先日掲載の「教員らの暴走、校長の嘘。いじめ被害者を迫害する小学校『異常対応』の証拠写真」でもお伝えした通り、いじめの被害者に対してにわかに信じがたい対応を取り続けていたことが明らかになった、和歌山県海南市立小学校の教職員たち。しかし彼ら及び海南市教育委員会は、事実の隠蔽にまで手を染めていることが判明しました。今回のメルマガ『伝説の探偵』では、現役探偵で「いじめSOS 特定非営利活動法人ユース・ガーディアン」の代表も務める阿部泰尚(あべ・ひろたか)さんが、この「事件」の続報を配信。開示請求により判明した学校及び市教育委の卑怯な嘘を公表しています。
【関連】教員らの暴走、校長の嘘。いじめ被害者を迫害する小学校「異常対応」の証拠写真
この記事の著者・阿部泰尚さんのメルマガ
市長は放置か。海南市立小学校で起きた重大事態いじめ事件、続報
前回、和歌山県海南市の市立小学校で、本来、重大事態いじめと判断される酷い暴力いじめ等が隠蔽され、さらに助けるはずの教員らが、被害児童らに対して加害者に謝れと指導したり、恐怖などで教室に入れない被害児童が、勇気を振り絞って廊下から授業を受けているのに、担任が教室と廊下のガラスに紙を貼って授業を受けることを妨害するという異常事態が起きているということを報告した。
特に、ガラスに紙を貼って授業を受けさせないようにした写真は衝撃的であり、賛否両論が吹き荒れた結果ともなったが、まだまだ続報はあると予告した。
前回記事は下記。
【関連】教員らの暴走、校長の嘘。いじめ被害者を迫害する小学校「異常対応」の証拠写真
被害児童はすでに小学6年生になっている。
いじめ自体は幼稚園からあり、小学1年生においては、いじめの被害が深刻となって、登校班に当たる地域の保護者が交代で迎えに行くなどして、自ら我が子を守る行動に出ざるを得なかったのだ。
この契機ともなった出来事が、周辺に広がる用水路での出来事だ。
被害児童のお母さんによれば、赤で囲んだところに、小学1年生の女子児童が2人立たされている状態であった。
当日は、田植えのシーズンで水かさが増し、さらに午前中のゲリラ豪雨でさらに水があふれていたとの証言もある。被害児童のお母さんは、時間になってもなかなか帰ってこない我が子を心配して探しに出て、この用水路のところで、加害児童のBが道路上に立ち、用水路中段に降ろされているAさんとその友人を発見し、慌ててランドセルをもって、道路に引き上げたという。
この当時一緒に用水路中段まで降ろされた同級生の保護者は、当時の様子を、「あのままだったら用水路に落とされて命を落としていたかもしれない。」と語っている。
一方、学校と教育委員会の言い分は下記の通りだ。
「これはミッションという遊びに過ぎない。落とされそうになったという事実はない」
その上で、遊びだから、いじめとしては捉えていないというのだ。
ここで、いじめ防止対策推進法第2条のいじめの定義を確認したい。
(定義)
第二条 この法律において「いじめ」とは、児童等に対して、当該児童等が在籍する学校に在籍している等当該児童等と一定の人的関係にある他の児童等が行う心理的又は物理的な影響を与える行為(インターネットを通じて行われるものを含む。)であって、当該行為の対象となった児童等が心身の苦痛を感じているものをいう。
つまり、「一定の関係性があり」「何らかの行為などがあって」「被害側が心身の苦痛を感じたら」いじめということになる。
簡単に言えば、Aさんが心身の苦痛を感じたら、いじめなのだ。
加害者らにとって、これが遊びの領域だとしても、その言い訳は関係ないのである。
私は、この用水路を見て、高知県南国市で起きた「高知県小学生水難事案」の岡林優空君の事を思い出した。小学1年生の平均身長は110センチから120センチほどである。用水路の水かさが増していれば、その流れも速く、危険であると感じるのは子どもでも同じなのだ。
【関連】あまりに多い嘘。探偵が調査で見抜いた高知小2水難事故の深い闇
Aさん本人は、怖くて一歩も動けずにいたという。降りなければ髪を掴まれたり殴られたり蹴られたりする。背中を蹴られるかもしれないという恐怖もあり、友達と恐怖に震えていたのだ。
お母さんに引き上げられたとき、助かったと思ったそうだ。
さて、これが、心身の苦痛には当たらないのだろうか?
