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訪れぬ平和。ミャンマー社会に食い込む統一教会と関係の深い団体

全世界が大きな衝撃を受けた、昨年2月1日にミャンマーで発生した軍事クーデター。弾圧により命を落とした市民の数はクーデター勃発からこれまでに2,500人を超えるとも言われますが、ミャンマーの人々が平和な生活を取り戻す日はやってくるのでしょうか。今回のメルマガ『モリの新しい社会をデザインする ニュースレター(有料版)』ではジャーナリストの伊東森さんが、軍部がクーデターという蛮行に出た理由を改めて確認。さらにミャンマーにいつまでたっても平和が訪れない裏事情を推測しています。

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混とんとするミャンマー情勢 なぜクーデターは起きたのか 食い込む日本財団 蠢く「親日」利権

昨年2月のクーデター以降、混とんとするミャンマー情勢。

ASEAN(東南アジア諸国連合)もクーデター以降、混乱が続くミャンマー情勢に関し、「懸念」を表明する議長声明を発表した。カンボジアで開かれていたASEANの首脳会議の議長声明が18日に発表。

その中で、ミャンマー情勢について、

「暴力の激化を含む長引く政治危機に対する懸念」(*1)

とした。

またASEANが昨年4月に合意した「暴力の即時停止」など5つの項目について、

「ほとんど進展がなく、取り組む意志もない」(*2)

とし、ミャンマー国軍に対して「深い失望」を示した。

ASEANは今回の会議において、この合意項目の早期実施に向けて具体的な期限を設けた実施計画を策定しているものの、ミャンマー側は会議に欠席、強く反発する。

一方、ミャンマー最大の都市ヤンゴンで拘束後、解放されたドキュメンタリー制作者の久保田徹さんは、18日朝、羽田空港に飛行機で帰国。

久保田さんは今年7月、国軍によるクーデターへの抗議デモを撮影中に拘束、電子通信関連法や入国管理法違反などの罪で計10年の禁錮刑を言い渡されていた(*3)。

目次

なぜクーデターは起きた

軍によるクーデターは昨年2月1日に発生。軍は、一昨年11月に行われた総選挙で大規模な不正があり、その結果をもとにした政権が発足することを阻止するための行動であるとする(*4)。

総選挙では、スー・チー氏が率いる政党NLD(国民民主連盟)が圧勝し、2月1日は選挙後、初めて議会が招集されるであった。軍は、スー・チー氏に対しても、無線機などを違法に輸入し、許可なく使った疑いで、拘束。

ただ、選挙については、選挙監視団を派遣した日本を含め、国際社会は、選挙は公正に行われたと評価した(*5)。

軍がクーデターを行った背景としては、“焦り”がある。

ミャンマーでは、以前にも軍がクーデターで実権を握り、そのときに制定された現在の憲法では、議会の4分の1の議席を軍人に割り当て、いくつかの閣僚ポストを軍が指名できるように規定。

しかし、スー・チー氏率いる政党は、民主化を進めようと憲法改正を試みるなど、軍の権限を縮小しようとした。軍は、そのような政権が2期目に入ろうとしたことに危機感を募らせたとみられる。

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安倍元首相“国葬”出席 ミャンマー軍事政権に「お墨付き与えた」エリザベス女王の国葬、イギリス「招待せず」

一方、安倍晋三元首相の国葬にミャンマー駐日大使が参列する様子をミャンマーの外務省が9月27日に写真付きでSNS上にアップ。しかし、人権団体などは、

「国軍が実権を握る国の参列は、軍事政権にお墨付きを与える行為だ」(*6)

とした。

ただ、そもそも日本は政府として、ミャンマーの軍事政権を「政府承認」していない。外務省の見解は、

「外交関係を有する国に対してはすべて国葬の通知を出しており、ミャンマーにも出しました。だからと言って、政府承認をしたわけではなく、ミャンマーに対する姿勢が変わることもありません」(南東アジア第1課)(*7)

実際、安倍氏の国葬について日本政府は、外交関係を結ぶすべての国に開催を通知。ミャンマーなど特定の国が除外しなかったという。ウクライナへの侵攻を続けるロシアにも通知している。

一方、英メディアによると、9月に開かれたエリザベス女王の国葬には、原則としてイギリスと外交関係を結ぶ国を招待しているものの、しかしロシア、ミャンマー、シリアなどは招かれなかった(*8)。

蠢く“親日利権” 「親日」のためにミャンマー市民を犠牲に

日本政府も、先進国の一員として、“一応は”クーデターを批判している。しかし、ミャンマーに対する最大の援助国は日本。

そもそも、日本はミャンマーが民政に移行して以来、経済開発に深く関与してきた。

ODAの供与国として世界で最大であるとともに、日本はミャンマーの民主化の進捗を監視することを条件に、2,000億円もの債務を帳消しした(*9)。日本政府は、その義務を怠った。

ミャンマー社会に“食い込んでいる”組織として日本財団がある。ハンセン病の制圧から小学校の建設にいたるまで、ミャンマーにおいて保健・教育に力点を置いた活動を、多数派のビルマ人のみならず、山岳部の少数民族地域においても実施。

ところが、いつまでたってもミャンマーに平和は訪れない。

そもそも日本財団と統一教会には、少なからず因縁がある。1958年に統一教会の宣教師がはじめて日本に上陸した時に、密入国で逮捕されている。

これを庇護したのが日本船舶振興会(現在の日本財団)の笹川良一氏であった。

筆者は“親日利権”があると推察する。“親日国”とされるミャンマーとトルコ政府に反発するクルド人が多数を占める難民をなかなか受け入れたがらないには、その代表例だ。

引用・参考文献

(*1)テレ朝news「ミャンマー情勢「危機長期化に懸念」 ASEAN議長声明」

(*2)テレ朝news

(*3)「解放の久保田徹さん帰国 『言い表せないほど感謝』」時事ドットコムニュース 2022年11月18日

(*4)飯沼智、松尾恵輔、北井元気「【詳しく】クーデター後のミャンマーはいま スー・チー氏は?」NHK NEWS WEB 2022年2月1日

(*5)飯沼智、松尾恵輔、北井元気 2022年2月1日

(*6)野平悠一「ミャンマー軍事政権に『お墨付き与えた』 国葬招待の日本政府へ批判」朝日新聞デジタル 2022年9月28日

(*7)「ミャンマー軍事政権を安倍氏国葬に“招待”…『民主主義を守り抜く』どころか暴力にお墨付き」日刊ゲンダイDIOGITAL 2022年9月22日

(*8)野平悠一 2022年9月28日

(*9)「ミャンマー危機における日本の責任を考える」ビデオニュース・ドットコム 2021年4月10日

(『モリの新しい社会をデザインする ニュースレター(有料版)』2022年11月26日号より一部抜粋・文中一部敬称略)

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image by: Maung Nyan / Shutterstock.com

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伊東 森(いとう・しん): ジャーナリスト。物書き歴11年。精神疾患歴23年。「新しい社会をデザインする」をテーマに情報発信。 1984年1月28日生まれ。幼少期を福岡県三潴郡大木町で過ごす。小学校時代から、福岡県大川市に居住。高校時代から、福岡市へ転居。 高校時代から、うつ病を発症。うつ病のなか、高校、予備校を経て東洋大学社会学部社会学科へ2006年に入学。2010年卒業。その後、病気療養をしつつ、様々なWEB記事を執筆。大学時代の専攻は、メディア学、スポーツ社会学。2021年より、ジャーナリストとして本格的に活動。

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