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日本に迫る危機。中国共産党の新人事が示す習近平の“恫喝外交”回帰

あらゆる専門家や中国ウォッチャーの予想を覆した、まさに「大サプライズ」と言っても過言ではない中国共産党の新人事。かくも大胆な行動に出た習近平氏は、中国をどの方向に導く決断を下したのでしょうか。今回のメルマガ『黄文雄の「日本人に教えたい本当の歴史、中国・韓国の真実」』では台湾出身の評論家・黄文雄さんが、台湾の日刊紙に掲載された「新人事の4つのポイント」を紹介しつつ、習氏が選択した道を推測。その上で日本に対しては、これまで以上の強い警戒を呼びかけています。

※本記事は有料メルマガ『黄文雄の「日本人に教えたい本当の歴史、中国・韓国の真実」』2022年10月26日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会に初月無料のお試し購読をどうぞ。

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プロフィール:黄文雄こう・ぶんゆう
1938年、台湾生まれ。1964年来日。早稲田大学商学部卒業、明治大学大学院修士課程修了。『中国の没落』(台湾・前衛出版社)が大反響を呼び、評論家活動へ。著書に17万部のベストセラーとなった『日本人はなぜ中国人、韓国人とこれほどまで違うのか』(徳間書店)など多数。 

【中国】共産党大会の人事が示す「自力更生」路線へ逆戻りした中国の悲惨な未来

10月22日、中国共産党大会第20回大会が閉会し、習近平政権の3期目続投が確定しました。新華社通信は、1万8,000字を費やして、習近平がいかに3期目のトップとしてふさわしいかを恥ずかしげもなく紹介したそうです。

新華社萬字長文介紹習近平 打造連任合法性

閉会を前にして、胡錦濤前国家主席が、会場から係員に脇を抱えられて無理やり退場させられるというショッキングな光景が、全世界に配信されました。

この胡錦濤退場について、中国メディアは健康上の理由としていますが、その動画を見てもふらついている様子もなく、自分の足で歩いて退出しているところを見ると、健康面によるものでないことは明らかでしょう。胡錦濤自身のコメントも出ておらず、しかも、この場面の動画は中国国内では見られないようになっています。一部では、机にあったファイルを見た胡錦濤は、党人事への不満を募らせ、そのために習近平によって退場させられたとも言われています。

胡錦濤氏退席前の新動画が拡散 ファイルに不満?

その噂を裏付けるように、翌日明らかになった党内人事は、あからさまに習近平の側近によって固められたものでした。胡錦濤が率いた共産主義青年団(団派)である李克強や汪洋は中央政治局常務委員から外されて引退に追い込まれ、さらには将来のホープとされた胡春華副首相も中央政治局から外され降格されました。

胡春華・副首相が降格 政治局員から外れる

そして政治局も常務委員も「習家軍」といわれる習近平一派に牛耳られることになったのです。

党中央常務委員会の7人、いわゆるチャイナ・セブンは、習近平、李強、趙楽際、王滬寧、蔡奇、丁薛祥、李希。習近平、趙樂際、王滬寧の3人は留任で、残り4人が新人です。

李克強の後任として李強が国務院総理、趙楽際が全国人民代表大会主席、王滬寧が中国人民政治協商会議全国委員会主席、蔡奇が中央書記局第一書記、丁薛祥が国務院常務副総理、李希が中央紀律検査委員会書記に就任が確定しています。

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台湾の聯合報にはドイツ国際放送「ドイツの声」(Deutsche Welle)の分析として、この人事に込められた4つのポイントを紹介しています。

1.なによりも忠誠心

中国共産党では「七上八下」といわれるように、67歳以下は留任、68歳以上は退任というのが長年のルールでしたが、今回の党大会では、前述したように67歳の李克強と汪洋が中央政治局常務委員会のみならず、中央委員会のメンバーにも残れず、引退に追い込まれました。習近平に忠誠心を誓うイエスマンばかりが集められたといえます。

2.権力の頂点に立ち続ける危険性

かつて独裁権力を手にした毛沢東がそうだったように、誰も習近平に対して逆らえず、またさまざまな情報を上げない、チェックやバランスを保つような政治を行わないことで、独善的な政策が行われる可能性があるとしています。

