入学式、始業式を経て新しい学年、新しいクラスにお子さんは馴染めてきているでしょうか。親の立場からすれば、「いじめられていないか?」「仲間外れにされていないか?」など気になるところです。そこで今回は、無料メルマガ『いじめから子供を守ろう!ネットワーク』を発行する、同ネット代表の井澤一明さんが2件のいじめ事件について言及。進展を語ったうえで、親が我が子にできるいじめ対策を紹介しています。
旭川市中2凍死事件と八王子市立小学校いじめ不登校事件
入学式を迎えた皆さん、そして保護者の皆様、おめでとうございます。やや遅めの桜前線も東北、北海道に到達しつつあり、すでに関東では桜も散り始めましたが、入学式を桜の下で迎えた子も多かったことだと思います。
今年度が、子供たちにとって素晴らしい一年となりますように心よりお祈りしたいと思います。
何回か取り上げておりますが、昨年3月の北海道旭川市の中2凍死事件ですが、3月27日に第三者委員会が「いじめとして取り上げる事実」があったと認定する旨をご遺族に報告したという報道が出ています。
詳しい報告は改めてなされるようですが、なんとかここまで来ました。今まで、学校や教育委員会は断固としていじめと認めませんでしたが、この発表後の3月29日に、教育長がご遺族に謝罪したとのことです。
しかし、遅すぎます。いじめと認めないという方針でねばり続けて、ここにきて、逃げられなくなったと考えたとしか思えません。
教育長なりのパフォーマンスなんでしょうが、この第三者委員会の報告が旭川市の教育行政の根本的改革の契機になることを期待したいものです。
また4月5日付東京新聞によると、八王子市立小学校に通っていた男児(12)が、いじめが原因で2019年から長期の不登校になった問題で、第三者委員会が、いじめや担任らの不適切な対応が不登校の原因と認定したとのことです。
さらに学校と市教委の対応のまずさも指摘していることがわかりました。指摘内容を簡単にまとめると、
- 担任が男児の気持ちに寄り添うような言葉掛けをしなかったこと
- 校長は「重大事態」と認識していたが、約3カ月間、調査を実施しなかったことを「放置」と指摘
- 市教委も「保護者の信頼を得られず、事態の収拾を取りまとめる力がなかった」と組織が機能せずと指摘
というものです。
この2件の事件共に、第三者委員会の力を借りて、やっと正常に戻りつつあるというニュースです。しかし、第三者委員会が設置された後では遅すぎます。いじめは早期発見、そして早期解決が絶対に必要です。
いじめなんかない方が良いに決まっています。ですから、新しいクラスで、いじめられないための対策をとっておくことも、かなり効果があります。
まず、子供自身による仲間づくり。集団の力を利用することだと思います。
現在のいじめの大半は、一人の子を集団でいじめるという形態です。集団に対抗するには、個々で対抗するのではなく、集団で対抗することが効果的です。友人、仲間が多ければ、いじめられることは少なくなります。
ただ、そうは言っても、人見知りする子もいますし、孤独を好む子もいます。小学生の間は、保護者は学校でのお子さんの様子を頻繁に見ることをお勧めしたいと思います。直接、お子さんから学校の様子をこまめに聞いておくことは大切だと思います。
しかし、あまり話してくれない子もいますよね。そんな時は、学校に様子を見に行って頂きたいのです。
ただ、コロナ禍ですので、学校が見学することを認めてくれないこともあります。
その場合の次善の方法としては、「ママ友」から情報集めということになりますでしょうか。ママ友のお子さんたちからの情報を集めようと試みることをお勧めしたいと思います。
その結果、何事もなければとりあえずは安心です。状況が変わる場合もありますので、定期的に情報を集めるなど、意識を広げておくことは大切です。
個性的であることはとても大切なことだと思います。ただ、小学生ぐらいですと、極端な悪目立ちにならないことも必要です。
例えば、クラスの中で一人だけ毎日遅刻して登校する。いつも、何かを忘れて周りの子から借りまくるみたいな状況ですと仲間外れになったり、いじめを受けやすくなったりすることもあります。
やはり社会通念上のルールから逸脱しすぎている場合には、保護者が手伝ってあげたりして、徐々にで良いので様々なことが一人でできるようにしてあげて欲しいと思います。
中学生、高校生になると、自立心が強くなってきますので、子供に悟られないようにしながら見守っていくという工夫も必要です。何よりも「相談しやすい親」であっていただきたいと思います。
また、この年代になってくると、小学生とは違って、欲しがるものも高価な物になったり、お出かけもかなり遠くまで足を延ばしますし、ちょっとしたことでもかなり大きな問題になることも多くなります。
いじめ問題においても、警察沙汰になるようなことも起きやすい年代と言えます。問題は「親が心配する」ことを、子供自身が嫌がることだと言えます。子供たちの成長の証ではあると思いますが、親の心配はつのるばかりです。
子供には、自尊心や自主性を大切にしながら、成長して行って欲しいものです。ですから、ご家庭によっての違いもありますし、どの程度の干渉が適切なのかと気にかけておくことが大切になります。
新しい年度が始まり、親、特にお母さんにとっては心配事が尽きないと思います。
「まかせてまかさず」という言葉もありますように、大切なことは、子供たちの自主性を大切にしながらも、放任することなく、危険な領域に踏み込ませないようにする、
つまり、「守っている」ことを気づかせないで、守ってあげることだと思います。
実際には難しいことだと思いますが、子供たちの1日、1日を見守って行きたいと思います。
一般財団法人 いじめから子供を守ろうネットワーク
代表 井澤一明
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