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それは「捏造」ではないのか。高市早苗が放った過去イチ番の大問題発言

13日に行われた参院予算会議で、高市早苗氏が存在を否定し続けてきた放送法を巡るレクについて、「あった可能性が高い」とした総務省サイド。いよいよ追い詰められた感のある高市氏ですが、この騒動、一体どのような展開を見せるのでしょうか。今回のメルマガ『uttiiジャーナル』ではジャーナリストの内田誠さんが、高市氏に関する数々のエピソードを紹介しつつ、騒動の背景を分析。その上で、今後の注目点を記しています。

辞職するものか。錯乱状態の高市早苗氏「行政文書」騒動の背景

そういう大きな問題が二つあって、それらについては過去の記憶を掘り返してもう一度考え直すということをしなければいけない。だから1年に一回、同じ日付の日が廻ってくるのだと思いますけれど。そういうことだと思います。

それからもう一つ。野球の情報があまりに楽しくてあまりに賑々しいので、ついつい忘れてしまいそうになるのが、高市早苗さんの話ですね。冒頭にお話ししようと思っていたのは、その高市さんの話です。

今問題になっているのは総務省の役人からリークされたとおぼしき文書、これは立憲民主党の小西議員が国会で提示したわけですけれど。これについて少なくとも自分について書かれているところはすべて捏造だと、高市さんが言い放っていたわけですが、この文書自体は当然、現在の総務大臣である松本大臣が国会の答弁で、これは本物の行政文書であることを認めた。

認めたにもかかわらず、そこに書かれている内容は捏造されたものだと言って、捏造でなかったら議員も辞める大臣も辞めると言っていた高市さん、そうすることなく、逆に「辞めるものか」と言わんばかり。この問題をゆっくり考えたいなと思っております。

色んなところで色んな人がこれに関して既に発言されていると思いますが、高市さんの現在の政府部内でのポジションは、経済安全保障担当、その他たくさん担当が被さっていて、正式名称は「内閣府特命大臣」です。総務大臣ではありません。総務大臣というのは放送行政も担当する大臣ですが、今現在高市さんはそのポジションにはない。

この、高市さんは安倍さんの秘蔵っ子というような形だったと言って良いのですかね。よく分かりませんが、少なくとも安倍さんに期待した保守派が、安倍さんの次に期待する人として急速にクローズアップされ、そして政調会長からですかね、総裁選に立候補することがありました。

それに破れ、さらに安倍さんが死亡する、殺害されることがあり、それ以降、高市さんに対する庇護者、彼女をもり立てようという動きは自民党内で必ずしも強くないのではないかと思います。目立って実力者がバックになっているというような話も聞こえてきませんし、相変わらず保守派の期待は大きく背負っていることは間違いないですが、そのようなポジションにある。

なぜこのタイミングで「放送法4条の解釈を変えた方が良いのではないか」というかつての礒崎首相補佐官でしたか、礒崎さんの求めに応じて色々な議論がされたその模様が80数枚のペーパーになっているわけですが…。

これ、時に問題になっているのは4条の解釈として、あるテレビ局全体が偏向して、何度注意をしても直らないとき高市さんは総務大臣としての答弁で、「停波しないとは限らない」という意味のことを仰った。停波というのは波を止める、つまり放送事業者としての権利を奪う。あんたはもう放送しちゃダメ、ということが総務大臣には言えるのだと。勿論、もっと慎重な言い回しをした上での言い方でしたが、絶対にやらないということではないのだよということを国会でわざわざ発言した。

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ナチス擁護団体と日の丸の前で記念撮影の過去も

この高市大臣答弁の背後で、自民党内、政権内で事前にやりとりが成されている。その中に高市さんが安倍さんとその件で電話をしたと書かれているのですが、そんなことはしていないと言い張っている。

それを「言っていない」と言い張ることにどんな意味があるのだろう、という気はするのですが、高市さんからすれば、話していないから嘘だということですが、仮に本当だったとして、指摘されてその先に何が待っているのか、どういう不都合が高市さんに起こるのか分からない、とにかくそういうことに今なっている。

この放送行政の問題というのは、実は高市さんが総務大臣になるずっと前に一度手を付けている。そのことを少し後にご紹介しようと思っています。

さて、高市さんを巡ってですが、この方、本当にエピソードがたくさんあって、私が絡んだものも一つあるので後でご紹介するのですが…あ、この番組でも2、3回言いましたので、覚えておられる方がいらっしゃるかもしれませんが、靖国問題を巡って、田原総一朗さんに下品と言われたときの話ですね。それ自体は一種の解決を見ているのですが。これは少し置いておくとして…。

