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PARIS, FRANCE - MAY 29, 2017 : Vladimir Putin, the President of Russian Federation in press conference at the Palace of Versailles in the Battles gallery after a working visit with french President.

ついに開かれた「第3次世界大戦」の扉。ポーランドの戦闘機供与が引き金に

西側諸国からウクライナへ供与され続ける大量の兵器。しかし先日ポーランドとスロバキアが相次いで発表した戦闘機の供与は、これまでとはフェーズの異なる「危険な援助」と言っても過言ではないようです。外務省や国連機関とも繋がりを持ち、国際政治を熟知するアッズーリ氏は今回、戦闘機の供与が第3次世界大戦のトリガーとなりうる理由を解説。さらにその戦火が東アジアに飛び火する可能性についても言及しています。

このまま第3次世界大戦へ突入か?ウクライナを巡る最悪シナリオ

ウクライナでの戦況は一層に改善の兆しが見えない。今日、ウクライナ東部の要衝バフムトなどで戦闘が続いているが、そこでの戦闘に参加しているロシア民間軍事会社「ワグネル」の創設者プリゴジン氏は3月半ば、最前線の戦闘に参加する傭兵を5月中旬までにおよそ3万人新たに採用する計画を明らかにした。

ワグネルはロシア各地40都市あまりで若者の採用を行っており、採用は順調に行われているという。これまでのウクライナでの戦闘で送り込まれたワグネルの傭兵は5万人に上り、これまでに3万人が死傷したとされる。プーチン大統領は昨年秋に予備兵などを想定した部分的動員を発表したが、ワグネルによる採用もあり、ロシア市民の事実上の動員はいっそう進んでいる。

「ミグ29」の供与でいっそう混沌となるウクライナ戦争

一方、欧米によるウクライナ軍事支援も、最近ではフェーズが変わってきている。ポーランドのドゥダ大統領は3月半ば、ウクライナに対して旧ソ連製の戦闘機「ミグ29」4機を供与すると明らかにした。これまで米国など西側諸国はウクライナへ軍事支援を続けてきたが、戦闘機の供与はNATO諸国でポーランドが初めてとなった。また、スロバキアのヘゲル首相もウクライナへ「ミグ29」13機を引き渡すことを政府として承認したと発表した。

欧米諸国はこれまで武器を中心にウクライナへ供与を続けてきたが、最近は米国の主力戦車M1エイブラムスやドイツのレオパルト2、英国のチャレンジャー2など最新鋭の戦車300以上が供与されることが決定するなど、ウクライナ戦争は欧米とロシアの代理戦争の様相を呈してきている。しかし、米国は戦闘機F16のウクライナへの供与には否定的な立場を崩していない。

だが、戦闘機の供与を巡ってウクライナ戦争はよりいっそう混沌とし、敷いては第3次世界大戦の繋がりかねない様相だ。大量の戦闘機をウクライナが保持するようになれば、今後大量のワグネル傭兵たちが犠牲となるシナリオは想像に難くない。ワグネルが3万人も追加募集するということは、それだけロシア側の劣勢が顕著になっていることの裏返しであり、さらなるロシア側も劣勢によってプーチン大統領がこれまで以上に挑発的な行動に出る可能性がある。

現実的に描く第3次世界大戦までのシナリオ

ロシアの核使用についてはこれまで多くの専門家が指摘しているので、ここでは割愛したい。今日までの情勢から、第3次世界大戦勃発までのシナリオを現実的に描けば、まずはロシアによるポーランドやスロバキアなどNATO加盟国への攻撃が考えられる。

戦闘機の供与というのは極めて軍事的リスクが高い判断である。今後戦闘機による攻撃によってロシア側の劣勢が顕著になれば、ロシアは戦闘機を供与したポーランドやスロバキアへの攻撃を選択肢として考えるようになろう。しかし、物理的な攻撃となるとリスクが大きいので、政府機関への自爆攻撃や大統領や首相の暗殺などいわゆるテロという手法を用いる可能性も十分にあり得る。

いずれにせよ、ロシアが戦闘機を供与したNATO諸国を攻撃することになれば、その瞬間に世界は第3次世界大戦に突入することになろう。NATO条約を読めばすぐ分かることだが、その第5条は「NATO加盟国の1つに対する攻撃はNATO全体の攻撃とみなす」と書かれており、要はNATO加盟国であるポーランドとスロバキアへの攻撃はNATO諸国全体への攻撃となり、米国も集団防衛に関与する法的責任が生じるのである。

第1次世界大戦の引き金となったのも、サラエボでオーストリア皇太子が暗殺された1914年のサラエボ事件であり、ロシアによるNATO加盟国へのテロでも第3次世界大変勃発の十分な可能性があろう。そうなれば、米国は対ロシアに軍事面の多くを割く必要性に迫られる。

欧州での戦火拡大を手ぐすね引いて待つ中国

一方、それを狙っているが中国だろう。台湾統一を掲げる習政権が台湾侵攻で最も注視しているのは米軍の対処能力である。米軍に人民解放軍の侵攻を止める能力がないと分かれば、侵攻へのハードルは一気に下がることになる。米軍がヨーロッパに対処せざるを得なくなれば、その分アジア太平洋での米軍の能力は低下することになるが、そうなれば海洋覇権と台湾統一に向けて、中国は軍事力をいっそう使用することになる。米軍も台湾防衛で一定の関与をすることになるので、そこで米中の軍事的衝突が生じることになる。しかし、ロシア軍と比較して中国軍のパワーは数段上であり、この状況では米軍はなす術がないのが現実だろう。

要は、第3次世界大戦はヨーロッパとアジアで同時進行で勃発する恐れがある。過去の大戦からも分かるように、大戦勃発の引き金は小さい出来事になる可能性がある。ポーランドとスロバキアの戦闘機供与がその出発点になる恐れもあることを我々は認識しておく必要がある。

image by: Frederic Legrand – COMEO/ Shutterstock.com

アッズーリ

専門分野は政治思想、国際政治経済、安全保障、国際文化など。現在は様々な国際、社会問題を専門とし、大学などで教え、過去には外務省や国連機関でも経験がある。

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