いじめを否定しようと必死なのはわかるが、特に海南市教育委員会は保護者同席での一度しか聞き取りをしていない。まるで、Aさん本人から直接聞き取りをして、心身の苦痛はない、楽しい遊びだったというような主張をするのは、聞くに堪えない大嘘なのである。
この記事の著者・阿部泰尚さんのメルマガ
いじめは何度も直接Aさん本人からも伝えられていた
市教委も学校も、いじめの申告は無かったから、いじめの継続性はないとして、重大事態いじめを見送り続けた。
しかし、Aさん本人は、必死で接点がある学校に直筆でいじめを訴え続けていたのである。
これは、Aさんが小学3年生の時に書いて学校に提出した「いじめアンケート」である(被害保護者提供、掲載確認をして承諾を頂いております)。
これだけ具体的にいじめの態様が書かれているアンケートを提出されておきながら、不登校定義以上の欠席をしているのに、重大事態いじめではないと当事者が6年生になる現在までも放置していたのである。
いや、放置というのはまだ良い表現だ。実際は、被害を訴え続ける保護者とAさん、また同様の被害を受け同じように対応している保護者や被害児童らを、クレーマー、モンスターペアレンツだとして、対決しているのである。
学校による登校妨害
Aさん本人は見た目、かなり回復しているように見える。私が訪問したときは、玄関先で挨拶をしてくれたし、帰りにも見送ってくれた。
小学6年生現在、何の被害を受けていない子よりは心的障壁があるものの、学校には登校している。
しかし、ここまでできるようになったのは、Bの被害を受けて、もう学校に登校することができなくなってしまった友達や被害の事を思い出すことすら恐怖になっている友達の代わりに、自分がその声も届けようという強い思いがある。
そして、なにより、200キロも離れた名医のもとに通い続けた、「PTSD回復プログラム」の効果であるのだ。
Aさん本人も、保護者も、口をそろえて、こう言う。
席を離すとかの配慮とかはありましたが、PTSDの状態であるのに、その状況も確認しないで、「心理士いればいいでしょ」みたいな対応でAさん本人が怖がっていても聞き取りをしようとしたり、授業を受けようとするのを妨害したり、あまりに酷い対応しか受けていません。
10月には運動会がありますが、全く配慮されず、フラッシュバックなどが起きて倒れてしまうなどもあるので、今年も運動会には参加できなくなります。すごく悔しいです。
現在、登校できているからいいでしょという論調が学校にはあるが、登校できるようになったのは、Aさん本人と200キロも離れた名医を探して通うという保護者の犠牲によって、できるようになったことであり、現在も、「職員会議で共有しました=いじめの対応をしています。」的にやったふりと、やったつもりになっている無策な学校のおかげではないのである。
Aさんから悔しいという言葉がでる運動会の不参加については、学校が行った被害者らへの登校妨害と評価してもいいだろう。
教育に携る者であるならば、Aさんら被害者が少しでも参加できるような最大限の配慮と対策を今すぐ行うべきなのだ。
一方で、日中働いている両親が有休を取らなければ参加できないように会議をセッティングしたりする細かな嫌がらせは、今すぐやめた方がいいし、被害者の個人情報に繋がることを無配慮に口にするなどは公務員としてあるまじき行為であると付け加える。
(本件については、Aさんと保護者の要望により、予定稿を差し替えて出稿しています)
この記事の著者・阿部泰尚さんのメルマガ
Aさんと保護者からのメッセージ
「私は悪いことをやっていない」これは常々娘が口にする言葉です。
この記事に書かれていることは、全て事実です。阿部さんにもご確認いただきましたが、公文書の他、写真や録音もあります。
娘本人からは2年生の時、教育委員会に手紙書きました。これは学校へ行けない状態の娘に対し、連日時間も関係なく学校から聞き取りの為に登校するように電話があり、登校できない状態だと伝えると、「聞き取りができなければいじめとして扱わない」と担任に言われた為です。娘に伝えると、「手紙なら書ける」というので、時間をかけて書きました。
その内容は、自分が受けたいじめの一部と、友達が受けたいじめに対するものでした。これも開示請求した中にありましたので、今も海南市教育委員会にあるはずです。本当に辛い思いをし、途中でフラッシュバックしながらも必死に書いた内容です。友達を助けたいという気持ちです。今も友達はいじめのことを話せません。だから、代わりに自分がという気持ちです。