高市さんということですぐに思い出されるのは、一つは、ナチスとかファシズムに対してフレンドリーな態度をおとりになってきたということがあります。ナチスを擁護する日本人の団体がありますが、日の丸のまえでその団体の代表とツーショットの写真を撮っていたことがあり、問題になりました。

本当であれば、そうなるにあたっての特別な(気の毒な)事情もなく、まさに高市さんの意志として撮ったということであれば、ナチス問題をずっと追及しているユダヤ人の団体などからすれば、即刻議員辞職ものだろうという、そういう類いのことでした。なんとか切り抜けましたが…。

それから、『ヒトラーの選挙戦略』という本の推薦文を寄せていたということもありました。不思議なくらい、ナチスやヒトラーに関してキチンと批判する側に立たないようなのです。もっとも、麻生太郎さんのように「ナチスに学べ」と言った政治家もおられますから、自民党の体質としてそういうことがあるのかもしれません。私は確言できませんが、そのようなペースがあるのかもしれませんし、高市さんに個別の事情があるのかもしれません。

『朝まで生テレビ』など、テレビの討論番組によく出ておられました。キャスターをやられたこともありましたが、元々松下政経塾の5期生なんですよ。伊藤達也さんと同期で、現在62歳ですが、テレビに出演したときの肩書きが、米国議会の「立法調査官」とされていたことがあり、「官」という字を使って名乗ったことが何度かあったんですね。これについては鳥越俊太郎さんが批判したことなど、紆余曲折があって、どうもハッキリしないところがあります。

ただ、そういう役職はないのですが、高市さん、米議会下院の民主党議員の個人事務所で立法の調査分析をしていて、それに対する報酬も支払われていたことは確かでした。つまりボランティアではなく、仕事としてそのようなことを行っていたということはあるようです。ただし、その仕事を「官」と呼んで良いかは分かりません。ちょっと疑問が残る話ではあります。

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これこそ「不正確」。高市氏の過去一番の問題発言

2008年に、有害情報の規制をする法案を検討しています。総務大臣がインターネット規制の権限を持つよう、法律の文言に書き込もうということだったようです。これ、なんとなく、テレビ番組の「政治的公平性」に通じる話でしょ。その後、放送行政担当の総務大臣になってからの、約8年後のことですが、放送法4条に関して民会問題になっている「停波」の可能性があると受け取れる発言を国会の答弁で行った。

少なくとも2008年ぐらいから、高市さんの頭の中には放送や情報提供についての関心、この「デモくらジオ」なんかもそうですし、「デモクラTV」自体がそうですが、こういうものについての規制が念頭にあった。これは間違いないことだと思います。

それから、村山談話ですね。アジアの近隣諸国に対するお詫びと反省…とした村山談話についての否定の意見を当初からお持ちのようです。これも自民党としては当然なのかもしれません。自民党というのはそういう政党ですからね。高市さんもその例に漏れないことになります。

それから割と不用意なご発言も多くてですね。福島原発事故で死者はいない…という前提でお話をされたことがあり、これは相当強く批判されました。(関連死のことも避難生活のことも分からないような)そんな人は、議員でいる資格はないと、民主党の人などは言っていましたし、それはちょっと無神経が過ぎるのではないかな…。そのように批判されても仕方がない、と私自身も思います。

で、極めつけですけれど、高市さんの発言で一番問題が大きいだろうなと私が思うのは、去年の6月19日ですかね。NHKの日曜討論で、大石さんという「れいわ新撰組」の女性の政審会長の発言で、「数十年にわたり法人税は減税。お金持ちは散々優遇してきたのに、消費税だけ減税しないのはおかしい」と追及。高市さんは、「れいわ新撰組から消費税が法人税の引き下げに流用されているかのような発言があったけれども事実無根だ」と言い、つまり消費税は社会保障に使途が限定されていると主張。

批判に対しては「デタラメを公共の電波で言うのは辞めていただきたい」という…これ、面白いですよね、批判の仕方として。あんたの言うことはデタラメだというのではなくて、デタラメを公共の電波で流すのは辞めてくれという言い方をした。放送のことが話の中に入ってくる、面白いと思うのですが、ま、そういうことを言った。

これ、自民党と民主党と公明党の3党合意というのがありましたよね。税と社会保障の一体改革という。あのときにね、藤井裕久さんなんかにはガッカリしちゃったんだけどね。まあ、もう亡くなられたのであまり言いたくないですけれど。

