人民の選択に口を出すな。中国が米国に発したイラ立ちメッセージ

tmsk20220928
 

人権問題や台湾の安全保障を巡り、過去例にないほど緊張が高まっている米中関係。しかしこれまで強気一辺倒だった中国サイドに若干の変化もあるようです。今回のメルマガ『富坂聰の「目からうろこの中国解説」』では、著者で多くの中国関連書籍を執筆している拓殖大学教授の富坂聰さんが、ニューヨークを訪問した王毅外相の発言を紹介するとともに内容を詳細に解説。その上で「米中関係を改善へと向かわせたいという意図が見える」との分析結果を記しています。

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それでも米中が首脳会談に向けて調整に入る理由

今週は久しぶりにコロナ関連のトピックにたくさん触れた。

まず出演したテレビ朝日の『ビートたけしのTVタックル』で、「2ch.sc」の開設者のひろゆき氏の疑問に答えて中国のワクチンについて話した。中国ワクチンが効き目がないという指摘に対して「中国はコバックス・ファシリティーに加盟して途上国を中心にたくさんワクチンを提供しているので、問題があれば……」と解説した。付け加えれば、世界で死亡率の高い国や地域のワクチンがまず問題にされるべきで、例えば、台湾だ。台湾はむしろ中国がワクチンを提供すると言っても拒んだ地域だ。これこそ回答だろう。

続いて9月25日にはロイター通信が、「ファイザーCEOがPCR検査で二度目の陽性になった」と報じたことだ。うかつなことに一度目の「陽性」のことを知らなかったために、心から驚かされた。

そして9月23日。やはりロイター通信が、WHO高級顧問の話として「もしいま世界の先進国が新型コロナウイロスへの対策を怠れば、両手は血にまみれるだろう」と発言したことを伝えた記事だ。

先進国を中心に、もはやコロナは終わったという雰囲気が広がり、ジョー・バイデン大統領もCBSの「60ミニッツ」に出演し「(コロナは)もう終わったようだ」と述べるなど先進国はすでに本格的な対策から離れつつある。そうした雰囲気にくぎを刺す目的だ。

冬にはインフルエンザの大流行も予告されていて、残念ながら世界が感染症に一息付けるのは、まだ先の話かもしれない。

前置きが長くなったが、今週のタイトルに掲げた米中首脳会談の話題を始めたい。

メインは何といってもアントニー・ブリンケン米国務長官と王毅国務委員兼外相の会談(9月23日)だ。これは、11月15日からインドネシアで行われるG20サミットにおいてバイデン大統領と習近平国家主席が初の対面の首脳会談を行うか否かを占う会談とされたからだ。

外相会談で王毅は、ブリンケンに対し「最近のアメリカの誤った台湾政策に対して中国側の厳正な立場を伝えた」という。台湾は中国の一部で内政問題であることや、アメリカが「3つのコミュニケの内容を厳守することを」求めたという。

中国側のいら立ちがより鮮明に表れていたのは、これより1日前の外交部報道官の定例会見である。

王毅に代わって解説した汪文斌報道官は、「われわれはアメリカ国民の選択した発展の道を尊重し、アメリカが自信を持ち、発展し進歩することを楽しみにしている。だからアメリカも中国人民の選択した発展の道を尊重してほしい。これこそ中国の特色ある社会主義なのだから。(中略)中米関係の最もベースとなるのは平和共存への期待である。(中略)アメリカの一部の人々の間には、かつてのソ連封じ込めと同じやり方で中国に圧力をかけるべき、とする声もある。(中略)だがそういう試みは徒労に終わるだろう。(中略)協力ウィンウィンは可能であるというだけでなく必須である」と語った。

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