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値上げラッシュで募る不安。インフレが続くと年金にどんな影響を与えるのか

7月に入り、さまざまな商品やサービスの値上げが相次いでいます。私たちの生活を直撃するインフレ、それは年金にどのような影響を与えるのでしょうか?毎回、年金についての詳しい説明と事例を用いた解説で人気のメルマガ『事例と仕組みから学ぶ公的年金講座』の著者で、年金アドバイザーのhirokiさんは今回、不安な物価上昇について教えてくれます。

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戦後以降の物価上昇の経緯と、将来は一体いくらの年金が貰えれば安心なのかという問い

1.猛烈に物価が上昇した過去。

最近は物価の上昇で生活必需品などの値上げがひっきりなしですね…さすがに困りますね。

日本は平成になってからは経済成長が停滞し、ほとんど物価も賃金も上昇しませんでしたので、もうこれ以上物価が上がる事は考えにくいだろうと思われていました。

僕自身も物価が上がらない事は無いでしょうけど、そんなに影響があるほど上がる事はもはや無いのかなあ…と考えたりもしました。

しかしながら今回突然のロシアの軍事侵攻のせいで一気に世界中が物価上昇に見舞われました。世界の主要な国で戦争のような重大な有事が発生すると、案外簡単に物価上昇が起きるものなんだなと思いました。

そういえば物価の上昇で生活に特に直撃したのは、第二次世界大戦後の昭和20年前半と昭和48年の石油危機の時が有名ですよね。戦後すぐの日本はどこもかしこも焼け野原だったので、供給するモノがほとんどないような状況でした。

モノがないのに戦後に海外から帰ってきたり、戦争終わったから軍人も戻ってきたりしたので、約700万人程の人が増えました。

そんなに人が増えても、供給するモノがあまりにも足りないので猛烈な物価上昇が起きました。人が多いので何かを買いたいという需要は高くなったのに、供給するモノが無いからひたすら物価は上昇しました。物価が200倍ほどになって、ハイパーインフレと呼ばれました。

今じゃ禁止ですけど、日銀引き受けという事をやっていて、つまり日銀にせっせとお札を刷らせていたりもしました。機械的にひたすらお札を刷ってしまったらますますインフレになってしまいます。

例えば、100円で買えていたものが2万円出さないと買えないような状況ですね。貨幣の価値は200分の1になってしまってますね。

物価が上がると貨幣価値が下がってしまうので、それまで老後のためなどに貯めていた積立金はもうほとんど価値を失いました。

厚生年金の積立金もほとんど価値を無くしたので、そこでもう年金廃止論も出たりしました。

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積立金価値を失ってしまったので、昔の人はその時のトラウマがあるのか長期的な積立金や保険などに対しては疑り深い面があります。

お金が溢れてしまってるのにモノは少ないままだとインフレが止まらないので、市場に出回ってるお金の量を力ずくで少なくするために、当時は一定の金額が銀行から引き出せないようにしたりする預金封鎖も実施されました。

突然、「今持ってるお金はもう使えなくなりましたので、持ってるお金は全部銀行に入れて新しいお金にしましょうね」という事にもなりました。

つまり、例えば今持ってる1万円札が今日から使えなくなりました!ただの紙切れです^^って事になったわけですね。

紙切れになったしとりあえず銀行に有り金を全部預けてもらって、新しい紙幣にしますねって事になり、その後に引き出す預金を制限しました。

例えば今月10万円引き出したいのに、今月は3万円までしか引き出せません!というような事ですね。

あと、昭和48年の時も物価が2年で40%ほど上昇しました。日本から非常に遠い中東での戦争が引き起こした物価上昇でした。

アラブの人がイスラエルを支持してる国には石油は売らないよ!高くするよ!と、イスラエルを支持してる国には石油を売らなくしたり、石油価格を4倍くらい引き上げた事で世界が混乱しました。

