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プーチン、習近平、金正恩。2023年に世界が“制止”すべき暴挙は?

収束が見えぬウクライナ戦争にこじれる一方の台湾問題、昨年だけで37回を数えた北朝鮮のミサイル発射。世界がこれまでにない緊張感に包まれたと言っても過言ではない2022年でしたが、先の大戦の終戦から78年目となる今年、人類にはどのような危機が待ち受けているのでしょうか。今回の無料メルマガ『ロシア政治経済ジャーナル』では国際関係ジャーナリストの北野幸伯さんが、「国際社会が制止すべき3つの暴挙」を挙げるとともに、各々が「発生してしまう可能性」について考察。その上で、2023年は「歴史的な1年」になると断言しています。

2023年世界の3大テーマは?

今日は、「2023年世界の3大テーマ」についてです。

プーチンの戦術核使用を止められるか?

一つ目のテーマは、「プーチンの戦術核使用を止められるか?」です。

プーチンは、ウクライナ侵攻で、敗北を重ねてきました。1回目は、首都キーウ攻略に失敗したこと。プーチンは当初、「ウクライナ侵攻は、2~3日で終わる」と見ていた。だから「戦争」ではなく、「特別軍事作戦」という用語を使ったのです。「戦争とか大げさなものじゃない。すぐ終わるんだよ」と。「ゼレンスキーは逃亡し、キーウは速やかに陥落するだろう」と。しかし、ロシア軍はキーウを落とすことができませんでした。

2回目は9月11日、ハルキウ州での戦いに大敗したこと。プーチンは、この敗北に衝撃を受け、二つの重要な決断を下しています。9月21日に「動員令」を出したこと、そして9月30日にルガンスク州、ドネツク州、ザポリージャ州、ヘルソン州をロシアに併合したことです。プーチンは、「ルガンスク、ドネツクで迫害されているロシア系住民を救う」と主張していました。ところが、ちゃっかりザポリージャ州、ヘルソン州も併合した。

3回目の敗北は、11月11日にヘルソン州の首都ヘルソン市を失ったこと。ロシアは、9月末に「併合した」州の州都を、40日後に奪われてしまったのです。この事実は、これまでプーチンを支持してきたロシア国内の極右勢力をも激怒させています。

というわけで、ロシア軍は戦場で勝てなくなっている。そこで、プーチンはどうしたかというと、「ウクライナの電力インフラを集中的に攻撃せよ!」と命じた。それで、ウクライナでは今、電気がなく生活している人が数百万人いる。プーチンの目的は、何でしょうか?

こういう目論見です。ですが、そうはなっていません。怒りは、民間人を凍えさせる残虐な作戦を指揮しているプーチンに向かいます。

いずれにしてもプーチンは、追い詰められています。それで、彼が戦術核を使う可能性がある。彼自身が、核使用に何度も言及しているのです。たとえば2022年9月30日ロイター。

ロシアのプーチン大統領は30日、ウクライナ東・南部4州の併合を宣言する演説で、米国が第二次世界大戦末期に広島と長崎に原爆を落とし、核兵器使用の「前例」を作ったと指摘した。プーチン大統領は最近、自国の領土を守るために核兵器を使用する用意があると述べ、核兵器使用が懸念されている。プーチン氏は演説で「米国は日本に対し核兵器を2回使用した」とし「米国が核兵器使用の前例を作った」と述べた。

つまりプーチンは、「アメリカが最初に核兵器を使ったのだから、ロシアが使ってもOKだろう!」と主張している。アメリカが77年前に核兵器を使ったから、ロシアが今使ってもいい????????????この主張を聞いて、「そうだよね~~~」と納得できる人はいないでしょう。

何はともあれ、2023年最大のテーマは、「プーチンの戦術核使用を止めることができるか?」です。

この件で、アメリカのサリバン大統領補佐官は、ロシアのパトルシェフ安全保障会議書記と何度も話し、「戦術核を使えば、ロシアもプーチンも終わりだ」と脅しているそうです。脅しがうまく機能し、プーチンが戦術核を使わないことを願いましょう。もし使えば、NATOがロシア軍に反撃し、第3次世界大戦がはじまります。残念ながら、「そういう可能性がある」という認識をもっておいた方がいいでしょう。

習近平の「台湾侵攻」を止められるか?

2023年、2番目のテーマは、「台湾侵攻を止められるか?」です。

この件で、「アメリカは、中国が台湾に侵攻するように煽っている」という人たちがいます。つまり、「アメリカが台湾有事を望んでいる」と。実際は、全然違います。習近平が台湾侵攻に踏み切る条件は何でしょうか?