それ以外にも、3年生の時にいじめアンケートを提出しました。この時期は、医師より「PTSDの専門の治療が必要」との判断で、県外の専門医の診察を受けている時でもあります。どれだけ苦しい思いをしながら書いたものか想像できますでしょうか。そんな思いをして書いたアンケートも、教育委員会は自宅で保護者が書かせているもので、娘本人の意思ではないと主張しています。この病院では診断書を書いて頂くまでに3か月通院し、カウンセリングや専門の検査員による検査を経て、その後治療プログラムが開始されました。ここまで書けば、その治療がどれだけ苦しいものかお分かり頂けるかもしれません。本人の治療したいという強い意志がなければできない治療ですし、車で往復200キロの距離を毎週通院すること自体大変なものでした。このような時期にいじめの聞き取り調査をすると学校から言われました。母立ち合いで聞き取り調査に応じましたが、前述同様に保護者が言わせている、保護者が妨害したと教育委員会は主張しています。
また、市教育委員会学校教育課課長が「保護者と児童の訴えに差異がある」ことを理由に、重大事態の調査をしないと言っていることを耳にしました。本人がアンケートにも書いたし、聞き取り調査で訴えたのにと。その時、あることを思い出しました。
以前学校や教育委員会と保護者の面談の内容が一字一句違わずに書かれている書類に違和感があり、開示請求した内容が録音されているのではないかと疑い、開示請求しました。すると音声は存在し、都合の悪い部分だけ切られていたことが判明しました。
そこで膨大な書類と音声から探し出し、阿部さんの記事にもある「用水路」のことが、保護者が録音した音声にはあるのに書類にはないことを確認しました。
この記事の著者・阿部泰尚さんのメルマガ
ここには伝えきれないことが、山ほどあります。
この記事を読んでくださっている皆さんに伝えたいことはまだまだあります。記事を読み、応援してくださったり記事を拡散してくださった皆様、本当にありがとうございます。
娘が不登校の間も、誕生会やクリスマス会に招待してくださったお友達や保護者の皆様、本当にありがとうございます。
いじめの聞き取り調査を何度も何度も受け、話せなかった娘たちの分まで話してくださった本当に多くの皆様、ありがとうございます。そのおかげでいじめの証言が開示請求した書類に、今も私共の手元に存在しています。教育委員会が調査したがなかったという証言は、保護者が半日と掛からず手にすることができました。書面や電話、そして動画で提供してくださった皆様ありがとうございました。いつの日か、要望している第三者委員会や重大事態の調査が行われた時の為に、今も大事に保管しています。
多くの方々に支えられ、娘は治療プログラムも終了し、今に至っております。治療してくださった4名の医師と2名のカウンセラーの皆様、本当にありがとうございます。付き添いなどに対応するために駐車場を提供してくださった皆様、本当にありがとうございます。不登校になって、すぐに訪問してくださった民生委員の皆様、本当にありがとうございます。議会の委員会で質問してくださった市会議員さんもありがとうございました。市教育長がどのように発言していたのか、議事録に残すことができました。
学校関係者の中でも、公にするとご迷惑がかかるのでどなたかは言えませんが、証言してくださり中には音声も取らせてくださった皆さま、本当にありがとうございました。地域の皆様に支えられ、親族で娘を支えることができました。
ただ残念なのは教育委員会や学校、学校立ち合いの謝罪や話し合いにも応じない加害児童とその保護者です。
改めて言います。ここに書いていることは、裏付けや証拠があるものばかりです。
「いじめによって登校できていない」ということを、学年合同保護者懇談会で説明を受け、後日学年通信で同様の内容を目にした保護者全員が証人です。
最後に
海南市重大事態いじめ隠ぺい事件と今後は呼ぶように致します。尚、本件については、すでに声が掛かっておりますので、霞が関・永田町で問題にしようと考えます。
この記事の著者・阿部泰尚さんのメルマガ
編集後記
大きくは、いじめとしての認定をしつつ、さらには和歌山県教育委員会が本件を重大事態いじめと判断し、その指導がなされた状態でも、海南市教育委員会独自の判断で、重大事態いじめを歪めていること。そして、その理由に当たるところが、詭弁であるということです。
また、PTSDを軽く見過ぎています。
他にも文書の書き換え問題など挙げればきりがないほどの不正がある事は確認しています。
今後もさらに突っ込んで証拠類の他、証言の補強などを進めて行きますし、本件に動きがあり次第、本紙にてご報告します。先般ニュースになっている泉南市で起きた中学1年生の指導死いじめ事件においてはご遺族から正式なオファーを頂き、支援にすでに入っております。海南市も泉南市も地理的には近い場所ですので、関西圏で同時に動くことができますので、今後は他の関西圏の事案と共に、出張することも多くなると思います。
それにしても、やはり「いじめ防止対策推進法に罰則がない」ことのみならず「強制力」がないこと、またこうした法律を簡単に歪めて守らない学校や教育委員会がある事に全くのペナルティがないことは問題であると強く思います。
一方、学校問題を家庭の問題にすり替えたり、被害家族へ公的組織が嫌がらせをすることなどは言語道断です。
この記事の著者・阿部泰尚さんのメルマガ
image by: 海南市役所 - Home | Facebook