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老後に貰える公的年金は平均14万円。少しでも増やすにはどうすれば良いか

会社員・公務員が受け取れる公的年金の合計の平均は14万4366円といわれています。この金額を見て、少し心もとないなと感じる人が多いのではないでしょうか。では、年金を月に20万円貰っている人はどのくらいいるのか、将来貰うためには今なにをすべきなのでしょうか。

年金を月20万円もらっている人はどれくらいいる? もらうためにはどうすべきか

会社員・公務員の方が受け取れる公的年金(老齢基礎年金+老齢厚生年金)の合計は平均14万4366円(厚生労働省「令和2年度厚生年金保険・国民年金事業の概況」)です。男性の平均月額は16万4742円、女性の平均月額は10万3808円となっています。

今回は、年金を月20万円もらっている人はどれくらいいるのか、そして月20万円もらうためには年収・加入期間・繰り下げはどのくらい必要なのか、解説します。

■全体の83.9%が年金月額20万円未満

下の円グラフは、厚生労働省年金局公表の「令和2年度厚生年金保険・国民年金事業の概況」による年金月額階級別の老齢年金受給権者数(国民年金を含む)です。1万円ごとの受給者数データがありますが、イメージしやすいよう年金をどのくらいもらえているのか5万円ごとの金額別で示しています。

●金額別年金受給者数

(株)Money&You作成

全体の年金月額は「10~15万円未満」と「15万円~20万円未満」の割合がそれぞれ30.3%と多数派となっています。全体の83.9%が20万円未満です。
男性の年金月額は15万円~20万円未満の割合が最も多く41.5%となっています。20万円未満に絞ってみると76.4%ですから、4人に3人は20万円未満です。
女性の年金月額は5万円~10万円未満の割合が最も多く43.4%となっています。20万円未満に絞ってみると98.7%です。

■もらえる年金額を計算するポイント

公的年金には、国民年金と厚生年金があります。国民年金は、20歳から60歳までのすべての人が加入する年金です。それに対して厚生年金は、会社員や公務員が勤務先を通じて加入する年金です。

会社員や公務員は毎月の給与から厚生年金保険料(国民年金保険料含む)を支払っています。原則として65歳から国民年金と厚生年金両方の老齢年金を受け取ります。
国民年金の老齢年金を「老齢基礎年金」、厚生年金の老齢年金を「老齢厚生年金」といいます。

さて、記事のテーマである「年金を月20万円もらうためにはどうすべきか」を考えるにあたり、押さえておきたい計算のポイントがあります。

●老齢厚生年金と老齢基礎年金で計算方法が異なる

老齢厚生年金の金額は「平均年収÷12×0.005481×加入月数」という式で簡易的に計算できます。この計算式からは、平均年収が多い、加入月数が多いともらえる金額も増えることがわかります。
老齢基礎年金の満額は77万7800円(2021年度)。20歳~60歳までの40年間(480ヶ月)国民年金保険料を支払えば満額が受け取れます。しかし、保険料の払込期間が40年に満たない場合は、その分減額となります。たとえば、もし国民年金保険料を全体の4分の3の期間(30年分)しか支払っていなければ、老齢基礎年金の金額も4分の3になるというわけです。

●老齢厚生年金の保険料には上限がある

老齢厚生年金の金額は、平均年収が多いと増えるとお話ししましたが、どこまでも増えるわけではありません。老齢厚生年金の保険料には上限があり、年収762万円を超えると、それ以上、納める保険料は増えなくなります。納める保険料が増えないということは、もらえる年金額にも上限があるということです。

これは、「標準報酬月額」という金額によってわかります。
標準報酬月額は、厚生年金保険料などの社会保険料を算出するときの基準となる給与のことです。原則として、毎月4月~6月の給与の平均額(報酬月額)を等級表に当てはめることで、標準報酬月額がわかります。

32段階に分かれている等級のうち、もっとも高い32等級の標準報酬月額が65万円です。月額63.5万円以上の方は、すべて32等級となるため、極端にいえば年収762万円でも年収1000万円でも支払う厚生年金保険料は同じで、加入月数が同じであれば公的年金の金額も同じになります。

●70歳まで厚生年金に加入できる

厚生年金は、原則として70歳まで加入できます。働き続けることで加入月数が増えるため、その分受け取れる厚生年金の金額も増えます。年金を月20万円もらうための努力ができるということです。

●年金の繰り下げ受給で受け取れる金額が増やせる

年金の受け取りは原則として65歳からですが、受け取りの開始時期を遅らせることができます。これを繰り下げ受給といいます。
繰り下げ受給では、65歳から1ヶ月遅らせるごとに年金額が0.7%ずつ増えます。2022年4月以降は、最大で75歳まで繰り下げることで年金額が84%増やせます。

■平均年収と加入月数の違いで年金はいくら変わる?