そんな世界が同時不況に陥ってる最中に、日本は省エネ産業で乗り切って不況を脱出しました。

原子力発電もその頃から活躍するようになりましたが、現在はまたほとんど石炭や石油、天然ガスなどの化石燃料。

石炭輸入はオーストラリアとかインドネシアが上位で、石油はサウジアラビア、アラブ首長国連邦、カタールですね。

石油は相変わらず中東頼みです^^;エネルギーが輸入依存というのは怖いですね。生産国で何かあったら輸入が出来なくなるかもしれないし、政治的にも強く出れない。化石燃料も無限にあるわけじゃないからですね…

このように世界にとって大きな事件…特に戦争が起こると、簡単に物価が上昇してしまうのであります。

ちなみに、現在のように年金が物価スライドするようになった(物価スライド制)のは昭和48年改正からでした。

昭和48年は1年で20%ほど物価上昇したので、その分の年金がアップしました。

物価スライド制が導入されるまでは、第二次世界大戦で壊滅状態だった厚生年金が昭和29年に再建された時から概ね5年毎に年金額を再計算して、年金額を変更していました。

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物価スライドするようになって、年金は現在のように毎年動態的なものとなりました。

2.年金はいくら貰えれば将来安心なのか。

さて、ここで話は変わりますが、こう考えると「年金はいくらあったら安心」だと思いますか?

え?そうだなあ…やっぱ月30万円は無いとね!って思いますか。でも正直、いくらあれば安心という事はありません。

巷で人気の金融商品なんかは、ウン千万円は必要ですというような事をよく宣伝していますが、そのくらいのお金があればもう何が起きても大丈夫と言えるのでしょうか。

もちろんお金を貯める事が無意味だなんて言いません。むしろ貯金はあったほうがいいでしょう。

しかし、それでいくら貯めたら将来は安泰という事は無く、今回のように物価が上昇するとお金の価値は下がっていきます。

例えば2000万円貯めたとして、それがこれから何十年先も同じ2000万円の価値ではないという事です。

物価が今後2倍になれば、その2000万円のお金は1000万円の価値になりますし、物価が10倍になれば200万円程度の価値しかありません。

今は気楽に変えているモノが、迂闊に買えなくなってしまう。

今の生活必需品が、今後も何十年も生きていく中で迂闊に買えないものになってしまったら生活が非常に困難になります。

特に高齢者の方は働くという手段が簡単にできません。自分の資産と年金でなんとか暮らしていくしかありません。

このように単純に見た目の金額では安心そうに見えても、物価の変動で将来はどうなってるのか全く分からないのであります。今回みたいな戦争で簡単に物価が上がってしまう。

日本で物価が上がるなんて、バブル崩壊してからこの20年~30年くらい実感もなく、きっともうこれ以上上がる事は無いだろうと思っていた人も多いかもしれませんがウクライナの遠い地での戦争で簡単に物価は上がりました。

今でさえこんな物価上昇やら円安やらと騒がれてるのに、これから30年先…どころか10年先すら一体どうなってるのかちょっと怖い気がします。

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(『事例と仕組みから学ぶ公的年金講座』2022年7月1日号より一部抜粋、続きはご登録の上お楽しみください。初月無料です)

image by: Shutterstock.com

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佐賀県出身。1979年生まれ。佐賀大学経済学部卒業。民間企業に勤務しながら、2009年社会保険労務士試験合格。
その翌年に民間企業を退職してから年金相談の現場にて年金相談員を経て統括者を務め、相談員の指導教育に携わってきました。
年金は国民全員に直結するテーマにもかかわらず、とても難解でわかりにくい制度のためその内容や仕組みを一般の方々が学ぶ機会や知る機会がなかなかありません。
私のメルマガの場合、よく事例や数字を多用します。
なぜなら年金の用語は非常に難しく、用語や条文を並べ立ててもイメージが掴みづらいからです。
このメルマガを読んでいれば年金制度の全体の流れが掴めると同時に、事例による年金計算や考え方、年金の歴史や背景なども盛り込みますので気軽に楽しみながら読んでいただけたらと思います。

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