また、習近平が権力の座から降りたときに生じる権力の空白は、ナショナリズムの高まりの下で激烈な権力闘争となり、それが他国との関係やアジア地域の安定に非常に悪い結果をもたらす可能性があるとしています。

3.安全保障と外交が経済より優先される

上海市党委員会書紀の李強が序列2位になり、来年3月の全人代において国務院総理に選出されることがほぼ確定しました。国務院総理といえば、経済政策を担うポストでもあります。李克強や温家宝、朱鎔基など、歴代の総理が経済政策を指揮してきました。

しかし李強は、汪洋や胡春華のように、経済・社会統治でこれといった実績がありません。むしろ新型コロナで上海をロックダウンした当局者として、非常に評判が悪い人物です。

一方、69歳の王毅と72歳の張又侠が政治局員に残りました。王毅は「戦狼外交」の代表的人物で、非常に好戦的な外交を行ってきました。その彼が、楊潔篪から外交部長を引き継いだわけです。

また、張又侠は軍事委員会副主席に留まりました。これは、経済面よりも安全保障や外交に重きを置いており、しかもかなり好戦的に他国と渡り合うつもりであることが読み取れます。

4.台湾に対してより強硬姿勢となる

軍事委員会副主席に、中越戦争を戦った経験のある張又侠将軍を残留させたことに加えて、前東部戦区司令官で台湾に精通する何衛東を新たに軍事委員会副主席に任命したことで、台湾に対する軍事的な圧力が高まると見られています。

また、国務院台湾事務弁公室の劉継儀主任(64歳)が任期満了を迎えていないにもかかわらず、新しい中央委員会の名簿に載っていませんでした。国務院の比較的穏健な台湾政策について習近平は「失敗した」と明言したとも言われています。

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この4つのポイントのうち、習近平政権がもはや中国経済をあまり重要視していないということは、非常に大きなことだといえるでしょう。

在中国欧州連合商工会議所のウッドコック会頭は、李克強の後継者は全国政協主席の汪洋か副総理の胡春華のいずれかだと考えており、「私のリストに李強は入っていない」と述べています。

また、ワシントンのシンクタンク、ジェームズタウン財団の上級研究員・林和立氏は、上海で市場重視の改革を導入していない平凡な業績の李強が選ばれたことは、これまでの共産党の常套手段から外れていると指摘しています。

跟對主子 「搞封城」李強可望接總理

しかも李克強や汪洋のみならず、経済ブレーンとして通商問題でアメリカとわたりあった劉鶴も「習家軍」の何立峰と交代し、さらには中国の中央銀行総裁である易綱も定年で退職するといわれており、これまで経済政策を担ってきた高官がこぞっていなくなることになっているのです。

その一方で、経済の素人を重要ポストに就かせているわけで、これはつまり、習近平政権は中国経済をもはや成長させるつもりがなく、西側の市場経済ともコミットすることを断念したということの現れなのだと思います。

毛沢東時代の中国は「自力更生」の掛け声の下、イギリスやアメリカに追いつけ追い越せとハッパをかけ、その結果、毛沢東が大躍進政策を提唱したことで無理な生産体制を組まれると同時に、政府高官は成果をでっち上げたため、中国全土が飢饉に陥り、大量の餓死者を生むことになりました。

その反省から、鄧小平は西欧諸国の資金を招き入れるという改革開放路線に舵を切りました。このような「他力本願」によって、中国経済は大きく飛躍したのです。それを習近平政権は再び「自力更生」の時代へと逆戻りさせようとしているのです。

したがって、習近平時代に中国経済がボロボロになることはもはや確実だと言っていいでしょう。たとえ経済がどうなっても、国内の統制を強め、台湾統一を実行し、対外的には強硬姿勢を崩さないという意志が見て取れます。

これからの中国が毛沢東時代同様、大きな動乱と恫喝外交へと戻っていくことは必至です。日本はこれがどれだけ危険な状況か理解しているのでしょうか。

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