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傍観者も加害者同然。いじめ被害の女子高生が語った悲痛な胸の内

いじめに気づきながら傍観者のポジションに立つという、日本人にありがちなパターン。しかしそれは被害を受けている側から見れば、加害者に協力しているのも同然の行為に映るようです。今回のメルマガ『伝説の探偵』では、現役探偵で「いじめSOS 特定非営利活動法人ユース・ガーディアン」の代表も務める阿部泰尚(あべ・ひろたか)さんが、関東近郊のとある私立高校で起きたいじめ事件の一部始終を公開。さらにいじめのため不登校に追い込まれた女子高校生の、悲痛な心の内を紹介しています。

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傍観者も加害者。関東近郊の私立高校に通っていた不登校中のA子さんのケース

関東近郊の私立高校に通っていたA子さん(現在高校2年生)は、現在、いじめとその二次被害に苦しみ、学校には通うことが困難な状態になっている。

授業はリモートで受けて、テストの日だけ、時間をずらして別教室で受けている。

いじめは高校生になって部活動に入ってからすぐに始まった。

「全国大会には出ることができるかできないかというレベルですが、県大会ではいつも結構いい線いくみたいな部活でした」(A子さん)

「入るつもりはなかったけど、先輩にしつこく誘われて、だんだんやる気になってその部活に入ることにしました」(A子さん)

しかし、入ってすぐにいじめは始まった。

「私はもともと身体が柔らかくて、ストレッチとか筋トレは中学校の時からよくやっていたので、体力には自信があるんです。だから初心者なのに柔軟性のチェックで、すべてクリアできたとき、先輩たちからは、ものすごく喜んでもらえたけど、経験者の同級生の目はちょっとヤバいと思うくらい怖かったです」(A子さん)

はじめのうちは、無視、仲間はずれが行われていたが、次第に先輩の悪口を言っていたなどのデマが拡がるようになった。部活の同級生同士のLINEは何度も外しになっていたし、裏でグループをつくられては悪口を言われるなどが繰り返されていた。

先輩らもかなり注意をしてくれていたし、一緒に帰るなど気を使ってくれてはいたが、その数は次第に減っていったという。

部活の同級生は、自分のクラスの同級生を使って、A子さんのクラスメイトにも、身に覚えのない悪口を言ったなどを流され、徐々に周囲の目が厳しくなっていった。

堪りかねて、A子さんが顧問の教師に相談した。

顧問 「(いじめのことは)知ってますけど、なにか、私にできることってありますか?」「あなたが謝ればすむことじゃない」

など散々な対応をされて、加害生徒らを呼び出し、その場でA子さんは謝罪をしろと強要されたのだ。

結局、A子さんはその場で立ったまま悔しくて大号泣することになり、これを見かねて、別の先生が間に割って入り、A子さんは保健室で休むことになったのだ。

この日を境に、A子さんは学校に行くことに恐怖感が生じるようになり、過呼吸になって自宅の廊下でうずくまってしまう状態などから、不登校状態になった。

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学校の対応

学校に対してA子さんの保護者は、いじめについて対応をするように、要望をしたが、「いじめではない」との回答が初回の回答であった。

いじめではないとした理由を尋ねると、「関係生徒に話を聞いたが、そういうつもりではなかった」と反省しているからという頓珍漢な回答をしていた。

いじめ防止対策推進法の第2条「いじめの定義」では、「一定の関係性」「何らかの行為等」「被害側の心身の苦痛」の3つの条件が揃えば、「いじめ」となる。

つまり、何らかの行為等があったかなかったかが重要であり、加害生徒が「そういうつもりではなかった」と答えたら「行為自体」は認めたことを意味する。

よって、行為自体を認めている状態で、「いじめではない」という回答は、あまりに不自然なのである。

また、顧問の先生の対応について、顧問の先生自体は、自らの発言自体は認め、謝罪をしたと回答した。

つまり、謝罪をしたからその話はもう終わり、ということである。

ところが、A子さんも間に入った教員も、顧問が謝ったという記憶がないのだ。実際のことろ、謝罪はしておらず、「いじめられている方が謝って早く収めるのが当然」という対応であった。これについては、他の教職員からも、さすがにマズイ対応だという意見が多かったという。

そもそも部活合宿のたびに、生徒の保護者らは暗黙のルールで、生徒1泊1人当たり2万円の手当を顧問に払うことになっており、何かの度に食事代やおみやげ代、お車代をもらっていたなどが問題になりかけていたことを考えれば、この顧問に対しては、他の教員から見ても目に余るものがあったのだろう。

尚、学校としてはリモートで授業を受けることについては、当初は極めて否定的であったが、欠席日数のカウントで重大事態いじめになることを示唆すると、すぐさま、リモート授業を許可し、これに出ている限り、出席として認めますと宣言した。

2022年6月現在、学校はいじめの定義説明をしたところ、「いじめであった」ことは認めざるを得ないという回答となり、顧問は7月の夏休み前までに、謝罪文を提示することになっているが、A子さんもA子さんの保護者も、学校に対する信頼感はほぼない状況である。

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A子さんの心境

A子さんはリモートで私に、こう言った。

「学校には行きたいという気持ちはあります。修学旅行も参加したいし、文化祭などの行事もできれば出たい。けれど、普段休んでいるのに、そういうときだけ来るのかという目で見られるのではないかと思うと怖いです」

――加害者についてはどういう思いがありますか?

