私はこの正社員の苦しさがよくわかるのです。なぜなら私自身が、正社員時代に絶望していたから。
「このまま自分はずっと同じ満員電車に乗って向いてない仕事をして単調な人生を生きるのか」「自分の人生は一生会社が決めるのか」と悟ったとき。「もうここを辞めたら非正規になって貧乏になる」と脅されたとき。
七転八倒して会社を辞めて、ようやく息がつけるようになりました。私は時間と自由が欲しかった。だから、もうその後正社員には戻っていません。
マレーシアに来てみたら、就職したければ50代でも働くところはあり、なんだなんとかなるじゃんと思いました。もう就職するのは嫌ですけど。
その中で「日本の会社員文化」が我慢できなくなり、海外に脱出することを選ぶ日本人が増えているというわけです。
逆に日本に永住する外国人も増えていますが、この裏には「日本は住むには天国だ、ただし日本のカイシャでは働きたくない」という本音があるかもしれません。
これはマレーシアでも本当によく聞く話ですが、人間は基本的に縛られるのを嫌がるのだと思います。この会社文化と似てるなと思うのが、伝えきく、農家の苦しさ(共同作業が基本)です。最近、地方出身で苦しかったという人と話す機会がありますが、「みんな一緒」「抜け駆けはダメ」は人手が必要だった農業では当然だったのかも。
一方、昔の本を読むと(まあどこまで信用していいかはわかりませんが)武士や庶民(商人)などは割とテキトーな生き方をしていたように見えます。江戸には何度も贅沢禁止のおふれが出ていて、要するに、放っておくと勝手なことをしだすのが町民だったんではないかなと。
私は日本にいたとき、親子で江戸中期の「百物語絵巻」にハマってました。主人公の「平太郎」は本当にテキトーな人間です。妖怪が出てても「捨て置いて寝る」と気にせず寝てしまうんです。
● 妖怪の世界へようこそ! 湯本豪一コレクション5 百物語絵巻 | めぐりジャパン
つまり、やっぱり日本にも多様性があって、なぜかお互いに世界が見えていない上に「会社員」が身分制度みたいになっていて、そこばかりが強調されている。
「会社員しか見えてない人」と「自営業の人が見えてる人」で、話が噛み合っていないみたいな現実はあるのかもしれないなーと思いました。
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