始まる前に崩壊中?習近平肝入りの「理想未来都市」スマートシティで閑古鳥が鳴いている

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日本よりもはるかに貧富の差が激しい中国。鄧小平時代の「先富論」から「共同富裕」への政策転換は絵に描いた餅にすぎず、都市部と地方の所得格差は広がるばかりです。折しも習近平は北京近郊に、巨額予算を注ぎ込んだ「理想都市」を開発中ですが、最新技術を駆使したスマートシティという触れ込みとは裏腹に早くもゴーストタウン化の兆しが。メルマガ『黄文雄の「日本人に教えたい本当の歴史、中国・韓国の真実」』は、この“閑古鳥状態”の大きな原因として、「貧困層のほうが多いという自国の現実がまったく見えていない」点を指摘しています。

中国が威信を賭けて開発「理想都市」の危うい実態

3月5日に開幕した全国人民代表大会で、李強首相が政府活動報告で触れた「雄安新区」についてのプロジェクト。これは何かというと、「有明海に匹敵する広大な田園地帯を、ハイテクを駆使した『理想都市』に変貌させる計画」のこと。

中国、13兆円投資の「理想都市」閑散 習氏主導も企業や大学の移転進まず

習近平も何度も現地視察に訪れたという、政府の肝入りの国家プロジェクトです。もう少しこの計画についての説明を、以下、報道を引用してご紹介しましょう。

『北京から車で高速道路を2時間ほど走ると、農地の中に突然、高層ビル群が現れた。雄安新区は北京の南西約120キロにある河北省3県にまたがり、総面積約1700万平方メートルに及ぶ。』
『昨年末時点で主要事業に6570億元(約13兆4500億円)の予算が投じられたという。」
「地元メディアによると、2023年時点で雄安新区には86の企業などが新規進出しているが、国内の大手IT企業や先端産業、研究機関が中心。進出企業を限定している点が改革・開放路線の下、起業家や海外からの投資を引きつけて発展した深センと大きく異なる。地価高騰を防ぐため、不動産取引にも制限がある』

莫大な国家予算をつぎ込んで始まった国家プロジェクトは2020年に始まり、2035年に完成予定となっています。未来都市としての理念は、「創進智能(イノベーション&インテリジェントシティ)」、「緑色生態(グリーンエコ)」、「幸福宜居(幸福で住みやすい街)」の3つ。医療、教育、介護など、社会機能の全てを包括し、それらの全てを最新技術で連携させたスマートシティを創り上げるという、壮大な構想です。

その舞台として選ばれたのは河北省の雄安新区でした。なぜここなのかというと、北京から120キロほどと近く、北京の人口密集を緩和させる狙いもあり、この場所が選ばれました。

そして、未来都市は着々と建設され続け、コロナ禍でさえも可能な限り工事を続け、4年ほどで田園地帯に新たな街が出現しました。

“閑古鳥”が鳴く未来都市の行く末は…

しかし、今、報道されているのは、その未来都市の行く末を心配するものばかりです。例えば、以下、報道を引用します。

習氏の理想都市は空っぽ、権力の限界露呈-北京に近い「雄安新区」

中国の改革・開放政策を主導したトウ小平氏が1979年、中国南部の地図上に円を描き資本主義を実験する経済特区を広東省深センに設けると決めたという逸話がある。それから40年近くたち、中国共産党の習近平総書記(国家主席)は時代を象徴する都市建設の野心を、首都北京に近い「雄安新区」で体現すると発表。北京の人口密集を解消するハイテク都市になるという雄安は、「人類発展の歴史におけるモデル都市」とうたわれた。
以来、共産党は世界最大の水力発電所である三峡ダムの倍以上となる約6100億元(約12兆3000億円)を雄安に費やしてきた。かつてトウモロコシ畑だった場所には現在、鉄道駅やオフィスビル、集合住宅、5つ星ホテル、学校、病院が立ち並んでいる。
唯一足りないのは住民だ。ブルームバーグの記者が今月の平日に訪れた際、雄安に向かう高速道路にはほとんど車が走っていなかった。雄安中心部の通りで開いている店やレストランもほとんどない。
首都からの移転を迫られている研究所の職員は、子どもたちの教育の質が心配だと打ち明けた。2022年に移転計画を発表した北京を拠点とする大学4校は今、代わりに第二キャンパスの設置を目指している

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