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後継者のいない“絶メシ”の味を記憶に残せ。消滅する地元の絶品店

店主が高齢で後継者もいない、けれど絶品を提供するお店…こんな店が今の日本には溢れています。今回、繁盛戦略コンサルタントの佐藤きよあきさんが、自身のメルマガ『繁盛戦略企画塾・『心のマーケティング』講座』の中で地元住民に愛され続ける”絶メシ”のお店を紹介。長く愛されるには納得の理由がありました。

後継者がいなくとも、きょうも“絶メシ”食堂は開店する!

東京都三鷹市に、創業53年の町中華「杏苑」があります。店主79歳、妻80歳。「らーめん半チャーハンセット」が人気で、40年以上通う常連さんもいるほど、地元住民に愛され続けているお店です。

しかし、店主夫婦の高齢化により、いつまで存続できるかはわかりません。いわゆる、“絶メシ”なのです。

“絶メシ”とは、絶やしてしまうには惜し過ぎる、絶滅寸前の絶品グルメのことです。このお店も同様に、後継者はなく、絶滅する運命にあります。しかし、店主はお客さまに喜んでもらえる限りは続けていくと言います。

人気の秘密は、やはり味へのこだわり。特にラーメンは、手間ひまを掛けています。スープは、鶏ガラ、豚ガラ、豚足を使い、アク取りをしながら、3時間煮込んでいます。

味のベースは、昆布、かつお節、煮干しを煮込んだ、しょうゆダレ。チャーシューは、豚肩ロースと鶏もも肉の2種類を、味のベースと同じしょうゆダレで煮込んだもの。さらに、豚肩ロースは、火を止めてから1時間漬け置き、味を染み込ませています。

これは、町中華の作り方ではなく、ラーメン専門店のやり方です。ラーメンセットが人気No.1になるのも頷けます。

チャーハンにもひと手間掛けています。ラーメン用に作った2種類のチャーシューを小さく切り、さらに、かつお節としょうゆで濃く煮たものを使っています。

2種類の肉を使った上に、味を濃くすることで、チャーハンにパンチを出しているのです。他では見たことのない作り方です。

これほどの味を継ぐ者がいないというのは、実にもったいない。絶滅までに、ぜひ足を運んでもらいたいと思います。

他にも、水戸黄門が日本で最初に食べたとされるラーメンを再現した、茨城県水戸市のご当地ラーメン「水戸藩ラーメン」も提供しています。

レンコン入りの麺を使っており、ラーメンと一緒に出される、ニラ、生姜、らっきょう、ニンニクを好みで入れ、味変するという、少し変わったラーメンです。東京で唯一食べられるのが、このお店なのです。

このメニューを取り入れたのも、お店の魅力づくりのひとつ。店主は、お客さまを喜ばせることに貪欲なのです。歳を取っても、惰性で動くのではなく、積極的に、前向きに、営業を続けているのです。

昔ながらの出前も行っています。店主がバイクで配達しているのですが、最近のような配達料の上乗せもありません。

すべては、注文してくれるお客さまのため。こうした、お客さま第一のお店が“絶メシ”と呼ばれ、近い将来には消滅してしまうのです。

日本全国で、安くて旨い食堂が、後継者不足などで相次いで閉店しています。長年地元住民に愛された味が、絶えてしまっているのです。

美味しいチェーン店が多くなって、人びとは子どもの頃から馴染んでいるのかもしれませんが、想い出の味がチェーン店というのは、どこか寂しいと感じます。

地元のあの味この味を記憶に残したいと思うのは、時代遅れなのでしょうか。

image by: Shutterstock.com

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【著者】 佐藤きよあき(繁盛戦略コンサルタント) 【発行周期】 週刊

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