ですが、台湾侵攻時の欧米日の反応を、どうすれば知ることができるでしょうか?「モデルケース」がありますね。ロシアによるウクライナ侵攻です。

結果、ロシアが勝利してプーチン政権が安泰であれば?習近平は、「ウクライナに侵攻したプーチンはサバイバルできた。俺が台湾に侵攻しても、サバイバルできるだろう」と考え侵攻するリスクが高まります。だから、プーチンを敗北させることは、習近平に台湾侵攻を思いとどまらせる効果があるのです。

習近平が台湾侵攻に踏み切る二つ目の条件は、「引っ込みがつかなくなった時」です。たとえば蔡英文さんが、台湾独立を宣言すれば?習近平は、日本や欧米の反応はどうあれ、独立を止めるために台湾に侵攻せざるを得なくなるでしょう。

だから、もしバイデン政権が「台湾有事」を望んでいるのなら、それを起こす簡単な方法がある。蔡英文さんに台湾独立を宣言させ、欧米と日本が台湾を国家承認すればいい。これをやれば、確実に台湾有事がはじまります。しかしバイデンは、やりません。

アメリカの基本的対中政策は二つです。

つまり、アメリカは、1970年代に米中で合意したように、台湾を独立国家として認めていないのです。もしアメリカが台湾を独立国家として認めれば、習近平が台湾に侵攻する可能性が高まるからです。

バイデン政権は、何を考えているのか?

これは、「中国が台湾に侵攻したら、習近平も中国も大変なことになるぞ!」という脅しです。侵攻を思いとどまらせる効果。そのために、クワッド、AUKUS、IPEF、民主主義サミットなどによって着々と「反中包囲網」を築いています。

それでも確信がもてないので、バイデンは、「中国が台湾に侵攻すれば、アメリカが台湾を守る!」これまで3回明言しています。習近平は、「台湾に侵攻すれば、アメリカと戦うことになるな」と考えざるを得ません。

その一方で、バイデン政権は、習近平が侵攻を決断せざるを得ない状況に追い込まないよう、注意しています。具体的には、「一つの中国の原則を支持する」という。

バイデン政権の戦略は、基本的な「バランス・オブ・パワー戦略」であることがわかるでしょう。アジアは、中国が強くなりすぎてバランス・オブ・パワーが崩れている。だから、アメリカは、クアッド、AUKUS、IPEF、民主主義サミットなどで反中包囲網を築き、バランス・オブ・パワーを回復させていきます。その一方で、中国がバランス・オブ・パワー破壊に動かないよう、「一つの中国の原則を支持」というのです。バイデン政権の動きはすべて、「アメリカが中国の台湾侵攻を望んでいない」ことを示しています。

しかし、問題は中国国内です。中国は2021年10月に起こった「恒大ショック」から不動産バブル崩壊の過程にあります。さらに、「ゼロコロナ政策」をやめたことで、感染爆発が起きている。

中国経済は、江沢民、胡錦涛の時代と比べれば、ほとんど成長しない。自慢の「ゼロコロナ政策」は破綻した。なすすべなしになった独裁者が、侵略によって支持率を高めようとすることは、よくあることです。

※ 例:クリミア併合とウクライナ侵攻で支持率を爆騰させたプーチン

今年は、「習近平に台湾侵攻を決断させない戦い」がつづきます。

金正恩の暴走を止められるか?

北朝鮮は2022年、70発の弾道ミサイルを発射したそうです。なぜ金正恩はアクティブになっているのでしょうか?これは、ウクライナ侵攻と関係があります。

ウクライナ侵攻で、ロシアと日欧米の関係が決定的に崩れた。そのロシアは、国連安保理で拒否権を持つ常任理事国。北朝鮮がいくらミサイルをぶっ放しても、国連は制裁を強化することができません。ロシア、そして中国が拒否権を使って制裁強化を阻止してくれるからです。

金の願いは、アメリカとの交渉でしょう。しかし、ロシア、中国と戦っているアメリカは、北朝鮮をかまっている余裕がありません。それで、金はますます頻繁に挑発を繰り返すようになっていく。

というわけで今年は、

  1. プーチンの戦術核使用を止められるか?
  2. 習近平の台湾侵攻を止められるか?
  3. 金正恩の暴走を止められるか?

大きく三つのテーマがあります。2023年が終わった時、

  1. プーチンは、戦術核を使いませんでした
  2. 習近平は、台湾侵攻を決断しませんでした
  3. 金は暴走しませんでした。

ということになれば、「よかった」といえるでしょう。どっちに転んでも、2023年は「歴史的な1年」になります。

(無料メルマガ『ロシア政治経済ジャーナル』2022年1月3日号より一部抜粋)

image by: Shutterstock.com

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【著者】 北野幸伯 【発行周期】 不定期

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