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ChatGPT Chat with AI or Artificial Intelligence. woman chatting with a smart AI or artificial intelligence using an artificial intelligence chatbot developed by OpenAI.

GPT3.5からGPT4へ。進化したChatGPTは今までと何が違うのか?

話題のChatGPTがGPT3.5からGPT4へ進化を遂げたことを知っているでしょうか? 今回、Google、マッキンゼー、リクルート、楽天の執行役員などを経て、現在はIT批評家として活躍されているメルマガ『尾原のアフターデジタル時代の成長論』の著者・尾原和啓さんが、GPT-4をどう使っていけばいいのかについて語っています。

クリエイティブに成長するためのChatGPTの使い方

先月GPT-4が発表されました。ChatGPTでもさっそくGPT-4が使えるようになって、かなり変化しています。その変化は何かという話と、何に使えばいいかという話をしていきたいと思います。

GPT-3.5からGPT-4への変化

GPT-3.5からGPT-4への変化の1つは、パラメータ数といわれるニューラルネットワークの量が100倍になったこと。

あともう1つは、トークンと呼ばれる「GPTの中で質問の意図は何なのか」「自分の出力はどういうところが大事なのか」を保持するための容量が、4,000トークンから3万2,000トークンと、8倍になったことです。

トークンというのは、ざっくりいえばワード数です。3万2,000トークンがどのくらいかというと、一般的な書籍が約20万字、短い文庫本だと約10万字なので、書籍の3分の1から5分の1の容量です。

例えば、「あなたが質問している中で重要なのはこういうところです」とか、「あなたに出力して説明したことは、3つあります」「全部で5つに分けられます」と言った時に、記憶力がない人は内容を忘れて整合性が取れなくなることがありますよね。

しかしこのトークンは、書籍の3分の1から5分の1の容量を記憶の中に持っているので、「そういった人が理路整然と語る」みたいな話です。

大きく質問した時に、理路整然と分解してくれて、どういうステップで考えればいいかをものすごく説明してくれるようになったんですよね。質問した時も、今までより解像度を上げて説明してくれます。

また、これまでは長文出力だと前の設定を忘れて矛盾したことを言い始めていましたが、それが少なくなりました。例えば、「こういう物語を書いてください。こういう台本を書いてください」と言うと、「全体の盛り上がり」といったストーリーラインを用いることが非常にうまくなっている印象です。

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アル開発室からヒントを得た、GPT-4の使い方

みなさんはChatGPTに対して、「自分が知っているけどよくわかっていないこと」を聞くことが多いと思います。それって、「GPTがどのくらい賢いんだろう?」というチェックにはおもしろいのですが、日々それを使うかというと、それほど使いません。

あくまでも正解を知りたいだけだったら、ウイキペディアを見に行ったほうが正確性が高いし、まとまっているわけですよね。

だとしたら、GPTはどういう使い方をすればいいのか?けんすうさんの使い方にすごいヒントがあります。昨日のアル開発室を見て、「これはいいな」と思ったので、尾原なりの解釈を説明していきたいと思います。

今けんすうさんは、「sloth」という新しいNFTを提案しています。これはすごく本質的で、なかなかとっつきにくいNFTの裾野を広げるすばらしいアプローチだなと思います。

彼のそういう本質思考がどこから生まれるかというと、NFTを考える時に、「そもそもNFTというデジタル記号をなぜ人が所有したくなるんだろう?」「なぜ買いたくなるんだろう?」ということで、買いたい理由を考えてみよう、深掘ってみようとするわけですね。

けんすうさんは、「過去に深掘った哲学者、社会学者って誰がいるだろう?」ということで、ルネ・ジラールという、ピーター・ティールが学んだ先生を見つけて、ルネ・ジラールが考えていることは何かを調べて、そこからNFTとの関係性を連想していくわけですよ。やっぱりすごくクリエイティブですよね。

最初から全部のステップをするのは大変ですが、GPTだとけっこうできてしまうんです。

例えば、自分が新しいことを考えているとします。この場合だと、「NFTの可能性」です。「NFTの可能性は、ルネ・ジラールという社会学者の思考から考えると広がりそうだな」と思ったら、そのままChatGPTに「ルネ・ジラールの論点からNFTの可能性を引き出すにはどうすればいいか、論点を箇条書きにしてください」と入力する。

そうするとGPTが、ルネ・ジラールがどういうことを言ったのかを分解して、NFTとなぜ相性がいいのか答えてくれるわけですよ。

つまりGPTは、今わかっている正解を質問するというより、突拍子もない遠くにあるものをつなげてみた時に、どんな回答があり得るかを聞いてみると、クリエイティブなことができるんですね。

なので、「なるほど、けんすうがルネ・ジラールに関して聞いたんだったら、似たようなかたちで『構造主義』って相性がいいよね」と。

どう相性がいいかはわかっていないんですけど、「ポスト構造主義のジル・ドゥルーズあたりとNFTを組み合わせたら、何かおもしろいかもしれない」と思って、「ジル・ドゥルーズの論点からNFTの可能性を引き出す」というふうに、「哲学者の名前×NFT」を試してみました。

