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なぜ、世界一の小売業「ウォルマート」は成功することができたのか

ビジネスにおけるイノベーションとは、実は新機能の製品というわけではありません。革新とは一体何を指すのか、そしてそれを実現させるために成功した企業は何をしてきたのか。今回の無料メルマガ『戦略経営の「よもやま話」』では浅井良一さんが、イノベーションについて語っています。

熱い思いが世界一をつくる  持たない方こそ有利

顧客はそれぞれの好みはあるものの、いつも一番を選びます。さらに、その一番は変化と競合の中で移ろい、止まることがありません。

だから、固定観がない“素人”が「知らない者の強みで、未知なる“機会”に挑戦して、我知らずして一番になる」こともあります。人の願い、欲望は、環境に応じて常に異質に変化し拡張するが故です。

イノベーション(革新)というと、まったくの新機能の製品の開発を思い浮かべますが、ドラッカーはおもしろい例をあげています。

「北極圏に住むイヌイットに対して凍結防止のために冷蔵庫を売ることは、新しい工程の開発や新しい製品の発明に劣らないイノベーションである。それは“新しい市場を開拓する”ことである」

コンビニエンスストアで“おにぎり”“おでん”を売り出すことも、これも立派なイノベーションであると言えそうです。

ドラッカーは「イノベーションとは、発明のことではない。技術だけのコンセプトでもない。経済的なイノベーション、さらに社会的イノベーションは、技術のイノベーション以上に重要である」と言います。

「イノベーションすなわち新しい満足を生み出すことである」

イノベーションは、新しい満足、より大きな満足を実現させるために行うもので、何も持たないどんな“素人”でも行えるもので「顧客を満足させるビジョン(アイディア)」と「熱意」があればできることです。

要点は「役立つアイディア」と「やりぬく実行」があればよいのです。

「新たに一番になる」ためには「時代の欲求を探り当てる」か「創造して」それを“イノベーション(革新)”することを求められます。それもガムシャラな意思を持ってやり通さなければなりません。

起業家に求められるのそれらのことで、誰でもが成功するチャンスがあるのですが、それがなければまったく縁がないと言えます。

後は、運に任せることになるのですが、多くの大成した経営者は「必ず成功すると確信してやり通す」としています。

その代表格である松下幸之助さんは「とにかく、考えてみることである。工夫してみることである。そして、やってみることである。失敗すればやり直せばいい」と、とうぜんのこととして語ります。

ちなみに、松下幸之助さんは「経営においての根幹的なイノベーションを行ったのですが、それらは主としてマネジメントでのもので、「経営理念を基盤とする経営」は特質されるので、その他に「事業部制」「本社の経理本部(マトリックス組織)」「管理会計制度」などがあり、“任せて任せず”の絶妙の“経営革新”であります。

お客さまが支持してくれるから

さて質問ですが、根幹である「アイディア」と「熱意」ですが、イノベーションを実現させて世界一になるためにはどちらが必須でしょうか。

日本ではなじみが薄いのですが、ウォルマートという世界一の小売業をつくり上げたサム・ウォルトン氏の意見を聞きてみますと、いかにもアメリカ人らしく次のように言っています。

「企業家精神、リスクを顧みない勇気、勤労、自分が求めているものを知り、それに到達する強い意思」「他人が信じてくれないときでも、自らを信じ切って一歩も譲らない信念」

これを必須だと言います。

「平凡な普通の労働でも、チャンス、激励、そしてやる気の三つが与えられればどんなことでも成し遂げることができるのだ」

とも言います。ここで突拍子もなくウォルトンの引っ張ってきたのは、国こそアメリカですが、片田舎の出身で高い専門知識あったわけでもなく、強力なバックを持っていたのでもない人物が“世界一”を成したからです。このように言っています。

「素人で無知であったことは、感謝すべきことだった。というのも、これまでずっと私を支えてくれたのは、自分で学びとった経験だからである。誰にでも学ぶべきことはあるのだ」

