日本でも若者たちを中心に流行している韓国の大衆文化ですが、北朝鮮でもその予兆があるようです。今回のメルマガ『宮塚利雄の朝鮮半島ゼミ「中朝国境から朝鮮半島を管見する!」』では宮塚コリア研究所副代表の宮塚寿美子さんが、北朝鮮が制定した韓流を禁止する法について語っています。
※本記事は有料メルマガ『宮塚利雄の朝鮮半島ゼミ「中朝国境から朝鮮半島を管見する!」』2023年1月20日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会に初月無料のお試し購読をどうぞ。
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北朝鮮が韓国風言葉を禁止に。韓流浸透に頭抱える証左?
北朝鮮の朝鮮中央通信は2023年1月19日、最高人民会議(日本の国会に相当)第14期第8回会議が17日と18日に平壌の万寿台議事堂で開催されたと報道した。
金正恩(キム・ジョンウン)国務委員長は出席せず、崔竜海(チェ・リョンヘ)最高人民会議常任委員長が開会の辞を述べた。この会議では、2022年度の決算と2023年度の予算編成を行った。
また、今回注目される案件として、外来語を禁止し標準語の使用を徹底するための「平壌文化語保護法」が採択されたのである。
同法の目的について、康潤石(カン・ユンソク)最高人民会議常任委員会副委員長は「平壌文化語を保護して積極的に生かすことは、社会主義民族文化発展の合法則的な要求」と述べ、「言語生活で主体を徹底して立てる事業の重要性」と説明した。
韓国の若者言葉やK-POPなどの大衆文化の流入を阻止し、体制を引き締める狙いがあるとみられる。
韓国情報機関・国家情報院は2021年に、北朝鮮が若者を対象に「ナムチン(ナムジャチング=彼氏)」などの表現や夫を「オッパ」、ボーイフレンドを「チャギ」とする呼び方など、韓国風の言葉遣いと呼称を厳しく取り締まったと報告している。韓国では、オッパは女性にとっては“お兄さん”という意味で、恋人にも夫にも呼ぶ言い方である。
かつて2018年3月に平壌で開かれた南北首脳会談の晩餐会で李雪主(リ・ソルジュ)夫人が、夫の金正恩総書記について、「チェ ナムピョン(私の夫)」と呼んだことが印象的であった。最高指導者である金正恩総書記は「元帥様(ウォンスニム)」と呼ばれるからだ。そこをあえて普通の呼び方をしたからである。韓国人が同席する公の場ではあったが、普段からよくこの呼び方をしているのかもしれない。
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北朝鮮は2022年12月に韓国のドラマ、音楽などの視聴や流布を禁じ、罰則を強化する「反動思想文化排撃法」を、2021年9月に若者の正しい生活習慣を確立するための「青年教養保障法」をそれぞれ制定し、体制への忠誠と引き締めを強化している。
北朝鮮でもスマートフォンが普及している。脱北者の証言によると、韓流ドラマを観た経験があり、テキストメッセージでも韓国語の省略されたものを使うことが流行っていたという。
最近では、金正恩総書記の娘を現地指導に同行させている姿を報道しているが、肉声は公開していない。彼女の話し方を世界に公開するにはまだ心配な年頃だからかもしれない。
この平壌文化語保護法は若者だけではなく、全人民、さらには子供たちにも適用されるのである。
(宮塚コリア研究所副代表・國學院大學栃木短期大學兼任講師 宮塚寿美子)
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