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プーチンが扉を開いた「戦争の時代」が“日本の時代”と断言できる訳

「戦争の世紀」と呼ばれた20世紀の反省から、国際協調の世紀となるはずだった21世紀。しかしその理想はプーチン大統領の蛮行により踏みにじられ、世界にはまたも不穏な空気が充満しつつあります。このような状況を受け「戦争の時代が到来した」と断言するのは、日本国際戦略問題研究所長の津田慶治さん。津田さんは自身のメルマガ『国際戦略コラム有料版』で今回、ロシアのウクライナ侵略により先進国の意識が「経済より安全保障」に大きく転換されたとし、今後世界は日米欧と中露それぞれのサイドに分断されると予測するとともに、巡り来た「戦争の時代」に日本はどう対応すべきかについて考察しています。

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ウクライナ軍の反撃とロシア軍の目標変更

ロシアはウクライナ侵攻後1ケ月で、中国の支援がないと戦争継続もできない。ロシアが継戦をするなら、中国の支援があることになる。その対応が次の焦点になる。その検討。

ロシア軍は、弾薬も食糧も足りずに、キエフ近郊から退却し始めた。この1ケ月で弾薬は在庫の半分程度を使い、誘導型ミサイルも消費して、在庫が少なくなっている。

一方でウクライナ軍は、欧米から軍事物資を供給されて、キエフ近郊でロシア軍を叩き、南部のヘルソンも奪還したようである。徐々に、ロシア軍を押し戻している。補給トラックの待ち伏せ攻撃と、停滞したロシア軍陣地を逆包囲し始めている。

しかし、東部マリウポリの半分は、ロシア軍に奪われた。このため、フランスのマクロン大統領は25日、ロシア軍が包囲するウクライナ南東部のマリウポリから市民を脱出させるための「人道的作戦」を数日以内に実施するとした。

マリウポリには、トルコ人やギリシャ人が多く、マクロン氏は「トルコ、ギリシャと協力し、マリウポリからの脱出を望むすべての人々を避難させる」と、その条件をロシアのプーチン大統領と48~72時間以内に会談し、整えるとした。

南部とキエフではロシア軍は敗退し、東部では勝っている状況である。

このため、ロシア国防省セルゲイ・ルツコイ作戦総司令部長は25日、ウクライナでの軍事作戦の第1段階がほぼ完了し、今後は同国東部に照準を移す方針を明らかにした。ロシア側に損害が広がり、戦況がこう着する中、戦略を変更したようだ。軍装備を集中化して、主力のウクライナ軍を撃破する方向にシフトした。

そして、ロシア国営通信社によると、ドンバス地域では現在、親ロシア派がルガンスクの93%、ドネツクの54%を掌握しているというが、こちらに戦略を集中して、戦果を上げる方向にシフトしたようである。また、ウクライナの戦闘でこれまでにロシア軍の死者は1,351人、負傷者は3,825人になったと発表した。

一方、ウクライナ軍の発表は、25日現在でロシア兵死者数は1万6,100人、戦車破壊数は561台である。

大きな損失の上に、停戦交渉の行き詰まりで、今後も継戦が必要であり、ロシアのショイグ国防相は、シルアノフ財務相に国防費増強を要求したが、ロシア軍の戦争費用が膨大であり、事前の予算では済まず、更なる費用調達が必要になっているようだ。

このため、ロシアとしては、中国の支援が必要であり、グロムイコ外相が中国を訪問して、一層の経済支援を要請するようである。しかし、中国もロシア支援で、欧米諸国からの制裁を受けると、輸出経済で国を支えているので、それもできない。

G20にプーチン大統領が出席希望というが、新興国での資源の売り先を探すのであろう。ロシアは資源の輸出先を探して、資金を得る必要になっている。その大きな先が中国とインドであろう。

しかし、中国は欧米諸国に貸しを作って、ロシアへ停戦を要求するしかない。そうしないと、中国も経済制裁の対象国になる。

このように、戦争経費がロシア経済の大きな重しになっている。経済制裁でインフレもすごいが、ロシア人はソ連崩壊で、同じことを味わっているので、耐えることができるようだ。

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経済の時代から戦争の時代へ

このコラムを始めたきっかけは、高校・大学時代の座禅で、大戦争で多くの人がなくなる光景を見たことであり、その時代が来ることを何とか防ごうとしたが、恐れていたその時代が来たようだ。

というように、時代が転換した。ロシアのプーチン大統領は、世界を変えたようだ。それまで戦争などは、発展途上国や中東のこと、ヨーロッパでは過去のことで、経済発展をグローバルに進めて、温暖化を食い止めることが重要であるとみなしていた。

