ノーベル賞はもう出ない?日本の若手研究者を取り巻く悲惨すぎる現実

 

研究環境が急激に悪化したのは、2000年以降。研究が評価されるには20年近い歳月がかかると言われていますので、今後は今までのような受賞ラッシュはないでしょうし、ノーベル賞博士が誕生するかも危うい。

山中教授は、研究の成功率は1割、あるいはホームランか三振とも言っていました。任期付きの場合、その間に結果を出さないと、次の就職先を見つけるのも難しい為、成果の上がりやすい研究を好む研究者が増えたり、雑な研究を行うケースも予想されます。つい、本当につい、“悪魔の囁き“に負けてしまう研究者をだしてしまう可能性も否定できません。むろん、そんなことがあってはならないことではありますが。

一方で、若い研究者の場合、腕を磨くために研究機関を渡り歩く人がいるのも事実です。しかし、だからといって不安定かつ低賃金の非正規雇用を肯定する理由にはなりえません。

とにもかくにも大学に金がない。国は、国立大学が法人化された04年度以降、人件費や研究費など大学の基盤的経費となる「運営費交付金」を段階的に削減。一方で、稼げそうな研究には大枚を叩く。それが国の方針なのです。

ちなみに冒頭の研究支援員は、研究者を支える専門職員です。実験や調査、データの入力整理や解析、簡単な統計処理、文献の収集や翻訳、研究報告書の作成等、仕事は多種多様。大学によって採用基準に若干違いはありますが、研究職と同等の学歴が求められます。

一言で言うと、「あなたがいてくれて本当によかった!」という頼り甲斐のある存在です。そういう貴重な人材が非正規だと優秀な人が集まりづらいし、九大のケースのように、雇い止めされてしまうのは、研究の現場にとって大きな損失です。

日本の地盤沈下は、「私」たちが考える以上に深刻で、若手研究者たちの「貧困ぶり」も、みなさんが考える以上です。本当にこれでいいのか?研究者を軽んじる国に、どんな未来があるのでしょうか。

みなさまのご意見、お聞かせください。

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