ネット上で大きな盛り上がりを見せている「橋下徹氏と上海電力」を巡る問題ですが、大手メディアにしか触れていない層にはほとんど認知されていないのが現状のようです。そんな事案を取り上げているのは、元国税調査官で作家の大村大次郎さん。大村さんは自身のメルマガ『大村大次郎の本音で役に立つ税金情報』で今回、橋下氏が「法的に問題ない」とするこの案件の概略を紹介するとともに、そもそも何が問題視されるのかを詳しく解説した上で、橋下氏に対して「果たすべき義務」を突きつけています。
※本記事は有料メルマガ『大村大次郎の本音で役に立つ税金情報』の2022年5月16日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会にバックナンバー含め初月無料のお試し購読をどうぞ。
プロフィール:大村大次郎(おおむら・おおじろう)
大阪府出身。10年間の国税局勤務の後、経理事務所などを経て経営コンサルタント、フリーライターに。主な著書に「あらゆる領収書は経費で落とせる」(中央公論新社)「悪の会計学」(双葉社)がある。
橋下氏の“上海電力問題”とは?
最近、ツィッターなどでは「橋下 上海電力」という関連ワードがよく出てきます。橋下氏のツイッターにも「上海電力の説明をしろ」というようなレスが数多くついています。
今回はこの問題について取り上げたいと思います。
この問題は、ジャーナリストの有本香氏の記事が発端となっているのですが、ざっくり言えば次のようなことです。
橋下氏が大阪市長時代の2014年に、大阪の南港咲洲(さきしま)に、メガソーラー発電所を建設したのですが、そのメガソーラー発電所を運営しているのが上海電力という中国の企業だったのです。
そして、上海電力がこの事業を受注した経緯にも疑問があるのです。当初、この事業は日本の中小企業2社がつくった合同企業が落札受注し、その後、この合同企業に上海電力が出資し、事実上、上海電力が運営するということになったのです。この経緯について、橋下氏は「法的に問題ない」と述べていますが、これは法の抜け穴をついたようなものであり、道義的な問題は残るはずです。そして、何より、日本のインフラの中枢部分を、簡単に外国企業に委ねるということに対して、重大な安全保障上の懸念があるはずです。
このソーラー発電所の事業というのは、日本の電力会社に電気を買い取ってもらうことで、成り立っています。そしてその電気を買い取る資金は、我々の電気料金から出されているのです。
再生可能エネルギー賦課金として、私たちの電気代に上乗せされています。現在の再生可能エネルギー賦課金は、1KWHあたり3.5円前後です。一般家庭の平均的な毎月の電力消費量は300KWHなので、1,000円前後がこの再生可能賦課金に取られているのです。年間で1万円程度になります。それが全家庭から取られているのです。莫大なお金です。ざっくり言うと、この莫大なお金が上海電力に流れてるのです。
外国企業にインフラの根幹を委ねる危険性
筆者は、外国の企業を公共事業からすべて締め出せなどというつもりはありません。が、エネルギーという国の根幹であり、国民の生活に直結する事業に関して、外国企業に委ねるということは、大きな懸念があるはずです。
特に中国との関係は昨今は微妙です。また中国は2010年に日本との関係が悪化したときに、レアアースの輸出を規制するというような国際貿易のルールに反する行為を行ったこともあります。レアアースというのは、スカンジウムなどの非常に希少な素材であり、スマートフォン、電気自動車に欠かせないものです。当時、中国が世界産出量の9割を占めているとされ、中国がこれを規制すれば日本経済は大きな打撃を受けるものでした。日本は、ほかの国から輸入ルートを開拓するなどしてダメージを回避し、WHOも中国の行為をルール違反だとしたために、中国も現在では輸出規制を解除しています。その中国に、大規模な電力事業を委ねるということは、非常に危険なことだと言えます。
にもかかわらず、このレアアース問題が生じたたった4年後に、大阪市は上海電力にメガソーラー事業を委ねたのです。メガソーラーの日本の電力に占める割合が大きくなった時突然、メガソーラーの送電を止めるというようなことになれば、日本社会は大混乱してしまうはずです。中国はたった4年前に、そういう類の事を日本に仕掛けているのです。「社会の安全を守る」という観点がまったくないとさえいえます。
橋下氏は、大阪府知事や大阪市長をしているときに、公的な医療関係の支出を大幅に削り、それが新型コロナ禍で大阪に大きな被害をもたらしました。その一方で、市民の電気代を使って上海電力を誘致していたのです。
日本のインフラをなんと思っているのか?日本の社会の安全をどう思っているのか?橋下氏にとくと聞かせていただきたいものです。
この上海電力は、大阪市で事業を開始したのを皮切りに、昨今では日本全国で事業を展開しています。大阪で事業を受注しているということが「実績と信用」になっていることは間違いありません。しかし、前述しましたように、大阪での最初の受注は、最初に日本の企業が受注したあとに、資本参加という形で事業運営に携わるという、かなりトリッキーなものだったのです。つまり、トリッキーな方法で上海電力は、日本のソーラー事業に参入してきたわけです。
それらのことを総合的に勘案しても、橋下氏はこの事業に関して、道義的責任、安全保障上の責任を負っており、何よりもまず国民全体に説明する義務があるはずです。
そして筆者がもっとも懸念していることは、この上海電力問題について、大手メディアがまったく取り上げないことです。このメルマガでも、何度か橋下氏や維新の会はメディアの操作に異常にたけているということをご紹介しました。吉本興業と提携することで、各番組に吉本芸人たちに吉村知事のことを持ち上げさせ、そのため大阪は新型コロナの被害が日本で最悪だったにも関わらず、吉村知事の人気が上がるという怪現象が生じている、と。そして吉本興業は芸能会社としては稀有なことに、大阪万博でパビリオンを出展することになっている、と。
橋下徹氏や維新の会のメディア操作術は、これにとどまりません。次回は、そのことについてもう少し追求したいと思います。
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