop of Light / Shutterstock.com

津田慶治この著者の記事一覧

国際的、国内的な動向をリアリスト(現実主義)の観点から、予測したり、評論したりする。読者の疑問点にもお答えする。

有料メルマガ好評配信中

  メルマガを購読してみる  

この記事が気に入ったら登録!しよう 『 国際戦略コラム有料版 』

【著者】 津田慶治 【月額】 初月無料!月額660円(税込) 【発行周期】 毎月 第1〜4月曜日 発行予定

print

シェアランキング

この記事が気に入ったら
いいね!しよう
MAG2 NEWSの最新情報をお届け