台湾政府が、中国版インスタグラムと呼ばれる人気SNS「小紅書(レッドノート)」へのアクセスを1年間禁止する措置に踏み切りました。月間アクティブユーザー約3億人、評価額約4.6兆円にまで成長した巨大アプリですが、台湾では詐欺事件が1700件以上発生し、被害総額は約12億円に上っています。さらに、個人情報漏洩リスクに関する15項目すべてで基準に達しておらず、ユーザー情報が中国の特定地点に送られていることも判明しました。メルマガ『黄文雄の「日本人に教えたい本当の歴史、中国・韓国の真実」』では、TikTokと同様に危険視される中国製アプリの実態と、日本政府に求められる対応について詳しく解説しています。
【中国】日本も中国製SNS、IT製品の危険性検証と脱中国依存を急げ
● 台湾、中国版インスタ「小紅書」を接続停止 「詐欺多発、個人情報流出リスクも」
中国版インスタグラムとして、近年目覚ましく成長している「小紅書(レッドノート)」は、中国と台湾のみならず、中国市場を狙う日本企業が活用しているケースが多いようです。
このアプリの特徴は、オンライン販売と口コミをセットで視聴者に提供している点です。例えば、ある化粧品を販売するページには多くの利用者による口コミが入ってきていて、細かい使用感についての情報を得ることができます。オンライン販売で商品を買う多くの人が、口コミを参考にしていて、口コミ次第で購入するかどうかを決めるといっても過言ではありません。
このような消費行動を取るのは若者が中心となっていることから、必然的に「小紅書」のユーザーは10代から30代くらいまでの若者、中でも化粧品やファッションなどに興味のある女性がメインターゲットとなっています。
メディアによれば、「2025年の純利益は前年比3倍の約4400億円に拡大する見通しと報じられました。月間アクティブユーザーは約3億人で、評価額は約4.6兆円まで上昇しています」とのことで、このアプリのおかげで運営企業は急成長しています。
台湾が1年間のアクセス禁止を決定
そんなアプリを台湾が1年間アクセス禁止としたとのニュースです。
「小紅書は中国版インスタグラムとも呼ばれる交流サイト(SNS)アプリで、若い女性を中心に世界で3億人以上が使用し、日本企業も中華圏向けの宣伝に活用している」
「小紅書は台湾だけで300万人以上の利用者を抱える人気SNSで、台湾の人口2300万人のうち13%が利用していることになる」
● 台湾、中国SNS「小紅書」を1年間遮断…TikTok・微博も重大な保安リスクと判定
これほどまでに利用者がいるのに、台湾政府はなぜアクセス禁止にしたのでしょうか。その理由は以下、報道を一部引用します。
「内政部によると昨年以降、小紅書のアカウントを利用した偽の不動産売買や投資案件などの詐欺事件が計1700件以上発生し、被害総額は約2億4770万台湾元(約12億2600万円)に上るという。
台湾のデジタル発展部(デジタル省)は3日、小紅書や動画投稿アプリTikTok(ティックトック)の中国版である抖音(ドゥイン)など、中国製の5つのアプリについて、携帯の位置情報や通信履歴、クレジットカード番号などの個人情報が漏洩(ろうえい)するリスクがあるとして警戒を呼び掛けていた。台湾当局の調査によると、小紅書は個人情報漏洩のリスクに関する15件の指標すべてで基準に達していなかったという。
中国は自国製SNSを利用して台湾に偽情報などの認知戦をしかけており、小紅書の接続停止には『政治的な目的がある』(最大野党、中国国民党の立法委員)との見方もある」
● 台湾、中国版インスタ「小紅書」を接続停止 「詐欺多発、個人情報流出リスクも」
この記事の著者・黄文雄さんのメルマガ
個人情報は中国へ筒抜け
そうなんです。TikTok(ティックトック)がアメリカから締め出され、EUでも有害だと批判されていたように、「小紅書」も存在そのものが危険だと判断されました。
オンライン販売を兼ねているということは、購入者の住所、電話番号、クレジット情報、購入品の傾向などなど、あらゆる個人情報を得ているということですよね。それを、本人の同意なしに悪用すれば、あらゆる詐欺に使えます。