23歳から厚生年金に加入したと仮定し、「平均年収」と「加入年数」の違いで65歳時点でもらえる年金額はいくらになるのか試算してみました。

●年金早見表(23歳から厚生年金に加入した場合)

(株)Money&You作成

表の上側の緑色の行は厚生年金の加入期間と年齢、左側の青色の列は平均年収を表しています。また、表内の金額は国民年金満額(77万7800円)と厚生年金の金額を合計した目安の金額(年額)。65歳未満の金額は、65歳時点で年金を受け取った場合の金額です。

年金が月20万円ということは、年金の年額が240万円以上になればいいということです。該当の箇所を赤色にしてあります。

表から、平均年収762万円以上の方は、60歳まで厚生年金に加入して働けば、「65歳以降に年金月20万円」が達成できます。平均年収700万円でも同様に、64歳まで厚生年金に加入して働くことで年金を月20万円もらえます。しかし、平均年収がそれ以下の場合は、まだ月20万円に届いていないことがわかります。

では、65歳以降、70歳まで厚生年金に加入しながら働いたら上乗せされる年金はいくらでしょうか。

●加算される年金額早見表(年額)

(株)Money&You作成

65歳から年収300万円で70歳まで働くと、年間8万2000円が加算されます。表の通り、65歳以降も厚生年金に加入して働くことで、着実に年金額が増やせることがわかりました。しかし、これだけでは年金月20万円を達成するには厳しい状況でしょう。
そこで「繰り下げ受給」の出番です。

■年金の繰り下げを行えば、年金を月20万円もらえる可能性が上がる

65~70歳で厚生年金に加入した場合と年金の繰り下げを組み合わせた場合、もらえる年金額は次のように変わります。

●年金早見表(65歳以降も厚生年金に加入&年金の繰り下げ)

(株)Money&You作成

「年金月20万円」を達成できる方が大きく増えたのがわかるでしょう。たとえば平均年収が400万円の場合、69歳まで働きかつ年金の繰り下げをすれば、以後は月20万円の年金が受け取れる計算です。
また、70歳以降は厚生年金に加入できないので、年金の繰り下げだけになっていますが、平均年収が200万円の場合でも、70歳まで厚生年金に加入して働き、75歳まで年金の繰り下げをすれば「年金月20万円」近くの金額がもらえる計算です。

なお、ここで記載しているのはあくまでも、年金額の額面です。
実際の手取りは税金・社会保険料が差し引かれた金額となります。

■iDeCo・つみたてNISAも大事だが、最優先は公的年金を増やすこと

自分自身で備える「自分年金」の代表格に「iDeCo」と「つみたてNISA」があります。iDeCoは税金を減らして老後資金を効率よく貯められる制度であり、つみたてNISAは運用益を長期間非課税にできる資産形成の制度です。どちらもお得な制度なので、活用すべき制度ですが、それよりも公的年金を増やすことを優先しましょう。

今回紹介した「長く働く」「年金の繰り下げ」は大切ですが、「未納」「免除」「猶予」をなくすことも重要です。
国民年金保険料を「未納」にすると、その期間の国民年金はもらえなくなります。未納期間が1年間ある場合、もらえる国民年金の金額は2万円近く減る計算。未納であっても2年以内であれば保険料を支払えるので、きちんと支払いましょう。

国民年金に加入する20歳時点で学生だった方の多くが利用する「学生納付特例」も「猶予」であって「免除」ではないため、後から納付しないままでいると「未納」の扱いになり、将来の国民年金のもらえる金額が減ってしまいます。学生納付特例を受けている場合、10年以内であれば保険料を納付できます。

「猶予」「免除」を受けている場合も、10年以内であれば保険料を追納できます。期間内に過去の分を納付すれば、本来の保険料を納めたときと同じだけの国民年金をもらうことができます。

もし、すでに国民年金保険料を追納できないという場合は、60歳から65歳までの間、国民年金に任意加入することができます。任意加入することによって未納期間が減るため、もらえる国民年金の年金額が増えます。

国民年金や厚生年金は増やすことができますし、iDeCoやつみたてNISAなどの私的年金を使って自身で備えることもできます。ぜひ、自分の年金はいくらもらえるのかを知ったうえで、老後対策を実践していきましょう。

プロフィール:頼藤太希(よりふじ・たいき)

Money&You代表取締役/マネーコンサルタント

慶應義塾大学経済学部卒業後、外資系生保にて資産運用リスク管理業務に従事。2015年に(株)Money&Youを創業し、現職へ。マネーコンサルタントとして、資産運用・税金・Fintech・キャッシュレスなどに関する執筆・監修、書籍、講演などを通して日本人のマネーリテラシー向上に注力している。『はじめてのFIRE』(宝島社)、『1日1分読むだけで身につくお金大全100』(自由国民社)、『はじめてのNISA&iDeCo』(成美堂出版)など著書多数。日本証券アナリスト協会検定会員、ファイナンシャルプランナー(AFP)、日本アクチュアリー会研究会員。

image by: Shutterstock.com

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