消費者にとって、値段は多くの類似した商品を比較するのに重要な要素ではありますが、「価格は高いけど…」と、その他の点で購入することも多いですよね。今回のメルマガ『理央 周の売れる仕組み創造ラボ【Marketing Report】』の著者でMBAホルダーの理央 周さんが 、そうした値段以外で選ばれるための“差別化の方法”を紹介しています。
この記事の著者・理央 周さんのメルマガ
値段以外で選ばれるには何をすればいいのか? 大京のマンション開発に学ぶ差別化の方法
マンション開発大手の大京が、今後開発する分譲マンションの駐車場に、電気自動車(EV)用のコンセントを標準で設置する、と発表したのが、話題になっています。
大京のホームページにその写真が載っているのですが、駐車場の壁に充電器のようなものが設置してあって、そこからケーブルで直接車に繋ぐ、という感じです。
そこだけ見ていると、ガソリンスタンドで、ホースを給油口につないでいるのと全く同じに見えます。
この仕組みは、ユビ電株式会社(プレスリリースより本社:東京都渋谷区、代表取締役:山口典男)の、「WeCharge」というアプリを使うそうです。
EVやガソリン併用のPHV(ハイブリッド車)で、使えるとのことで、プロセスも意外とシンプルです。
バーコードを読み取って、アプリでクレジットカードの情報など利用の手続きをします。そして、自分に合った料金プランを選びます。
これもサイトに一覧表になっていますが、ベーシックプランだと、月額基本料金は不要、1時間当たり176円とのことです。
次のショートプランでは、月額の基本料金が1,100円で、30kWhまではその定額、
それを超える場合は1時間につき、超過料金 49.5円/kWhとのこと。
これ以外にも、ミドルプラン、ロングプラン、スーパーロングプランと、全部で5つのプランから選べるようになっています。こういう全てのプロセスを、スマホでできる、というもの便利ですよね。
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プレスリリースには、電池残量20%から80%まで充電する場合の目安が車種別に書いてあり、例えば、テスラのModel 3だと、54kWh必要でそれだと大体565km走れるそうです。
その充電に約12時間ですよ、と書いてあるので、自分がどれだけ走るか、どのくらいの充電でいくら必要かも、わかりますよね。
大京は、2010年から、開発する分譲マンションで、駐車区画数の10%に、EV充電コンセントを標準設置しているそうです。
今回は、その設置率を50%に引き上げていき、さらに残りの駐車区画には、将来的にEV充電コンセントの増設が可能にするので、今後は開発物件の駐車区画の、すべてでEV充電が利用できるようにする、という方針だそうです。
将来的にEVの需要が広がっていくことを見越しての、取り組みです。住んでいる場所で、手軽に充電できる駐車設備があると、他の物件と比べられた時に、価格以外の点でも優位にたてます。
ガソリン車にとってのサービスステーションが、自宅にあるようなものですから。マンションの販売においては、立地や築年数が価格の大事な要素です。
しかし、そのような目に見える「機能的な価値」だけで、勝負をしていると、顧客が比較して購入検討をする際に、価格での勝負になりがちです。
今回のような「便利さ」という、感情に訴えられる付加価値をつけると、価格ではない点で選ばれる、大きな要因になります。
本来の差別化とは、ライバルと違うものを作るという意味ではなく、顧客から見て「他社より価値がある」、と認識されること。
差別化は、競争優位に立つための原点です。その意味で、多くの業界で参考にできる事例です。
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