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「ルパン3世」「アタック25」から「大岡越前」まで。昭和の時代を彩った作曲家“ヤマタケ”山下毅雄の魅力

貴方は、作曲家・山下毅雄(やました・たけお)をご存知だろうか? 名前を聞いたことがない人でも、彼の作曲した音楽を聴けばピンとくるに違いない。

なぜなら、彼が遺したテレビの主題歌やCMなどの音楽は今も多くの人の記憶に刻まれているものばかりだからだ。

たとえば「タイムショック」「アタック25」「霊感ヤマカン第六感」などのクイズ番組から、時代劇「大岡越前」「江戸を斬る」「半七捕物帳」、TVアニメ「ルパン三世 (第1シリーズ)」「ガンバの冒険」「佐武と市捕物控」、ドラマ「七人の刑事」「プレイガール」「時間ですよ」などなど…「ヤマタケ」こと山下毅雄の手がけたテレビ番組の主題歌やテーマ曲は枚挙にいとまが無い。

 

ここで山下の経歴について簡単に紹介しよう。山下毅雄は1930年3月7日、兵庫県神戸市生まれ。慶應義塾大学経済学部の学生だった頃より、フルートに魅せられ、のちに妻となるピアニストのしげ子とであったことを機に深く音楽へ傾倒していった。

すでに慶應義塾高校在学中より仲間とともにオーケストラを組んで演奏活動を開始。そこには、小林亜星、林光、櫻井順、冨田勲ら錚々たるメンバーが所属していたという。

その後、独学で作曲を始め、次第にジャズやハワイアンに傾倒。NHK『学生の時間』で影絵劇の藤城清治の作品にて音楽を担当した際、これを観た作曲家の芥川也寸志から「あなたは音楽を書き続けなさい」と激奨され、本格的に作曲家の活動をスタートさせる。

その後6年間、レコード会社「ビクター音楽産業」の専属作家として意欲作を発表した。そして「スーパージェッター」「悪魔くん」「ジャイアントロボ」といったテレビアニメや特撮のほか「鬼平犯科帳」などのテレビドラマやバラエティ番組、映画、CM、舞台など、多くの音楽作品を手がけたことで知られている。

2005年11月21日、脳血栓のため横浜市内の自宅で死去。享年75歳。

こうしたテレビやCMなどで流れてきた“日本のスタンダード・ソング”たちは、昭和時代に「職業作家」と呼ばれる作曲家たちの手によって生み出されてきた。現代のように、自作自演の「シンガーソングライター」が持て囃される前の時代は、こうしたプロの作曲家たちが、歌謡曲やメディア向けのテーマソングなどを制作していたのである。

そんな「職業作家」たちの仕事が今、再評価されつつある。

世界的ヒットとなった松原みき「真夜中のドア」(1979)の作曲家・林哲司は、いずみたくや中村八大、すぎやまこういちといった往年の「職業作家」を今も深く敬愛しているという。また、鈴木慶一や井上鑑といった林と同世代の作曲家・アレンジャーたちも、60年代から70年代にかけてヒット曲を世に放った職業作家へ賞賛の言葉を惜しまない。

そんな「職業作家」のひとりである山下毅雄の貴重な楽曲群が、専属作家として当時所属していたビクターから発売されたという。一体どのような作品だったのだろうか?

参考資料:ビクター・トレジャー・アーカイヴス『山下毅雄ビクター・イヤーズ』ライナーノーツ(2022)

山下毅雄の音源はどのようにして発掘されたか? ビクター・星健一氏インタビュー

昨年11月、昭和の職業作家たちの発掘音源を集めた作品集『ビクター・トレジャー・アーカイヴス』シリーズが発売された。作曲家いずみたく、作詞家の山上路夫とともに選出されたのが、作曲家の山下毅雄であった。

ビクター・トレジャー・アーカイヴス 『山下毅雄ビクター・イヤーズ

今回の山下を含む職業作家の過去の偉業を発掘したシリーズは、一体どのように企画されたのか? そしてどのような楽曲が発掘されたのか? VCケンウッド・ビクターエンタテインメントで今シリーズを企画したストラテジック部のディレクター・星健一氏にお話をうかがった。


──この度はお忙しい中、このような機会をいただきありがとうございます。以前よりヤマタケこと山下毅雄さんが作曲した楽曲のファンで、「アタック25」や「ルパン3世」「大岡越前」などの楽曲を聴いて育ったこともあって、彼に大変興味がありました。今回のヤマタケさんの発掘音源についてお聞きしたいのですが、ビクターに保存されていた音源を新たに発掘したということでしょうか?あるいは発見された新音源が多いということなのでしょうか?

