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自分の首を絞める岸田首相「自爆増税」で好景気スパイラルを壊す自民政権の悪癖

一時は支持率が危険水域とされる3割を切ったものの、現在は持ち直しの傾向にある岸田政権。景気対策や外交防衛等の問題解決に向けては政権の安定化が不可欠ですが、岸田首相が長期に渡り政権を握るカギはどこにあるのでしょうか。今回の無料メルマガ『ロシア政治経済ジャーナル』では国際関係ジャーナリストの北野幸伯さんが、「岸田内閣が安倍内閣並の長期政権になる唯一の条件」を考察。「ただ一つ避けるべき政策」を挙げています。

景気がよくなりつつあるときに増税でぶっ潰す歴代総理の問題点

今日は、「岸田内閣が安倍内閣並の長期政権になる唯一の条件」についてお話しします。

緊急事態宣言での驚き

私がモスクワから完全帰国して、はや5年目になります。私が日本にいたのは19歳まで。その後28年間モスクワに住んでいました。人生の半分以上外国にいたので、「外国人の視点」も理解できます。

「日本人のユニークなところだな」と思ったことがあります。それは、「お上のいうことに従う」こと。

たとえば、新型コロナパンデミックについて。安倍総理は2020年4月、「緊急事態宣言」を出しました。これは、いろいろな国で実施された「ロックダウン」(都市封鎖)と比べると、かなり緩いものです。

日本の「緊急事態宣言」は、「ロックダウン」と違って「強制力」がない。世界のジャーナリストたちは、「ハハハ。こんなもん何の役にも立たない」と笑いました。

ところがしばらくすると、日本国民のほとんどが「政府のお願い」に従っていることがわかり、仰天したのです。

「非人道的働き方改革」でも、労働時間は減少

実をいうと、日本に帰ってきて驚いたのは、緊急事態宣言が最初ではありませんでした。

私が完全帰国した2018年は、どこにいっても「働き方改革、働き方改革」と言われていました。この年に成立した「働き方改革関連法」は、かなり非人道的内容になっています。

たとえば、繁忙期の単月の時間外労働上限は100時間。月100時間の残業が合法!月20日働くとしたら、100時間 ÷ 20日=1日5時間の残業は合法である。つまり、定時午後6時の人を、夜11時まで働かせるのは合法!

これでは、「国がブラック企業を合法化した」といわれても仕方ありません。

ちなみに「過労死認定ライン」は、「月80時間の時間外労働」とされています。つまり政府は、「過労死認定ライン」の残業を「合法化」しているのです。

電通社員だった娘さんが過労死自殺した高橋幸美さんは、「働き方関連法」の内容を知って嘆きました。毎日新聞2018年7月19日。

娘に報告できる内容ではなかった……。働き方改革関連法が成立した瞬間、母親は国会の傍聴席にいた。広告大手「電通」の社員で2015年末に過労自殺した高橋まつりさん(当時24歳)の母幸美(ゆきみ)さん(55)。

ところがその後、面白い現象が見られました。悪法にも関わらず、日本人の労働時間が短くなってきたのです。「リクルートワークス研究所」2021年11月1日から。

2017年発表の「働き方改革実行計画」で挙げられた課題の一つに「長時間労働」がある。

総務省統計局「労働力調査」によると、日本の労働時間は年々短くなり、2020年の年間就業時間は1811時間となった。

週60時間以上働いている長時間労働者の割合も、就業者で5.6%、雇用者では5.1%まで減少している。

では、長時間労働であった人の労働時間はどれだけ減ったのだろうか。2016年に25~44歳であった正社員を対象に、2020年にどれだけ労働時間が変わったのかをみてみよう。

 

2016年の週労働時間別に、2016年と2020年の差分の分布状況をみると、2016年に週労働時間が40時間以上であった正社員の半数以上は、2020年に労働時間が減っている(図2)。

 

特に月80時間以上の時間外労働に相当する週60時間以上の人では、53.1%もの人が2020年に労働時間が11時間以上減少している。

 

かつての長時間労働者を中心に、労働時間の縮減が着実に進んでいることがわかる。

なぜ法律は「悪法」なのに、労働時間が減ったのでしょうか?

