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黒幕は習近平か。露のウクライナ侵攻で台湾併合への士気を高める隣国の目論見

国際常識の範疇を大きく超え理解に苦しむプーチン大統領のウクライナ侵攻ですが、そこには「黒幕」の存在があるようです。その正体を習近平国家主席だと断言するのは、外務省や国連機関とも繋がりを持ち国際政治を熟知するアッズーリ氏。アッズーリ氏は今回の記事中に数々の「証拠」を挙げ、「習近平黒幕説」を立証しています。

ウクライナ情勢で士気を高める“黒幕”習近平

ついにプーチンがウクライナへの侵略という戦争を始めた。プーチンは長年苦しめられたロシア系住民の保護を目的とした軍事行動、要は人道的介入として正当化しようとしているが、これは明らかな国際法違反だ。多くの国際政治学者の間では“冷戦終結”、“冷戦後”など冷戦が終わったとのイメージが強いが、本当に冷戦は終わったと言えるのか。“冷戦敗者シンドローム”という病気に罹ったプーチンにとって、冷戦後どんどん東に拡大するNAT0は持病を悪化させる慢性疾患であり、ウクライナの問題で症状が一気に爆発したのが今回と言えるだろう。だが、今回のウクライナ侵攻はプーチンを巡る動向だけで終わらないだろう。要は、この問題にはプーチン以上の黒幕がいるのだ。その黒幕とは、中国の習近平だ。

習近平は今回のロシアによるウクライナ侵攻をどう思っているのだろうか。それを探る上で最近プーチンが発した言葉ある。ウクライナへの侵攻直前、プーチンは、「ドネツク人民共和国とルガンスク人民共和国を独立国家として認める。ウクライナはロシアにとって単なる隣国ではない、ロシアの歴史、文化、精神的空間とは不可分なのだ」と発言したが、これは台湾について習近平が言及する内容と極めて似ている。これまで習近平は、「台湾は中国の内政問題で不可分の領土であり、中国の核心的利益だ。諸外国の如何なる政治的干渉も許さない、祖国の完全な統一は必ず実現しなければならない歴史的任務であり、そのためには武力行使も辞さない」と繰り返し発言している。習近平を筆頭とする中国共産党は長年にわたって内政不干渉を強調してきたことから、これまでのところ、ロシアによるウクライナ侵攻についてはそれを支持する言及はせず、“理解する”という文言にとどめている。

しかし、これは習近平に行動の自由を与えることになる恐れがある。要は、「冷戦敗者シンドロームに罹るプーチンは外国であるウクライナに侵略したが、台湾はそもそも我々にとって外国でもなく国内の一地域だ。よって、台湾に軍を進軍させたからといって諸外国にあれやこれや言われる資格はない」と習近平は考えるであろう。

中国にとって重要なケーススタディとなるウクライナ戦争

既に台湾は、ロシアのウクライナ侵攻を台湾への侵攻に繋げようとする中国への警戒感を高めているようだ。台湾の蔡英文総統は、ウクライナを支持し、ロシアを批判する立場を明確にしているが、特にロシアのウクライナ侵攻によって中国が士気を高めることを意識し、台湾海峡周辺における警戒を強化するよう軍に指示した。

しかし、それは台湾だけではない。日本や米国、オーストラリアなども同様だ。ウクライナ周辺と台湾周辺では地政学的環境も米軍の規模も大きく異なり、中国がすぐに海洋覇権をエスカレートさせるわけではないだろう。だが、中国にとって台湾海峡や西太平洋は自らのお庭であり、米中の軍事力が拮抗している環境下では、中国にとってウクライナ問題は台湾侵攻を考える際の重要なケーススタディとなろう。米国や日本、オーストラリアなどはいっそう中国への警戒感を強め、対中国軍事包囲網を強化する必要がある。

一方、経済面においても、習近平はロシアを支援する方針を明らかにしている。習近平は2月、「プーチンは台湾の武力統一に我々に支持を表明したことはないので、我々は当面の間はウクライナへの軍事侵攻については態度を示さないが、米国など欧米陣営によるロシアへの経済制裁は明らかな違法であり、今後はロシアへの支援を強化する」との方針を明らかにした。トランプ時代から激化している米中貿易摩擦に加え、中国を唯一の競争相手と位置づけるバイデン政権が人権問題を軸に中国に強硬姿勢を取ることにより、米中対立は悪化の一途をたどっている。そして、英国やオーストラリア、カナダなど他の欧米諸国もそれに加わることで、中国を取り巻く経済状況はいっそう複雑さを増している。

ロシアによるウクライナ侵攻の影響は当事者間だけではない。既に、それは米国や中国を巻き込むグローバルな大国間競争の場であり、今後は経済力でロシアを圧倒する中国がどう出てくるかが注目される。ウクライナ問題の黒幕はプーチンではない、習近平だ。

image by: thelefty / Shutterstock.com

アッズーリ

専門分野は政治思想、国際政治経済、安全保障、国際文化など。現在は様々な国際、社会問題を専門とし、大学などで教え、過去には外務省や国連機関でも経験がある。

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