松下幸之助さんは「なすべきことをなす勇気と、人の声に私心なく耳を傾ける謙虚さがあれば、知恵はこんこんと湧き出てくるものです」と。

多くの「世界一」や「日本一」は、多くの失敗と試行錯誤の中でやり抜いて“幸運の女神”がほほ笑んだ時に訪れるかのようで。

またそれは「持てる人」でなく、目的を明確に持ってやり抜く過程で経験と知恵いう資産を蓄積する『持っていない意思の人』に“幸運”を引き寄せる「普遍の摂理」があるかのようです。

ここで言いたいのは、どんな「無一文の素人」にも、もとより「苦難の道程をくぐり抜けて行かなければ」ならないのですが、“意思”して“やり抜いて実行”して行くなら、無限の“機会”の中で、普遍の“経営資源である知識(知恵)”により“世界一”の“日本一”という成果を成す切符を手に入れるようであるということです。

世界一の小売業“ウォルマート”の成功を支えたのは何だったのか。創業者サム・ウォルトンの「1ドルを大切にする」という“熱い志”で、「“私たちの使命”はお客さまに価値を提供することだが、その価値には品質やサービスばかりでなく“お客さまの支出を節約する”ことも含まれる。ウォルマートが1ドルを浪費すれば、それはお客さまの懐に直接響くのである。逆に私たちが1ドル節約するたびに、他社との競争で一歩先んじることになる」。

この思いのもとに「Everyday Low Price(毎日が安売り)」という“徹底した低価格”にこだわった「ディスカウントショップ」という業態を生み出し、圧倒的な支持を受けて世界一になったのです。

「わが社の業績が伸びているのは、私たちが賢いからでも、大企業だからでもなく、お客さまが支持してくれるからだ」と言います。

サム・ウォルトンは「私たちは革新的で、実験好きであり、その結果勢力を拡大していった」と高らかに宣言しているのですが。

「私が他社のどの経営者にもまさっていたのは、頭の良さや決断力や統率力などではない。それは毎日、他社の店を誰よりも多く視察し続けてきたことである」と「セルフ・サービス方式」はその成果の一つで。

また必要な知識(最先端の情報も含め)を得ることに謙虚で、貪欲で、誰に対しても真っ向から「おじゃまして申し訳ありません。私はサム・ウォルトンといいます。アーカンソー州のベントンビルからきたもので、小売業を営んでいます」と挨拶し、それから「私は実は、今の経営状況についてあなたの意見をうかがいたいのです」で知識を吸収します。

「コンピュータ管理システム」「物流センター」の“最先端のシステム”は“ウォルマート”を世界一に押し上げた必須の中核的な要因ですが、この知見は、ウォルトン氏の飽くなき地道な情報収集の賜物です。

また“最先端のシステム”を稼働させるためも含めての最適人材を探し求めて、見つかれば活躍してもらうため強引に引っ張りこむのです。

最後に、雇用に成功した人材に対する処遇について記します。それらの人材について、それぞれ部門の権限を全面的に委譲します。

しかし、それを実践する段になって、予算を大盤振る舞いすることはなくケチり渋りで、おもしろいのは結果良しで担当者はその制約の中で、最高の知恵を発揮して、よりレベルの高い成果を実現させているのです。

今回、結論としてあなたに言いたいのは、世界一になるには、絶対に必須なのは「高みに登る意思と知恵」「やる抜く意欲」であるということで、これがあれば他は得ることができ、この二つがないのなら、やがては必ずこけます。稀有な二つを持てたなら、いずれかの頂点かを極めらるということです。

image by : Jonathan Weiss / shutterstock 

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戦略経営のためには、各業務部門のシステム化が必要です。またその各部門のシステムを、ミッションの実現のために有機的に結合させていかなければなりません。それと同時に正しい戦略経営の知識と知恵を身につけなければなりません。ここでは、よもやま話として基本的なマネジメントの話も併せて紹介します。

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【著者】 浅井良一 【発行周期】 ほぼ週刊

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