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News heading that says "declining birthrate" in Japanese

「異次元」と言い切るほどの少子化対策をする前に岸田総理がすべきこと

岸田首相が語った「異次元の少子化対策」という言葉。異次元になるほどの少子化対策を講じる前にやるべきことがあるのではないか、とするのはメルマガ『j-fashion journal』の著者でファッションビジネスコンサルタントの坂口昌章さん。この日本を揺るがす大問題について、ある対策を提案しています。

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人口減少とAI進化と持続可能性

1.少子化は深刻な問題なのか?

岸田総理が「異次元の少子化対策」と言い出しました。異次元の政策を必要とするほど、少子化は深刻な問題なのでしょうか。

確かに、少子化の問題は、需要と供給の両面で問題ではあります。少子化は市場が拡大しません。しかし、可処分所得が伸びれば市場は拡大します。人口が減っても、金持ちが増えれば市場という点では問題がありません。むしろ、国民生活のレベルが上がることは良いことになります。

供給の面では労働力不足と言われています。その一方で、AIが進化すると仕事がなくなるという話もあります。AIが進化して仕事がなくなるのなら、人口が減少しても大丈夫ではないでしょうか。

労働力不足と言われますが、なぜ賃金は上昇しないのでしょうか。

米国は物価が上がると、すぐに賃金も上がります。そうしないと労働者は生活できないからです。つまり、需給バランスで賃金が決まっています。

日本は物価が上がってもすぐに小売価格を上げません。むしろ、経費を削減しようとします。したがって給料は上がりません。

人件費を下げると、日本人は働けなくなり、外国人労働者に依存するようになります。

給料を上げられないので、ブラック企業と言われるような劣悪な労働条件も放置されることになります。

そういう経営を支持するのが株主です。特に外国人投資家、投資ファンドは社員の待遇など気にしません。株主の配当さえ上がればいいのです。

なぜ、米国は社員の給料をあげることが可能で、日本では経費削減に動くのでしょうか。米国企業において、労働組合と株主支配がどのようなパワーバランスを持っているのでしょうか。

異次元の少子化対策の前に、異次元の所得増加対策が必要だと思います。

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2.物価高でも給料が上がらない理由

株主利益と労働組合について考えていたら、次のような報告書が公開されていました。

「アメリカにおける労使関係法上の『使用者』概念と投資ファンドでの実態」で労働政策研究・研修機構によるものです。
これによると、

(1)投資ファンドはあくまで投資家であって、労働組合が交渉する相手は経営者であること。

(2)労働組合は労働者のレイオフや待遇に関しては団体交渉権を持っていること。

(3)投資ファンドは良好な労使関係を投資の条件として重視しており、労働争議が激しい企業には投資しないことが多いこと。

(4)労働組合の全国組織であるAFL-CIOは「親労働者性向上キャンペーン」を展開しているという事例紹介。これは労働者としてのストライキと共に、株主の立場として他の株主に対して賃金カット等は会社に大きな打撃を与えることを訴求して、CEOを罷免するキャンペーンを展開したというものです。しかし、この種のキャンペーンの効果については、確定していません。

この報告書を読んで感じたことは、まず日本企業には有効に機能する労働組合が存在せず、労働者保護の法的整備も遅れているのではないかということです。

つまり、投資ファンド云々以前に、そもそも非正規社員は組合にも所属できず、もちろんストライキを行うこともできない。つまり、団体交渉の手段を持たないということが大きな問題だと思います。

物価の上昇をすぐに賃金に反映できない要因は、正社員と派遣社員という階層構造にもあるでしょう。比較的恵まれている正社員は、非正規社員のために行動を起こすことはありません。そもそも正社員も労働者の権利に対する意識が低いと思われます。

経営者は、「本人たちが文句を言わないのだから、それほど急いで給料を上げる必要はない」と考えるでしょうし、多くの場合は、「会社も大変なんだから、一緒に頑張ろう」ということで乗り切ろうとするわけです。