このヨーロッパや先進国の主流的な意識を大きく変えることになった。経済より安全保障であるというように。

ドイツは、ロシアの資源活用で経済発展は可能であり、軍備に金をかけるより、温暖化ガス削減に回すべきだという意見が多かった。

しかし、ロシアのウクライナ侵攻で、その見方は破壊されて、軍備増強が必要であり、ロシアに資源を頼ることはできないとなった。

グローバル経済で工業生産のコストミニマムを目指して、工業を労働賃金が安い新興国にシフトしていたが、コロナ禍と戦争で物流網と生産が混乱して、物資の不足と価格の高騰を招き、先進国企業は、見直しを余儀なくされている。

企業も専制主義国でのビジネスが、突然の停止になるリスクを経験して、徐々に専制主義国から撤退することになる。自由主義国を選ぶか専制主義国を選ぶか、企業も選択するしかないようである。

ルノーもロシアの生産を中止した。スイスのネッスルもロシアでの販売を継続しているが、世界的な不買運動が出れば、ロシアでの販売を中止するしかない。

そして、ロシアでの投資を放棄させられて、西側諸国の投資家は、中国から投資マネーを大量に引き揚げており、極めて異例の規模で流出しているという。分離の時代が来たのである。

中国企業投資を引き上げる理由は、1つが、米国市場から締め出されることと、もう1つに、ロシアへの経済軍事援助から、中国へも制裁が近々行われる可能性があるからだ。

そして、ロシアとウクライナの停戦になっても、ロシアのプーチン大統領と取り巻きは、変わらないので、経済制裁が続き、中国も停戦後、ロシアとの経済軍事関係を復活させるからだ。

しかし、プーチン政権が続く限り、ロシアは再度ウクライナへの侵攻を行うことになり、中国とロシアなどの専制主義国と民主主義国との経済的な断絶は、ウクライナ戦争が終わっても続くことになる。

その上に、北朝鮮が米国まで届くICBMを発射実験して、実用化直前であり、世界の構図は、経済から軍事で評価される時代になってきたようだ。

ということで、インドはロシア軍事技術を享受しているので、ロシアを切れない。発展途上国もロシアからの小麦や原油が必要であり、ロシアとの関係を切れない。しかし、欧米諸国は、ロシアとの関係がある国に経済制裁を行う。このため、世界が二分することになる。

日本は西側諸国の一員であり、その制裁に加わることになる。市場規模は半分になり、企業の発展する規模も半分になる。戦争の可能性も高くなる。

このため、食糧生産と工業生産は円安でもあり、日本で作る方が安く、かつ物流の混乱も起こりにくいので、徐々に日本への回帰になるしかない。

そのような方向で政府も政策をシフトするしかない。日本は、食糧生産も物資も自国内でできるだけ自給する努力をすることだ。

中国という近傍に専制主義国があり、いつ戦争になるかわからない。中国が台湾侵攻時、日本孤立を意図して、海上交通を遮断することになる。このときでも国民の生命を守るためには、食糧の自給とエネルギーの自給は絶対必要になる。

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このように米欧日と中露の東西の分離の時代になってきた。戦争の時代でもある。この戦争経済の時代を構築しないといけない。

この戦争の時代は経済より軍事・安全保障優先の時代であり、米国が一番強いことになる。米国の復活である。そして、戦争経済では、最先端の軍事技術が必要である。

斎藤製作所のラジンコン・エンジンは、ロシア軍のドローンに搭載されるなど、この分野でも世界的な企業である。ロシア国内から飛ばしたドローンがクロアチアまで飛んでいる。

このような日本企業は多くあり、日本の物作りは軍事技術に直結するのだ。これからは、無人のドローンや戦闘車両の時代であり、飛行時間の長いドローンや車両の需要が大きくなる。中国製ドローンは飛行時間が少ない。

政府も戦争の時代であることを見越して、企業と一体で戦争の時代の産業のあり方を構築することである。企業も経済的優位性やコスト優位性などに目を向けるのではなく、戦争時・緊急時などでの企業継続性を視野に事業を構築してほしい。それを政府が援助することであり、専制主義国でビジネスをする企業に対しては、ビジネスを止めるような法律を作るべきである。

戦争の時代は、日本の時代でもある。中国の経済制裁が遅かれ早かれ、徐々に厳しくなり、民主主義国陣営のモノ作りは、日本や民主義陣営にいるなら韓国になる。中国陣営になるなら韓国はオミットになる。韓国は米国を選ぶか中国を選ぶかの選択をする必要に迫られる。

さあ、どうなりますか?

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image by: SV_zt / Shutterstock.com

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【著者】 津田慶治 【月額】 初月無料!月額660円(税込) 【発行周期】 毎月 第1〜4月曜日 発行予定

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