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メディアが沈黙を守る「ジャニー喜多川の性加害疑惑」は1960年代からあった

元ジャニーズJr.の男性が、故ジャニー喜多川氏から性暴力を受けていたと告発した会見が話題です。今回、メルマガ『モリの新しい社会をデザインする ニュースレター(有料版)』の著者でジャーナリストの伊東森さんは、過去にもあったジャニー氏の「性加害疑惑」と、ハリウッドを震撼させた「性加害事件」について触れています。

【関連】全メディアが沈黙。ジャニー喜多川「性加害」問題を報じぬニッポンの異常

ジャニーズ事務所の創業者ジャニー喜多川氏の性加害問題 疑惑は1960年代から 海外の場合 2017年、ハリウッドを揺るがした「ワインスタイン事件」 「性的グルーミング」の可能性 

ジャニーズ事務所の創業者ジャニー喜多川氏(2019年死去)から性被害を受けていたと、12日、元ジャニーズJr.の男性が東京都内の日本外国特派員協会で記者会見した。

会見したのは、愛知県出身のカウアン・オカモトさん(26)。

オカモトさんは、2012年2月、15歳のときに事務所に入った。愛知県から通っていたため、仕事が遅くなると都内の喜多川氏の自宅マンションに泊まることが増える。

オカモトさんよると、初めて被害に遭ったのは、12年3月、マンションに泊まった何度目かの夜だった。

夕食後、喜多川氏が近寄り、肩をマッサージしてきて「早く寝なよ」と言われる。その後、ベッドで寝ていると、部屋に入ってきた喜多川氏が足のマッサージを始めた。

オカモトさんは、

 「手がだんだん上がっていき、性器を触られ、口淫(こういん)された」(*1)

と証言。

喜多川氏をめぐっては、『週刊文春』が1999年に少年たちへの性加害を、「セクハラ」として報道。

一方、喜多川氏ら事務所側は、「名誉毀損」として起訴。しかし、東京高裁は「セクハラ」についての記事の重要部分は、真実と認定した(*2)。

目次

・疑惑は1960年代から
・海外の場合 2017年、ハリウッドを揺るがした「ワインスタイン事件」
・性的グルーミング

疑惑は1960年代から

最初に喜多川氏に性加害の疑惑が持ち上がったのは、1960年代に遡る。発端は、1964年から東京地方裁判所で行われていた、芸能学校の新芸能学院とジャニーズ事務所の間での金銭トラブルに関する口頭弁論のときだ(*3)。

もともと、あおい輝彦、中谷良、真家ひろみ、飯野おさみの初代ジャニーズは、アマチュア時代に新芸能学院で学んでいたが、人気が出て間もなく、マネージャーを務めていた喜多川氏とともに学院から独立。

これに対し、学院の代表である名和太郎氏が、所属中の授業料やスタジオ使用料など計270万円を支払うように訴えた。

この裁判において、複数の関係者が喜多川氏による「ワイセツ行為」を証言する。

裁判を報じた1965年の週刊誌『週刊サンケイ』は、「“ジャニーズ”売り出しのかげに」と題する記事の中で、「名和氏のいい文」(原文ママ)として、喜多川氏による性的な行為の「被害」にあったとする生徒の話が登場。

裁判の開始から3年が経過した1967年、今度は週刊誌『女性自身』が、「ジャニーズをめぐる“同性愛”裁判」と題した記事を掲載、疑惑に言及した。

海外の場合 2017年、ハリウッドを揺るがした「ワインスタイン事件」

ハリウッドでは、2017年、多くのアカデミー賞作品をプロデュースしてきた映画製作者ハーヴェイ・ワインスタイン氏の性加害事件が明るみに。ハリウッドはまさに“激震“に揺れた。

事件の発端は2017年10月5日のニューヨーク・タイムズの記事だ。

「アシュレイ・ジャッドの証言で始まるその記事は、臨時スタッフの女性の経験、そして、ローズ・マッゴーワンやイタリアのモデルへの和解金の支払いなどがリポートされていた。

