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プーチンが先か、習近平が先か。独裁者が国民から見捨てられる日

強大な権力で大国を意のままに動かす、ロシアのプーチン大統領と中国の習近平国家主席。今や絶対的な独裁者として君臨する両氏ですが、その座から追われる事態は起こりうるのでしょうか。今回のメルマガ『黄文雄の「日本人に教えたい本当の歴史、中国・韓国の真実」』では台湾出身の評論家・黄文雄さんが、二人の指導者についてその生い立ちから権力掌握に至るまでの道程を詳しく紹介。さらに彼らの能力や現在の状況を鑑み、「どちらが先に国民から見捨てられるか」を占っています。

※本記事は有料メルマガ『黄文雄の「日本人に教えたい本当の歴史、中国・韓国の真実」』2022年5月18日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会に初月無料のお試し購読をどうぞ。

プロフィール:黄文雄こう・ぶんゆう
1938年、台湾生まれ。1964年来日。早稲田大学商学部卒業、明治大学大学院修士課程修了。『中国の没落』(台湾・前衛出版社)が大反響を呼び、評論家活動へ。著書に17万部のベストセラーとなった『日本人はなぜ中国人、韓国人とこれほどまで違うのか』(徳間書店)など多数。

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【中国】プーチンと習近平、国民から見捨てられるのはどちらが早いか

「ロシアの敗北は時間の問題」中国の元ウクライナ大使が指摘

中国の元ウクライナ大使が、北京で開催された政府系シンクタンクのシンポジウムで、「ロシアの敗北は時間の問題だ」と発言したことが大きな話題となっています。加えて元大使は、プーチン大統領の下での復興は不可能だとも述べたそうです。

中国のネットでは、このことを報じた記事やSNSが次々と削除されていますが、中国側の本音が透けて見え、習近平がプーチンを見放したのではないか、という観測も流れています。

現在、ウクライナ侵攻により西側の反発を招いているロシアですが、プーチン大統領については「重病説」が囁かれており、そのため「気がおかしくなり」ウクライナ侵攻という暴挙に出たという話もあります。

プーチン大統領に白血病説…英紙タイムズが重病の可能性報じる ウクライナ侵攻指示直前に手術

プーチンはこれまでフォーブスが選ぶ「世界で最も影響力のある人物」ランキングで、毎年首位をキープしてきました。冷徹かつ計算高く、大胆な手法で自らの望み通りの結果を手にする様から、強いリーダーシップのある人物として見られてきました。

しかし、ウクライナ侵攻で欧米が結束してロシア制裁に動いたことや、フィンランドとスウェーデンがNATO加盟を加速させるといった動きは、プーチンの誤算であり、しかもそのような致命的な失敗を招くことは、これまでのプーチンからすればありえないことであり、だからこそ「重病説」が出てくるわけです。

一方、プーチンの盟友である習近平はどうでしょうか。「中国の夢」「中華民族の偉大なる復興」を掲げ、対外的には南シナ海や尖閣諸島に対する侵略を繰り返し、国内的には独裁政治を強化し、ウイグルなど少数民族の弾圧を繰り返しています。しかし、それによって望み通りの結果を得るどころか、逆の結果になることのほうが多いといえるでしょう。

たとえば日本の民主党政権時代の2009年、副主席だった習近平が訪日し、無理やり天皇陛下への謁見をゴリ押ししたことがありませした。また、中国公船による尖閣への領海侵犯を増加させたことにより、日本では中国への警戒感と嫌悪感が高まり、それが自民党の政権復帰と、憲政史上最長の安倍内閣を誕生させることになりました。

また2016年、台湾に民進党の蔡英文政権を誕生させたのも、2014年に馬英九政権が中国と密かに結ぼうとした両岸サービス貿易協定への不信感や習近平の台湾恫喝外交への反発があったことは間違いありません。

