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少子化の原因にも。日本にしかない時代遅れの戸籍制度を廃止すべき訳

未ださまざまなシーンで求められる戸籍の提出。しかしこの戸籍制度、採用しているのは日本のみという事実をご存知でしょうか。そんな制度の廃止を求め続けているのは、ジャーナリストの上杉隆さん。上杉さんは自身のメルマガ『上杉隆の「ニッポンの問題点」』で今回、そのきっかけとなったフランス政府による少子化対策を紹介しています。

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前編【戸籍制度の限界~差別の温床。ジダンも、アンリも、ロナウドも…。時代は「戸」から「個」へ】

戸籍制度の廃止を訴えてから約20年が経過する。

1868年の明治維新によって現在の戸籍制度は誕生した。比較的に新しいシステムなのだ。仮に、日本古来の伝統的システムを守ると言っている人がいたら勘違いだろうし、国民と家族を守るための制度だと語っていたら、それも違うと教えてあげてほしい。

現在の戸籍制度は、明治新政府が長州藩の行政管理システムを真似たもので、国民側の利益ではなく、あくまで行政側の利便性から導入されたものにすぎない。

東アジアに固有の制度だったが、台湾、朝鮮半島は戦後に廃止され、中国は2014年の改正で事実上、消滅した。ゆえに現在では、日本に固有の制度となっている。

筆者が、戸籍制度の廃止を求めるようになったのは2004年のこと。きっかけはパリでの入院だった。

当時のフランス政府は、移民問題と少子化問題の狭間で頭を悩ませていた。

少子化対策としてマグレブ(北アフリカ系)などから外国人を受け入れるのはよいが、国内での治安悪化で保守派の支持を失いかけていた。一方で、同地区から流入する移民がフランスの社会構造をよりよく変化させ始めていたのも事実だった。サッカーフランス代表のジダンやアンリなどその顔ぶれをみれば、移民は国力増強にも効果的だと確認できたし、税収増にもつながっていたからだ。

政策上、人口減を食い止めるのは「移民」か「出生率増加」のどちらか、またその双方を活用するしかない。

1990年代には、1.66点まで落ち込んでいた合計特殊出生率の低下は、フランス経済を痛めつけ、社会に暗い影を落としていた。移民政策によってかろうじて保たれている少子化対策の抜本的な転換が必要だった。人口増は、出生地主義をとるフランスにとっては、納税者を増やすチャンスであり、国の財政を潤す急務の政策なのであった。

そんな時に登場したのが、選択的移民政策を推進するサルコジ内務大臣だった。2003年11月26日、第二次大戦以来の伝統的な移民法を改正し(03年法)、返す刀で、女性に向けた、手厚い出産育児支援制度(少子化対策というとネガティブな印象があるので何か別のネーミングはないだろうかと当時より考えている)の推進を加速させた。

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私がパリにいたのはまさにこの時期だった。これまでと同様の移民政策を推進する左派と、女性を優遇し少子化対策を推進する右派の間で大きな国民的議論が巻き起こっていた。私の入院しているパリの病院には、ちょうど女優の中山美穂さんや元アナウンサーの中村江里子さんが出産のために訪れていたこともあり、入院の退屈しのぎもあり、病院スタッフらと日仏少子化対策の違いについて議論もしていた。

妊娠すると、仕事の給与保障に上乗せした妊婦手当が発生する。出産時には、例外なく全額無料の無痛分娩が行われ、しかも出産時一時金が出て、子供の人数が増えれば増えるほど、支給額も増すという仕組みであることを知った。

当時、フランスでの育児手当は日本円で毎月10万円程度で、仮に3人のこどもを育てる場合は月額25万円程度16歳まで受給されると聞いた。重要なのは、その給付がすべて女性になされることだ。日本のように「戸」ではない。よって、婚外やDVなどの問題に苦しむ「母」は、育児に専念することができる。なにより、こどもの父親が誰であるかと問われることもない。

実際に後にサルコジと大統領選を戦うロワイヤル女史は、任期中に出産したが、メディアも含めて、その父親が誰であるかを問う声はなかった。日本との違いに驚いたものだ。こどもは社会共通の宝という理念がいきわたっているのだろう。直接的な書き方を許してもらえれば、女性はこどもを産んで育てれば育てるほど、働かずに済み、育児中心の人生を送れるのであった(LGBTの観念はこのころのサルコジには薄かったと思われる)。

この政策によって、出生率は上昇をはじめ、サルコジ大統領の一期目の任期中には合計特殊出生率が2.03(2010年)まで回復した。(後編につづく)

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image by: Shutterstock.com

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