小さなリークのような記事のように見えたが、その後、あっと驚く大女優、人気女優までが被害を訴えたことでハリウッドを揺るがす大事件となった。

その一人がカーラ・デルヴィーニュだ。カーラは、ハーヴェイのセクハラ体験を自身のインスタグラムで激白した。」(*4)

事件後、『恋におちたシェイクスピア』で彼と組んだグウィネス・パルトロウも自身の経験を公にした。

グウィネスは、ハーヴェイのセクハラを当時付き合っていたブラッド・ピットに打ち明けると、ブラッド・ピットは、ハーヴェイの胸に指を突きつけながら、

「オレの彼女に二度とあんなことをするな」(*5)

と言い切ったという。

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性的グルーミング

3月に放送されたBBCの番組内では、被害を受けた男性たちの発言を受け、喜多川氏による「性的グルーミング」可能性が指摘されていた。「グルーミング」とは、性的な行為を目的に、子ども手なずける行為。

より詳細を述べると、

「ターゲットを絞り込んで接近手段を確保し、被害者を孤立させ、被害者からの信頼を得てその関係性をコントロールし、隠蔽する」(*6)

行為とされる。

被害者心理学に詳しい公認心理師の齋藤梓さんはハフポストの取材に対し、

「加害者は、子どもの『大人に認められたい、褒められてうれしい』という気持ちを利用しやすい」(*7)

と指摘。また、

「年齢が幼い場合はそもそも性に関する知識や経験がありません。さらに、子どもにとって加害者は自分を認め、理解してくれる大切な存在です。悩みを受け止めてくれる人を失ってしまう、裏切ってはいけない、この人が自分に悪いことをするわけがない。

子どもはそう思い込んでいるので、性的な接触に恐怖や嫌悪感があっても、それが性暴力だと認識することは難しいです」(*8)

と語った。

■引用・参考文献

(*1)大久保真紀・狩野洸平・金城隆一・加藤あず佐「『ジャニーさんから性被害』元ジャニーズJr.会見 『未遂』証言も https://digital.asahi.com/articles/ASR4D71Z8R4DUTIL01T.html?_requesturl=articles%2FASR4D71Z8R4DUTIL01T.html&pn=4」朝日新聞デジタル 2023年4月12日

(*2)大久保真紀・狩野洸平・金城隆一・加藤あず佐 2023年4月12日

(*3)金子侑輝・石田健「ジャニー喜多川氏に向けられた具体的な性加害疑惑 = 約60年にわたる証言の歴史 https://www.theheadline.jp/articles/815」The HEDLINE 2023年4月18日

(*4)スクリーン編集部「ヤバすぎる!ハーヴェイ・ワインスタイン事件の意味するところ。敏腕製作者のセクハラは“当たり前”なのか!? https://screenonline.jp/_ct/17134444」SCREEN ONLINE 2017年12月3日

(*5)スクリーン編集部 2017年12月3日

(*6)「『性的グルーミング』とはどんな行為か? 子どもたちを守る方法は… https://www.huffingtonpost.jp/entry/story_jp_6434d32de4b0de24724a3ede」ハフポスト 2023年4月12日

(*7)ハフポスト 2023年4月12日

(*8)ハフポスト 2023年4月12日

(『モリの新しい社会をデザインする ニュースレター(有料版)』2023年4月22日号より一部抜粋・文中一部敬称略)

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伊東 森(いとう・しん): ジャーナリスト。物書き歴11年。精神疾患歴23年。「新しい社会をデザインする」をテーマに情報発信。 1984年1月28日生まれ。幼少期を福岡県三潴郡大木町で過ごす。小学校時代から、福岡県大川市に居住。高校時代から、福岡市へ転居。 高校時代から、うつ病を発症。うつ病のなか、高校、予備校を経て東洋大学社会学部社会学科へ2006年に入学。2010年卒業。その後、病気療養をしつつ、様々なWEB記事を執筆。大学時代の専攻は、メディア学、スポーツ社会学。2021年より、ジャーナリストとして本格的に活動。

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