「そういうつもりではなかったけど、そんなに苦しんでいるならごめんなさい。という言葉を、先生を通じて聞きましたが、全く反省していないことは知っているし、もうすでに後輩の子をいじめているのも知っています。そういうつもりではなかったと言うなら、どういうつもりだったの?と聞きたいですが、もう関わりたくないという気持ちが強いです」

――顧問の先生にはどういう思いがありますか?

「先生の中でも偉い人みたいで、上から発言ばかりでしたが、いじめられているのを知っていて、どうして止めてくれなかったのか、すごく不思議です。正直なところ、先生の態度や言葉で、絶望を感じましたし、それが一番辛かったと思っています」

A子さんとの会話で最も重かった言葉は、「被害者という立場になって、被害者と呼ばれることに抵抗が少しあります。なんだか可哀想な人みたいな感じで、自分がみじめに思えたりするので…」という複雑な心境を言葉にしてくれたのは印象的であった。

また、「被害者とか加害者でいうと、何もしなかったという傍観者の人たちについてですが、私からすれば、何もしないは無関係じゃなくて、加害者に協力したように見えています。加害者の言葉ではないのですが、そういうつもりではなかったというのはわかるのですが、助けてほしかったという思いがあります」という正直な言葉は、いじめ対応の根幹に影響する被害者の多くが感じる率直な言葉だろう。

A子さんはその症状から学校に行くことはまだ難しいが、回復プログラムを受けはじめ、少しづつ回復して、色々話も聞くことができるようになった。

学校は、自分たちが配慮したおかげで回復してきたと思っているような対応をしていたが、そうした学習の配慮は当然のことであって、回復途中ではあるが、そこまでのプロセスは、A子さん本人と保護者の努力と負担によるものが主だと言える。

さらに、この先の大学進学に向けて頑張りたいという目標を聴くことができた(本人の意向で目標は秘密です)ので、目標に向けて進んでいってもらいたい。

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編集後記

対応において、学校のみの判断では無理があると考え、県の私学担当部署にも相談をして監督してもらう必要がありました。

私立学校は、公立校のように教育委員会の管轄ではないので、学校の設置者は学校法人となって、いじめの対応がおざなりになるところが多いと感じます。

本件では、他の教職員が、黙ってはいたが、この顧問に対する不満があるように感じました。保護者についても、よくわからない慣習で余分な出費がある事に不満があるけど、払わないことで我が子が差別的な扱いを受けたりすることは避けたいという思いがあり、仕方なく従っていたという問題も大きく絡み、いじめの下調べで、他の保護者に話を聞きに行くと、そうしたお金の問題がたくさん出てきました。

例えば、冬の4泊5日の合宿では、当然合宿の費用はかかります。そこに、4泊なので保護者は顧問にお手当として、8万円を個別に渡していたわけです。

生徒が25人くらい参加しますから、「25×8万円=200万円」の領収書のいらないお小遣いが入るわけです。夏、冬の2回、だいたい合宿があると考えると、1年間で400万円のお小遣いがもらえるうまい仕事になりますね。

確定申告してますか?と聞いてみましたが、なんで?っていう回答だったし、学校も薄々知っていたけど、把握はしてなかったので、きっと、それ、脱税ですね。

いじめの対応についても、いじめ防止対策推進法の基本中の基本から話をする必要がありましたが、こうした対応は他の事案でも多いので、もう諦めていますが、「日本語読めますか?」と訊きたいくらいです。

何にしても、本来知らなければならないことを知らずに、やらなければならないことをしていないことで、被害者がより酷い状態となり、視点を変えれば、加害者は反省の機会すら失うわけです。さらに、傍観者は「どうすることもできない」と自分を責めるなど、心の傷を負う子もいるわけです。

学校という組織にとっても危機だと思いますが、同時にそれは、生徒にとっても危機となると、この学校や、いじめ対応がおざなりになっている同様の学校については、再度考えて欲しいと思います。

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image by: Shutterstock.com

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社会問題を探偵調査を活用して実態解明し、解決する活動を毎月報告。社会問題についての基本的知識やあまり公開されていないデータも公開する。2015まぐまぐ大賞受賞「ギリギリ探偵白書」を発行するT.I.U.総合探偵社代表の阿部泰尚が、いじめ、虐待、非行、違法ビジネス、詐欺、パワハラなどの隠蔽を暴き、実態をレポートする。また、実際に行った解決法やここだけの話をコッソリ公開。
まぐまぐよりメルマガ(有料)を発行するにあたり、その1部を本誌でレポートする社会貢献活動に利用する社会貢献型メルマガ。

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