コロナ禍でなくなってしまったお店もあれば、それに負けじと開店するお店もあります。今回はそんなコロナ禍でのオープンから2年経過して人気となっているお弁当屋さんを繁盛戦略コンサルタントの佐藤きよあきさんが紹介。自身のメルマガ『繁盛戦略企画塾・『心のマーケティング』講座』の中で、コロナや食材の高騰の中でも激安弁当の値段を変えない理由とは?
ある居酒屋店主が、「200円弁当」を売り続ける理由
大阪市都島区。京橋と呼ばれる地域にある商店街の一角に、激安のお弁当屋さんがあります。
200~500円(税抜き)。
チンジャオロース弁当、麻婆豆腐弁当、のり弁当などが200円。豚カツ弁当、手ごねハンバーグ弁当、から揚げ弁当、チキン南蛮弁当などが300円。しゃけ弁当、焼き鯖弁当、カツとじ弁当、カキフライ弁当などが400円。牛肉ハラミ弁当、特ハンバーグ弁当、特海老フライ弁当などが500円。
冷凍食品などは使わず、すべて手づくり。
食材や油が2倍3倍に値上がりしているいま、「断固、値上げせず!」と意気込み、激安弁当を売り続けています。
お店のオープンは、2年前。コロナ真っ只中の2020年。商売をする上では非常に厳しい状況の中、あえて開店に踏み切りました。
それは、テイクアウトなら売れる、儲かる、という狙いではなく、コロナで生活が苦しくなった人を助けるためだったのです。給料が減ったり、仕事がなくなった人に、お金が無くても美味しいものを食べさせてあげたい、という強い思いがあったからです。
そこで誕生したのが、200円弁当。
お弁当を200円で買うことができるなら、それは非常に嬉しいことです。
お弁当は、日本人にとって特別な存在。大切な人が作ってくれた想い出。愛する人のために作った想い出。人それぞれにお弁当への愛着があります。
それが売っているものであっても、特別感があり、人恋しさと同じような感情を持ってしまうものです。そんなお弁当が200円なら、お金の無い人でも、束の間の小さな幸せを手に入れることができます。
店主は、そんな人たちを少しでも多く助けたいと思っています。
しかし、激安過ぎて、赤字が続いています。もうひとつ居酒屋を経営しているので、その売り上げから赤字を補填している状態です。
パートさんから「値上げしたら?」と言われても、首を縦には振りません。ネットの口コミでも「値上げして欲しい」とまで書かれるぐらいです。
それでも店主は、値上げをしません。
困っている人たちを助けるために、店主自らが苦しい思いをして、毎日毎日手づくりのお弁当をお店に並べています。
それは、お客さまの笑顔を見るため。「こんなに美味しいものをこんな値段で売ってくれるなんて」という喜びを提供するため。
店主は言います。
「楽しいことばかりじゃ、楽しくない。しんどい中に楽しいことがあるから、幸せを感じるんだと思う」
店主にとっては、お客さまの喜ぶ顔を見ることが幸せなのです。
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