この番組でも、いや、デモクラTVでもデモクラ本会議の前の「パックイン・ニュース」の時代には電話で登場していただいたりもしたのですが、どうも肝心なお話はなさらないまま、あちらの世界に行ってしまったわけですが、藤井さんというと、ピカピカの大蔵官僚という印象が私には強いのですが、結局、一体改革というのは、年金だとか健康保険、介護保険などの社会保障諸分野の負担の大きさに堪えかねた政府が、うまく誤魔化して社会保障費を徐々に削っていくための方策として、当時まだ民主党政権でしたが、野田さんになっていたかな、民主党の最後の方ですよね、決めてしまったという。

ずっと民主党はその合意に縛られて、結局、社会保障に関して抜本的な改革案、鳩山政権の頃にはあった、マニフェストとしてもあったと思いますが、最低保障年金ということを言っていましたよね。それも3党合意以降は言えなくなったのだと思います。

結局、みんな自民党みたいになってしまったという感じだった。それが尾を引いているわけですよ。しかし自民党にはこんなことをずっと言い続ける人がいる。高市さんのように。消費税は全部社会保障にぶち込んでいるのですよと。よく言うなと。

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立憲側に高市潰しの「二の矢」「三の矢」があるのか

これ、ウィキペディアなどにもキチンと反論が書いてあるのですが、安倍さんが2019年1月の衆参本会議でどう言っていたかというと、「少子高齢化を克服し全世代型の社会保障制度を築き上げるために消費税の引き上げによる安定的財源がどうしても必要です」と。

「8%への引き上げ時の反省の上に経済運営に万全を期して参ります。増税分の5分4を借金返しに当てていた消費税の使い道を見直し、2兆円規模を教育の無償化に振り向け、子育て世代に還元いたします」。

もう、今の少子高齢化対策につながる道筋の一つですが、こういうことを言っている。安倍さん自身、いわゆる財政健全化のためにいただいてしまいましたということを言っておられるわけでね。

だから、安倍さんの言っていることはれいわ新撰組の大石さんに近いのであって、安倍さんにも批判されるようなことを高市さん、言ってしまっているという気がします。これはとても大きな問題で、そのようなことのある政治家だということです。

自民党的なエッセンスはすべて体内に持っておられますね。村山談話否定の話もそうですし。これ言うと「違う」と反対する人がいるかもしれませんが、ナチズムとかヒトラーに対する親和的な態度。大小、濃淡はあると思いますが、そういうものについても高市さんは持っておられますし、それから放送に対する危機感というか、放送を押さえてしまいたいと。形の上では公平にやってください」という話なのだと思いますが。

安倍さん、以前、TBSの『ニュース23』、まだ筑紫哲也さんが生きておられた頃ですが、対論の形でやったときに、あなたの番組の街頭インタビューの使い方はおかしいと安倍さんが噛みついていましたので、常にそういう形で批判するようになっている。

今度の80何枚かで問題にされているのはTBSの『サンデーモーニング』。関口宏さん司会の番組。コメンテーターが4人か5人いて、みな同じ方向の意見を言っていたと。これは一面的であるということで批判をされた。

そういう放送に対する批判の仕方は、その後、萩生田さんら、党の役員が、選挙報道に関してでしたか、「民放各局に対する申し入れ」というのがありました。ですから、安倍政権と自民党は、とりわけテレビに対する規制を強めようという発想があらわ。安倍政権以降、自民党本部には各局テレビの番組をすべて録画録音してチェックすることが、党の業務といいますか、仕事に加わったと聞き及んでおります。

今回のことは、政権がテレビに対する規制を強めていこうという流れの中での現れだと思います。高市さん個人についてはどういうふうに評価して良いのか分かりません。これから国会会期末までだいぶありますから様々な議論が成されるでしょうし、立憲側に「二の矢」「三の矢」があるのかないのか。その辺を見ていきたいなと思っております。

(『uttiiジャーナル』2023年3月12日号より一部抜粋。全てお読みになりたい方はご登録ください)

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image by: Instagram(takaichi_sanae

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ニュースステーションを皮切りにテレビの世界に入って34年。サンデープロジェクト(テレビ朝日)で数々の取材とリポートに携わり、スーパーニュース・アンカー(関西テレビ)や吉田照美ソコダイジナトコ(文化放送)でコメンテーター、J-WAVEのジャム・ザ・ワールドではナビゲーターを務めた。ネット上のメディア、『デモクラTV』の創立メンバーで、自身が司会を務める「デモくらジオ」(金曜夜8時から10時。「ヴィンテージ・ジャズをアナログ・プレーヤーで聴きながら、リラックスして一週間を振り返る名物プログラム」)は番組開始以来、放送300回を超えた。

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【著者】 内田誠 【月額】 月額330円(税込) 【発行周期】 週1回程度

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