「台湾内政部(内務省に相当)などによると、主要な中国製アプリの情報セキュリティーについて調べたところ、小紅書はユーザーの位置情報や通信記録の収集の程度など15の検査項目全てで不合格だった。個人情報は中国の特定地点に送られているという。
さらに、小紅書を利用した詐欺事件は2年間で1706件発生し、約2.5億台湾ドル(約12.5億円)の被害があった。台湾でのユーザーは約300万人。台湾当局は今年10月、上海にある運営会社に改善策を提出するよう求めたが返答がなく、遮断に踏み切った。フェイスブックなど他のSNSを利用した詐欺事件も多いが、運営会社が詐欺に使われたアカウントの資料を提出するなど、台湾当局の捜査に協力しているという」
● 台湾、中国版インスタ「小紅書」の接続遮断 個人情報漏れ詐欺多発
「今年はネットオークションや分割払いの解除、投資、ロマンス、いわゆる『美人局』などの手口による詐欺が横行しているという」
● 中国SNS「小紅書」使った詐欺多発 内政部、暫定1年のアクセス遮断命令/台湾
つまり、個人情報を悪用して、その人が喜びそうな話を持ち掛け詐欺を働いているのではないか、ということです。「小紅書」が原因となる詐欺の規模が大きくなっているのに、調査にも協力しないというのだから、政府としては国民を守るためには禁止の措置もやむを得ないとの判断だったのでしょう。
国民党議員は、「インターネットの自由を制限するものだ」と、政府の判断を批判し、「封鎖でプロの詐欺集団を防ぐことはできない。美容や旅行の情報を求める市民がブロックされるだけだ」と反対しています。
● 台湾、中国版インスタ「小紅書」を接続停止 「詐欺多発、個人情報流出リスクも」
中国製アプリは安全保障上の脅威
カンボジアでの組織的詐欺集団のニュースを見ると、元締めは中国人集団ですし、大勢の人を拉致して働かせているのですから、こうした膨大なデータを分類、分析し、リストを作成して詐欺を働くことも、十分可能でしょう。中国のアプリがどこまで危険なのか、その真偽は闇の中ですが、疑わしきは利用しないほうが安全に決まっています。
日本政府がこうした決断をしたという事例はなく、日本では「小紅書」を見放題ですが、日本の皆さんも中国のサイトで買い物をする際には十分注意したほうがいいでしょう。
最近、TikTokで、日本人クリエイターの収益化が次々停止される事態が起こっていると、一部では騒ぎになっています。TikTokは中国の企業の運営ですから、最近の日中関係の悪化が関係しているのではないかという疑念も湧き上がっています。
● TikTok収益停止は「政治の報復」か? 日本人クリエイターに連鎖する月収20万円ゼロの衝撃 – アルゴリズム規制と中国巨大プラットフォーム危機の深層
よく知られているように、台湾やアメリカでは、TikTokを公的機関が使用することを禁止しており、インドでは全面的に使用禁止になっています。TikTokに投稿された映像から、人物、住居、周囲の環境などが割り出される可能性があり、安全保障の脅威となっているからです。
中国には中国企業が政府に情報提供を義務付ける法律があるため、さまざまなユーザー情報が中国当局に流れる可能性が否定できません。その結果、SNS、メールアドレスやクレジットカードまでが乗っ取られる危険性もあるわけです。
ノルウェーでは、公共交通で使われている中国製電気バスが、販売元の中国メーカーによって遠隔操作で車両を停止できる可能性が判明しています。つまり、中国政府の号令などによって、ノルウェーのバスを急停止させ、事故を発生させたり交通マヒを起こしたりできてしまう危険性が発覚したわけです。
● 中国製EVバスに遠隔操作で車両停止できる機能 ハッキングで悪用される恐れ
日本政府には、こうした中国製SNSやソフト、IT製品に対する安全保障上の危険性をしっかり検証してもらうとともに、やはり中国製品への依存度を改めることが、これから必須となってくるでしょう。
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※ 本記事は有料メルマガ『黄文雄の「日本人に教えたい本当の歴史、中国・韓国の真実」』2025年12月10日号の一部抜粋です。初月無料の定期購読のほか、1ヶ月単位でバックナンバーをご購入いただけます(1ヶ月分:税込660円)。