2020年に蔡英文が再選されたのも、その前年の1月2日に『台湾同胞に告げる書』発表40周年式典での習近平の演説がきっかけでした。この演説で台湾人に対し、居丈高に一国二制度を迫り、軍事力行使を排除しないと語ったことが台湾人の怒りを買い、支持率低下で再選はおぼつかないとされていた蔡英文の人気復活に大きな貢献をしたのです。

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その他、アメリカとの関係も悪化の一途をたどり、オバマ政権の時代には「2つの大国関係」を主張していたもののオバマ大統領には無視され、さらにトランプ政権では経済安全保障上の脅威として認識され、アメリカからファーウェイの締め出しなど、米中貿易戦争を起こされてしまいました。バイデン政権においても、この流れは変わらず、さらにロシアのウクライナ侵攻を擁護していることで、西側諸国の反発を招いています。

アメリカの調査機関ピュー・リサーチ・センターが2021年6月に行った調査では、先進17カ国での習近平に対する信頼度は過去最低水準で、日本の習近平への不信感が86%と最も高く、オーストラリア、フランス、スウェーデン、カナダでは、半数以上が習近平を全く信頼していないと回答したそうです。

中国習主席への評価、引き続き過去最低 米国は回復=先進17カ国調査

このように、習近平の外交政策は失敗だらけなのです。戦争こそしていませんが、「気がおかしくなったプーチン」と同様の失敗を重ねてきたわけです。

あまりに習近平政権の中国が世界各国から嫌われるため、習近平もさすがに焦ったのか、2021年5月、「信頼され、愛され、尊敬される」中国のイメージを作り、友好国の和を拡大するべきだと共産党幹部に伝えています。

習主席、「愛される」中国外交を指示 友好国増やすため

それはともかく、よく知られているように、プーチンが育った家庭は、父親は機械技師、母親は工場で働き、非常に貧しい家庭でした。その後、1975年にKGBに入りますが、85年に同じく共産主義陣営の東ドイツのドレスデンに赴任し、階級は中佐止まりと、評価はあまり高くなかったようです。

しかし官僚としての能力は高く、それをエリツィン大統領に認められ、エリツィンの後継者に選ばれたことで、一気に光が当たりました。当時、エリツィンの家族や側近の汚職疑惑を捜査していた検事総長が、売春婦を買っていたというスキャンダルを公にして、失脚させたと言われています。

こうしてエリツィンの信任を得たプーチンは、2000年に大統領に就任、以後、任期の問題で首相と大統領を交互に行い、権力を維持してきました。

【詳しく】ロシアのプーチン大統領どんな人? 石川解説委員分析

一方、習近平は八大元老で中央政治局委員や全人代常務委員会副委員長などを歴任した習仲勲の息子として生まれた、いわゆる太子党の一人です。もっとも、習仲勲は文化大革命で失脚させられ、1978年まで16年にわたる拘束を受けたことで、習近平も1969年1月から7年間ものあいだ、陝西省延安市延川県に下放されるという不遇の時代がありました。

その間、全国統一入試試験は中止されていましたが、模範的な勤労者・農民の推薦入学制度を利用して、1975年に清華大学に入学します。一説によればこれは裏口入学だったとも言われています。その後、父親の復権にともない、コネで人民解放軍に入隊、軍最高幹部の秘書となりました。

1998年から2002年にかけて清華大学大学院過程に在籍し、法学博士の学位を取ったことになっています。しかし、このときの論文は代筆だったという疑惑が持ち上がっています。

とくに取り柄も功績もない習近平でしたが、共産党青年団派の胡錦濤と江沢民派の権力闘争の中で、江沢民派に取り入り、出世の糸口を掴みます。2006年、江沢民派の陳良宇上海市党委員会書紀が汚職の疑いで失脚すると、胡錦濤派の韓正が代理書紀に就任しましたが、江沢民派の巻き返しで、2007年に上海とまったくゆかりのない習近平が上海市党委員会書紀に就任することになります。