私は、「緊急事態宣言」と同じ現象だと思います。つまり、お上が「働き方改革、働き方改革」と繰り返した。その結果、経営者さんたちが、「お上がいうなら、労働時間を下げなければ」と考え、実行し始めた。

証拠はありませんが、私はそう考えています。

「鶴の一声」で賃金上昇トレンドを作った岸田さん

「国民はお上のいうことに従う」もう一つの例を。

昨年は、ウクライナ戦争で食糧、エネルギー価格が暴騰しました。それで、インフレになった。日本のインフレ率は昨年12月、4%に達しました。日本国民は、相対的に貧しくなった。

そこで、岸田さんは年初、「インフレ率を超える賃上げをお願いしたい!」と要請しました。

他の国であれば、何の意味もない発言でしょう。しかし、日本国の場合、「働き方改革」「緊急事態宣言」がそうだったように、「とても意味がある」のです。

「ITmediaビジネスオンライン」2月28日を見てみましょう。

「岸田文雄首相が1月の経済3団体の新年祝賀会で「インフレ率を超える賃上げをお願いしたい」と要請したことを受け、日本の賃上げ機運が一気に高まりました。

「日本の賃上げの機運が一気に高まりました」だそうです。なんというすごいことでしょう。

そして、大企業が続々と「賃上げ」を発表し始めたのです。

イオングループが自社のパート40万人の時給を7%引き上げると発表しました。今年の春闘では5%が一つのラインといわれている中で、7%という数値は大きなインパクトがありました。(同上)

インフレ率4%で賃上げ7%なら、だいぶ楽になるでしょう。

実は、イオンに先立ってパート・アルバイトの時給を2割引き上げたのはユニクロを展開するファーストリテイリングでした。その後、イオンやオリエンタルランド(7%増)、任天堂(約10%増)など、大手企業が続々とパートやアルバイトの時給引き上げを発表しました。

 

最初の頃は「ユニクロだから時給を引き上げられるのだろう」程度に見ていた企業も、イオンやオリエンタルランドといったように身近で影響力のある企業が続々と賃上げを発表したことで、いよいよ本格的に賃上げに踏み切る必要に迫られています。

賃上げトレンドが形成されつつあるようです。

するとどうなるのでしょうか?インフレ率を超えて、実質収入が増える人たちが激増します。つまり所得が上がる。

所得があがれば消費が増えるでしょう。消費が増えれば、生産を増やす必要が出てきます。それがさらに所得増につながっていく。

図にすると、

つまり「好景気スパイラル」に入っていく。

岸田さんは、「インフレ率を超える賃上げをお願いしたい」といった。その一言で、賃上げトレンドが形成された。賃上げトレンドが形成されれば、後は勝手に好景気スパイラルに突入します。

景気がよくなれば、岸田内閣が長期政権になる道が開かれるでしょう。

自爆増税をしないことが必須条件

ただ、日本の総理は、好景気になりかけるとそれをぶち壊す行動をとりがちです。

なんでしょうか?

そう、【 増税 】です。

バブルが崩壊したのは1990年。その後、経済成長率は、どんどん下がっていきました。90年4.89%、91年3.42%、92年0.85%、93年-0.52%。バブル崩壊の影響がはっきり見えます。

しかし、93年を底に、日本経済は復活しはじめていました。

93年-0.52%、94年0.88%、95年2.63%、96年3.13%。

どうですか?どう見ても、「日本経済復活軌道だよな」と思えるでしょう。しかし…。

96年3.13%、97年0.98%、98年-1.27%、99年-0.33%

復活軌道だった日本経済が、また沈んでしまいました。何が起こったのでしょうか?

そう、1997年に消費税率が3%から5%に引き上げられた。これが「暗黒の10年」の原因だったのです。

そして2013年、日本経済は「アベノミクス」への期待に満ちていました。この年は、2.01%の成長を果たし、株も爆上げしていたのです。しかし、翌2014年は0.3%の成長で、がっかりでした。何が起こったのでしょうか?

そう消費税率が5%から8%に引き上げられたのです。

というわけで、日本の総理大臣は「景気がよくなりつつあるときに、増税してぶっ潰す」ことを繰り返しています。

今、「賃上げトレンド」が形成されつつあり、日本経済は「好景気スパイラル」に入る可能性が高まっています。

一方、岸田さんは、橋本総理、安倍総理と同じ過ちをして、日本を【 暗黒の40年 】に突入させる可能性もあります。

そう岸田さんは、「防衛増税」「異次元の少子化対策増税」「消費税率引き上げ」などをして、日本経済をぶち壊すかもしれない。

というわけで、「岸田内閣が安倍内閣並の長期政権になる唯一の条件とは」は、【 増税をしないこと 】。

これだけです。

皆さん、自分のために、日本のために、岸田さんにこの事実を教えてあげてください。「賃上げトレンドが形成されつつあるので、増税さえしなければ、安倍内閣に匹敵する長期政権になれる可能性がありますよ。絶対に増税しないでください!」と。

官邸には、以下のページからメールできます。日本は民主主義国家。どんどんメールしましょう!

ご意見募集(首相官邸に対するご意見・ご感想)

(無料メルマガ『ロシア政治経済ジャーナル2023年3月1日号より一部抜粋)

image by: 岸田文雄 - Home | Facebook

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【著者】 北野幸伯 【発行周期】 不定期

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