するといろいろ答えてくれるわけですが、ぜんぜんわからなくて、「なんだこの、ディファランスとレビティシオンって?」となります。

でも、「どうも、現代社会における差異や反復の重要性というところで言っているんだ」とわかって、次の質問として「ディファランスとレビティシオンに関して、もう少し詳しく教えてください」と聞けば、「こういう論拠でChatGPTはジル・ドゥルーズとNFTの掛け算を考えたんだな」とわかるわけですよ。

こういうふうに、「思想的に近そうなんだけど、掛け算で語られたことのない組み合わせ」「新しいトレンドの話と、古いけどものすごくいいことを言った人との掛け算」でどんどん入れていくと、新しいものが生まれるということなんですよね。

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GPT時代の賢いブレストの仕方

では、GPTはどうやって考えているのか?例えば「りんごって何?」と聞くと、GPTはウイキペディアなどのいろいろなところから集めてきた巨大なデータの中で、一番もっともらしいりんごに関する解説を持ってくるわけですね。

また、「聖書の中のりんごの扱い」について聞くと、限定した空間の中でもっともらしいことを持ってくるわけです。こういうふうに、可能性空間を限定して聞くと、より自分が知らないことを知識として答えてくれるのがGPTのいいところです。

彼らには、「NFTとはこういう機能に分かれています」みたいに、NFTの知識があるわけですね。先ほどお話ししたジル・ドゥルーズに対しても同じように、「ジル・ドゥルーズはこういうことを話した人です」という空間があるわけですよ。

(それを踏まえて、)GPTに質問する時に、「NFTがジル・ドゥルーズによって広がる可能性を聞きます」とすると、そこがブリッジしてくれるので、「NFTの機能のこの部分とジル・ドゥルーズが言っているこの部分を無理やりつなぐことが可能性として大きそうだ」「一方で、NFTのこの側面とジル・ドゥルーズのこの解説は、こういうふうにつながるな」と、確率が高いつながりを探してくれる。

人間は、「あれとあれって似ているな」とか、「これとこれって、共通点があるな」と直観的に思う生き物です。

だから、遠いつながりの中の共通点を探してくれて、どういう論理ステップでつながっていくのかを説明してくれると、「あ、そうか。その手があったか」と、過去の歴史データベース・偉人データベースの型に即して新しいものを再解釈することができる。

それがGPT時代の賢いブレストの仕方です。

「尾原さん、ジル・ドゥルーズみたいな名前、思いつきませんよ」という話もあるかもしれませんが、「その分野に近い人の名前を挙げてください」みたいなことが、やろうと思えばできるわけですね。

「NFTの可能性を議論する時に読むとヒントになる社会学の学者を10人挙げて、その理由を記述してください」とか、この「社会学」のところを哲学や物理学など、いろいろな分野に変えるとこうやって挙げてくれますし、「ピエール・ブルデューの観点から考えて、NFTの可能性を広げるとすればどういうふうに議論ができるでしょうか?論点を挙げていってください」みたいなことをすると、先ほどのようになります。

ここで大事なのは、「嘘をついている可能性もある」ということです。

でも、嘘をついていてもかまわないんですよ。なぜならば、僕らは「遠くにあるもので、なんとなくつながりがありそうなところ」を聞いて、そのつながりを解説してもらうことで、新しい観点を広げることができるからです。

繰り返しになりますが、イノベーションは、ふだんつながらない遠くのものをつなぐから、新しいものが生まれるわけです。そういうふうに、遠くを直観的につないでみたものを解説してもらうことが、GPT時代にクリエイティブでいられる秘訣です。

さらにおもしろいのは、これで議論をしたあとに、例えば「これに反論してみてください」と言うと、反論としての論破で、「なるほど、この論理の弱さはここにあるんだな」と“一人ブレスト”できることです。

なので、ぜひぜひGPTをクリエイティブな壁打ち相手として、遠くとつながる時代の未来を楽しみましょう。じゃあね。

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image by: Shutterstock.com

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IT批評家、藤原投資顧問 書生 1970年生まれ。京都大学大学院工学研究科応用システム専攻人工知能論講座修了。 マッキンゼー・アンド・カンパニーにてキャリアをスタート。 NTTドコモのiモード事業立ち上げ支援を経て、リクルート、ケイ・ラボラトリー(現:KLab取締役)、コーポレートディレクション、サイバード、電子金券開発、リクルート(2回目)、オプト、Google、楽天(執行役員)の事業企画、投資、新規事業立ち上げに従事。 経産省 対外通商政策委員、産業総合研究所人工知能センターアドバイザー等を歴任。 現職は14職目。シンガポール・バリ島をベースに人・事業を紡ぐカタリスト。ボランティアで「TEDカンファレンス」の日本オーディション、「Burning Japan」に従事するなど、西海岸文化事情にも詳しい。

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【著者】 尾原和啓 【月額】 ¥550/月(税込) 初月無料 【発行周期】 毎週 月・木曜日 発行予定

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