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ギフテッド支援を検討する日本に“天才の子供”が少ない当然の理由

“ギフテッド”という子どもたちの存在をご存知でしょうか。特定分野に特異な才能のある児童のことですが、この子どもたちの支援に日本も動き出しています。今回のメルマガ『デキる男は尻がイイ-河合薫の『社会の窓』』では、著者で健康社会学者の河合薫さんがギフテッド支援の詳細と、今の日本における子どもたちの学びの問題点を語っています。(この記事は音声でもお聞きいただけます。

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“天才“の芽を摘む大人たち

特定分野に特異な才能のある、“ギフテッド“と呼ばれる児童生徒の支援に、文部科学省が乗り出すことがわかりました。

米国ではギフテッドの生徒を選別するために、さまざまな手法で能力や可能性を測定。州や大学などが、飛び級や様々な教育プログラムを用意し、サマープログラムやオンラインプログラムを通じて、才能教育を行っています。

日本でも2021年6月に文科省が「才能のある子の指導・支援」有識者会議を設置し、議論を重ねてきました。

その結果、7月25日に行われた会議で、得意な才能のある子に適した学習機会を確保する方針を決定。NPOや大学が開く教育プログラムへの参加や、別教室で高度なオンライン授業を受けられるなどの支援策が想定されています。

一方で、何をもって“得意な才能“とするのか?特別支援の対象にどうやったら選ばれるのか?得意な才能をどうやって伸ばすのか? については、決まっていません。

IQなどの指標で選別することには、否定的な意見が多かったようですが、「とりあえずスタートはするけど、問題は山積している」ということでしょう。

米国でも、連邦政府の定義では、「知性、創造性、芸術性、リーダーシップ、または特定の学問分野で高い達成能力を持つため、その能力をフルに開発させるために通常の学校教育以上のサービスや活動を必要とする子どもたち」としていますが、実施されているギフテッド教育プログラムの選抜では、IQや学力テストを基本にしているようです。

ちなみに、National Association for Gifted Children(全米ギフテッド教育協会)の調べでは、米国の子ども全体の約6%(約300万人)がギフテッドと推計されています。・・・結構、いますね。

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個人的には、才能ある子が能力を発揮できる社会であってほしいと願っているので、少々前のめりでも「学ぶのって楽しい!もっともっと知りたい」と知の遊びに没頭できる環境を進めて欲しいです。

しかし、有識者会議が子どもたちに実施したアンケートの自由回答には、社会に根付く日本の「大人たちの問題」もちらほら。

などなど、日本の教育のあり方というか、先生=大人の問題点が浮き彫りになりました。

いわずもがな日本には「普通がいちばん」という、暗黙のルールが存在します。私自身、13歳の時に米国から帰国した際、「普通がいちばん」というルールに混乱し、それは私にとって拷問でした。

米国では人と違うことが前提で社会が成立し、学校では常に「自分MAX」になる教育を受けてきました。

勉強好きな子は勉強し、かけっこの速い子は陸上チームに入り、おませな女の子たちはリップを塗り髪の毛をブリーチし、誰もが「最高の自分」を目指しました。

「自分の意見を言いなさい」と教育されてきたのに、日本では黙っている方が安全。手を挙げて意見を言うと、ダサい、でしゃばり、目立ちたがりと揶揄されます。

普通がいちばんの日本では「みんなと一緒」じゃないと嫌われてしまうのです。

得意な能力などない平凡な私でさえ、日本の学校は息苦しかったのですから、“ギフテッド“の子が自ら「自分の能力」を押さえ込んしまうのはごくごく自然なこと。

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いつの時代も「子どもの社会は大人社会の縮図」です。日本の企業をみれば、いかに“異物“が排除されてきたは一目瞭然。極論を言えば、女性の活躍さえ進まない日本社会で、特異な才能のある子が活躍できる社会を実現するには、チョモランマ並みの高い壁を乗り越える必要がある。

この問題の解決には、まずは大人たちの問題も解決せよ!と。「隗より始めよ!」と喝を入れたくなってしまうのです。

私は中学校理科の教科書づくりの編集委員をやっているのですが、「今の子供は考える力が不足している。授業では考えさせる授業を!」と文科省から散々言われました。

そこで「考える」題材を教科書に入れ込む。すると現場の先生から「答えがないと成績がつけられない」とクレームがくる。大人たちが「考えるとはどういうことか?」がわかっていないのです。

本来、「考える」とは「知の遊び」です。

なぜ、雲は空に浮かんでいるか?」を考えるなら、雲粒が何でできているのか、なぜ白く見えるのか、雲はどこでできて、どのように消えるのか?を、なぜなぜ坊やのように問い続ける。

知識を広げ、脳内のお猿やたぬきやウサギたちと「あーでもない、こーでもない」と議論し、それを他者に伝える言葉に変換する。

このプロセスこそが、考える作業です。それは自分を丸裸にする行為であり、不完全な自分との仁義なき戦いでもある。そして「知の遊び」の積み重ねこそが幸せな人生につながります。

ところが学校という組織は「考える」ことを用意された答えにたどり着くまでのプロセスと勘違いしているらしい。

「答えがないと成績がつけられない」というクレームは、大人が「考えるとは何か?」を考えないまま、「子供に考える授業を!」とあべこべをリクエストしているのです。

とまぁ、今回もギフテッド議論から、飛躍した展開になりましたが、みなさまのご意見、お聞かせください。

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image by: Shutterstock.com

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