こうして江沢民派は胡錦濤の後継人事を潰し、習近平を持ち上げていくことになり、2012年11月の第18期1中全会で総書記、翌2013年3月に国家主席の地位に上り詰めたのです。ある意味、政争の渦巻くなか、コネと幸運でトップに上り詰めたといっていいでしょう。

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プーチンと習近平の共通性は、権力に対する執念の強さでしょう。習近平は2018年3月に国家主席の任期を撤廃しました。プーチンは2021年4月に大統領選挙法を改正し、現在の任期(6年)が終わる2024年以降も、2036年まで2期12年も大統領にとどまれるようにしました。

当然、カネへの執着もすさまじく、プーチンは不正蓄財で20兆円の総資産を築いたとされます。一方の習近平は、「パナマ文書」で一族がオフショア会社の会長・株主であることが暴露されました。

「プーチン大統領」暴君の素顔 不正蓄財で総資産20兆円説、「パーキンソン病」疑惑も
【パナマ文書】中国資産の密やかな流出 党幹部の親族も

香港「成報」グループ取締役会元会長・谷卓恒は、習近平一族は3,000社のペーパーカンパニーをつかって110兆円も私服を肥やしていると暴露しています。

加えて、独裁体制を確立するため、恐怖政治を行っている点も同じです。習近平は「腐敗撲滅運動」を旗印に、政敵を次々と失脚させてきました。2012年から2017年まで、累計25万人以上の共産党幹部が汚職で摘発されたとされています。

ロシアの場合には、反プーチンのジャーナリストや、元スパイの裏切り者、野党指導者が暗殺されるケースが相次いでおり、プーチンの関与が噂されていることはよく知られています。

「裏切り者」が次々消えていく ロシア暗殺の歴史を振り返る

こうしてみてくると、習近平とプーチンには権力とカネに対する執着が強い点で共通点がありますが、習近平の能力はプーチンに比べるまでもなく、プーチンが「気がおかしくなった」ことで同程度になったと言うことができます。

前述したように、プーチンは長年にわたりフォーブスの「世界で最も影響力のある人物」のトップに選ばれてきました。その一方で習近平はネット社会で「傻逼」(バカ)と呼ばれており、2013年に北京の肉まんを電撃訪問してからは、「習包子」と揶揄されるようになっています。「傻逼(サーピー)」と近い発音から「撒幣(カネを巻く)」という文字が使われ、「習包子大撒幣」という隠語での嘲り言葉もよく使われています。

2017年には、アメリカから中国に帰国した留学生が、「#XITLER #習包子 #大撒幣」というシャツを着て国慶節に街頭行進をすると宣告していましたが、その前日に国家転覆罪で逮捕されるという事件もありました。ちなみに「XITLER」は「HITLER(ヒトラー)」を習(XI)にもじったものでです。

穿著「習包子」T恤 留美中國學生被控顛覆國家

ロシア民衆はプーチンがおかしくなったせいで、今後、大きな苦しみを味わうことになるでしょうが、それでもまだ支持率82%を維持し、ウクライナ侵攻を74%のロシア国民が指示しています。

プーチン氏支持率は82%、ウクライナ侵攻「支持する」74%…ロシア世論調査

もちろんこれはロシア国内でのプロパガンダや反プーチン派の抑え込みなどが影響していると思われますが、それでも一応は形だけでも民主主義の体裁を整えており、支持率調査なども行われています。

しかし中国では選挙や世論調査などで民意を確認するシステムすらありません。中国人が「習包子大撒幣」とネットで陰口を叩き、当局がその投稿をしらみつぶしに削除しているのが現状です。

しかも、習近平は現在、ゼロコロナ政策に固執し、中国国民の不満が限界に達しつつあります。国内的には、プーチンよりも習近平のほうが人民から愛想尽かしされる可能性が高いといえるでしょう。

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