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Rice cooked in Japanese hot pot

なぜ、このステーキ店に来る客は肉よりも「ご飯」を褒めるのか?

父親から受け継いだ米屋を守り切ることができなかった息子が、ある日突然開店させた「とあるお店」が大人気となっています。今回のメルマガ『繁盛戦略企画塾・『心のマーケティング』講座』では、「ごはんの付け合せ」としてステーキを添えたメニューだけで戦う飲食店を分析しています。

米屋がご飯屋で復活!メインは「ご飯」、つけ合わせは「1ポンドステーキ」

厳しい社会情勢の中、あるお米屋さんが閉店しました。

父親から受け継いだお店でしたが、守り切ることができませんでした。

そんな時、悩んでいた店主に、知人からのアドバイスが……。

美味しいご飯を食べさせ、お米の魅力を伝えるお店を開店することになりました。

東京都江戸川区。「コメトステーキ」。

住宅街にあって、黄色いテントシートが少し目立っているものの、名前も書かれておらず、何のお店かもわかりません。

入口近くに黒板が立っており、店名とメニューが書かれているだけです。

この地味とも言えるお店が、連日大盛況となっているのです。

メニューは、「米とステーキ」「米とステーキ(よく焼き)」のみ。

つまり、1種類だけの専門店。

しかし、ステーキ屋さんではなく、ご飯屋さんなのです。あくまで、メインディッシュは「ご飯」なのです。

ご飯を美味しく食べてもらうためのつけ合わせが、「1ポンドステーキ」です。約450グラムの牛肉です。

元お米屋さんなので、米に対するこだわりが強く、どうすればご飯が美味しく炊けるか、どうすれば美味しく食べられるかを考え抜いた結果、ステーキと一緒に食べてもらうことにしました。

お米は時季によって産地・銘柄を代え、研ぐのではなく、優しく洗い、浸す水の量も独自に研究。

一晩冷蔵庫で寝かせた後、お客さまの入り具合を見ながら、一升ずつ炊いています。

ステーキに使う牛肉は、アンガスビーフの肩ロースを約450グラム。

フライパンで焼いて、ニンニクの入った醤油ベースのタレをかけて仕上げます。

肉を取り出したところにもやしを入れ、火が通ったら、それをステーキの上にトッピング。ステーキの横に刻みニンニクを添えて、完成です。

「つけ合わせのお肉でございます」と言われ、まずステーキが出てきます。

その大きさに唖然としていると、「メインディッシュのご飯でございます」
という声とともに、お皿に盛られたツヤツヤのご飯が登場します。

かなりボリュームのあるセットですが、ステーキの濃いめの味つけが白いご飯に合い、誰もがガツガツ食べてしまいます。

お客さまの感想は、「ご飯が抜群に旨い」「ご飯から手が離せない」。

ステーキではなく、ご飯の美味しさを絶賛します。

やはり、元お米屋さんなので、ご飯には自信があります。

ご飯を美味しく食べてもらうために作ったお店なので、店主にとって、つけ合わせは二の次なのです。

この考え方をお客さまにも理解してもらうために、券売機に張り紙があります。

「当店はステーキ屋ではなく、メインがご飯のご飯屋です。肉に期待しても、硬い肩ロースしかでてこないので、くれぐれもご注意下さい。硬い肉ですが、味は濃いので、よく噛むことはしないで、ホルモンを食べるイメージで、飲み込めるサイズに小さく切って、肉汁を楽しんだら、飲み込んでしまうのが、最後まで食べきるコツです。噛んだら負けだと思って、食べて下さい」

堂々と「肉は硬い」「噛まずに飲み込んで」と言ってしまうあたりが、潔く、面白いと思います。

実際は、多少の噛みごたえはあるものの、そこまで硬くはありません。店主のユーモアなのでしょう。

「ステーキも美味しい」とお客さまは言います。

ニンニク醤油のガッツリステーキと白いご飯のセットは、最強の組み合わせなのかも。

美味しいご飯を求めて、最高のつけ合わせを求めて、今日もたくさんのお客さまがやって来ます。

image by: Shutterstock.com

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【著者】 佐藤きよあき(繁盛戦略コンサルタント) 【発行周期】 週刊

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