日本の願望か?「オミクロン株流行で中国経済は破綻一直線」の大ウソ

 

財政健全化では引き続き重い宿題を背負うことになるが、コロナ対策では仕方がないというほかない。

ただ「転んでもただでは起きない」のが中国である。ダイエットを放棄して行う支援策の中心を減税とし、とくにターゲットを零細企業に──支援は過去3年間で1.5兆元──おいた意図は明確だ。零細企業の育成とその技術力の向上こそが中国の未来だという政府のメッセージが込められているからだ。

習近平指導部の号令の下、中国では経済のデシタル化が進められてきた。GDPに占めるデシタル経済の割合を高めることを目指すものだが、ハイテク分野へ投資誘導も結実しつつある。そのことは統計からも読み取ることができる。今年の第1四半期、製造業全体への投資は前年同期比で15.6%の増加だったが、そのなかでハイテク産業への投資は32.7%と大幅に伸びているからだ。

もちろん伸びたのは政策誘導のためだけではなく実際に業界が成長しているからだ。同期のハイテク分野の製造業は、前年同期比で14.2%も伸びているのだ。そのなかでも航空宇宙分野は22.4%。電子通信設備は15.7%。新エネルギー車に至っては140.8%という驚異的な伸びを記録している。

ロックダウンによる経済のダメージは確かに深刻だ。とくに個人消費が戻らないのは痛い。だが、エース不在の中で出た成績表という視点で見れば、中長期的な見通しは決して悪くないというべきだろう。

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image by: Graeme Kennedy / Shutterstock.com

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1964年、愛知県生まれ。拓殖大学海外事情研究所教授。ジャーナリスト。北京大学中文系中退。『週刊ポスト』、『週刊文春』記者を経て独立。1994年、第一回21世紀国際ノンフィクション大賞(現在の小学館ノンフィクション大賞)優秀作を「龍の『伝人』たち」で受賞。著書には「中国の地下経済」「中国人民解放軍の内幕」(ともに文春新書)、「中国マネーの正体」(PHPビジネス新書)、「習近平と中国の終焉」(角川SSC新書)、「間違いだらけの対中国戦略」(新人物往来社)、「中国という大難」(新潮文庫)、「中国の論点」(角川Oneテーマ21)、「トランプVS習近平」(角川書店)、「中国がいつまでたっても崩壊しない7つの理由」や「反中亡国論」(ビジネス社)がある。

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