星健一氏(以下、星):今回のCDには、元々ビクターの音源としてレコード発売はされていましたが、これまでCD化されていなかった「初蔵出し」の音源が数多く収録されているのが特徴ですね。

──山下さんの音源は初CD化が数十曲もあるとのことですが、これは今まで発見されていなかったからでしょうか?

:本シリーズの「初CD化」の楽曲数は、それぞれ山上路夫21曲、いずみたく11曲、そして山下毅雄は30曲にものぼります。これだけ初CD化の曲が多い理由は、本CDの企画・監修・解説を手掛けられたアンソロジストの濱田髙志さんが、これまで注目されていなかった楽曲に改めてスポットライトを当てたからです。つまり、これだけの発掘音源を収録できたのは濱田さんに依るところが大きいと思います。

──ヤマタケさんといえばアニメやドラマなどの主題歌が有名です。今回のCDには、もちろん「七人の刑事」や「トッポ・ジージョ・イン・ジャパン」「時間ですよ」などテレビ用の楽曲も多く収録されているのですが、2枚目のCDにビクターの「学芸部」からの依頼で作曲された童謡が多数収録されていたことに大変驚きました。ヤマタケさんは童謡も手がけられていたんですね。

:私も正直、山下さんの学芸用の音源は初めて聴いた曲ばかりでした。しかし、改めて聴いてみると、そのメロディーの素晴らしさと、知らないうちに口ずさんでいる曲の多さにとても驚きました。ヤマタケさんについて「ルパン3世」しか知らないような人にこそ是非聴いて頂きたいと思いますね。

──今回のヤマタケさんを含む発掘音源シリーズの聴きどころを教えていただけますでしょうか。

:今シリーズは、ビクターに残る職業作家の仕事を、作家ごとに編み、その魅力を俯瞰する特別企画となっています。今回選出されたのが、作曲家のいずみたく、山下毅雄、そして作詞家の山上路夫の3人で、いずれもビクター専属作家として、そのキャリアを踏み出したソングライターたちです。レコード大賞の受賞曲や代表曲ももちろん収録されておりますが、おそらく皆様がご存じない曲も数多くあると思います。初CD化やアルバム未収録曲を豊富に選曲、三者三様の個性が楽しめるよう、お宝音源を交えた貴重なアーカイヴ・シリーズとなっています。是非知らない曲にも注目してみてください。必ず新たな発見があるはずです。

──私も、知られざるヤマタケさんの新たな魅力に注目したいと思います。本日はお忙しい中ありがとうございました。


個人的にヤマタケの吹く「口笛」が好きだ。子どもの頃に時代劇「大岡越前」の音楽の中で聴いて以来、「口笛の名手」と言われた彼の吹く、伸びやかで哀愁に満ちたあの美しい口笛が、脳裏に焼き付いたまま離れないのである。今回発売されたCDにも随所にヤマタケの口笛が収録されていると知り、あの口笛を意識しながら鑑賞する時間が今からとても楽しみだ。(MAG2 NEWS編集部gyouza)

【関連商品情報】

ビクター・トレジャー・アーカイヴス

シティポップのルーツとも言える60~70年代にかけてヒット曲を世に放った職業作家たち。『いずみたくソングブック』などでお馴染みアンソロジスト・濱田髙志によるビクター専属作家3名の作品集。レコード大賞収録曲他、初CD化音源を多数収録。

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各2枚組
価格: 各3,520円(税込)

image by: 『ビクター・トレジャー・アーカイヴス

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