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3.AIと中間管理職

一時期、「AIの進化によって、人の仕事が奪われるのではないか」という話題が盛り上がりました。

産業革命は、人間の筋肉と骨を強化した技術だったと思います。人の何倍もの力もスピードでシャフトを回転させたり、荷物を持ち上げたり、移動したりします。その筋肉と骨の運動を制御するのは人間でした。

コンピュータ革命は、脳や脊髄の機能を代替えするものでした。機械とつながれば、反射的な反応をしたり、機械をプログラム通りに制御することができます。

インターネットは神経です。世界中に神経が張り巡らされ、情報が一瞬で届くようになりました。感覚器となるカメラ、センサーと脳がつながることで、世界を観察し、分析できるようになりました。

AIの進化によって、大量の情報を処理することが可能になり、自ら学習し、プログラムを作れるようになりました。AIによって、機械は魂、命を得たのかもしれません。

AIで奪われる仕事はカフェの店員のような簡単なサービス作業だと言われましたが、私はカフェの店員は生き残ると思っています。単純に飲み物を運ぶだけなら機械でもできますが、アイコンタクトやちょっとした会話、仕種などが実は重要な役割を果たしているからです。それを見て、顧客は癒されたり、リラックスできたりするのです。

むしろ、なくなるのは店長の仕事ではないでしょうか。アルバイト店員のローテーションを決めたり、天候やイベントの有無で売上を予想したり、仕入れを決定する仕事はAIが代替えできます。

経営者と現場のスタッフは人間でなければできませんが、中間管理職、マジメントの仕事はAIが担当できます。現場の人間が判断に迷ったら、AIに報告、相談して意思決定してもらえばいいのです。重要な案件は、経営者につなぎます。そうなると、都心のオフィスビルで働く社員の大部分が必要なくなります。

この合理化により、現場スタッフの給料を思い切って上げることができるでしょう。そして、現場の仕事こそ価値があり、人間が担うべき誇りある仕事になると思います。

そうなれば、労働力不足は起きないのではないでしょうか。

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4.日本の最適人口は?

人口が増えると、環境が汚染されます。生態系の能力以上に食糧を調達したり、大量のエネルギーを使ったり、大量の排泄物やゴミをまき散らすことは、人間以外の生物の生育を困難にします。また、二酸化炭素の排出を増やし、気候変動を招くかもしれません。

環境問題の多くは人口を減少し、経済活動を抑制することで解決するでしょう。

環境問題に関する限り、人口減少はプラスに働きます。

そもそも日本の最適人口とはどれほどなのでしょうか。

江戸時代から明治まで、日本の人口は3,000万人程度で推移していました。明治45年に5,000万人、昭和11年に7,000万人、戦後はベビーブーム以降、人口が増加し、昭和25年に8,400万人、昭和42年に1億人を突破します。

戦後の高度経済成長時代には大量の資源を消費し、環境汚染を引き起しました。それを考えると、日本の生態系を守りながら、外国に依存しないで生活するには、1億人は多過ぎるのかもしれません。

化石燃料を使わずに、間伐材の木炭や地熱発電、小規模な水力発電、水素やアンモニア発電、ヨウ素太陽電池等を組み合わせれば、日本国内の需要は満たされると思います。

生態系を守りながら、自然と共に生活する日本型ライフスタイルと新しいエネルギーミックス技術を輸出することで国民の所得は増やせるのではないでしょうか。

編集後記「締めの都々逸」

「自分自身が 幸せ感じ 生きりゃ子供も 欲しくなる」

少子化の原因は、国民が幸せを感じられず、将来に希望が持てず、経済的に余裕がなく、男女が出会い愛を育む仕組みがないことが原因ではないでしょうか。

少子化は金を配るだけでは解決しない複合的な課題です。ましてや、財源に増税が必要と言われれば、呆れ果て、日本を見限る人も増えると思います。

現在の少子化は政治テーマとして少子化を上げているだけです。復興支援も防衛力増強も少子化も同じです。全ては財源があれば解決できると思っていて、増税が必要だといいます。なんて愚かで、単純な人達なのでしょう。(坂口昌章)

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