先日掲載の「恐ろしい同調圧力。神戸市が17年間も隠蔽し続けた凄惨いじめ全真相」でもお伝えした通り、金銭の強要や苛烈な暴力を含む深刻ないじめ事件を、余りに長い間隠蔽してきた神戸市教育委員会。しかし彼らには反省の気持ちなど微塵もないようです。今回のメルマガ『伝説の探偵』では現役探偵で「いじめSOS 特定非営利活動法人ユース・ガーディアン」の代表も務める阿部泰尚(あべ・ひろたか)さんが、隠蔽18年目に突入した同案件の最新情報を紹介。その上でこの件については、制度や法律の見直しを含め国が動くべき事案であるとの見方を記しています。
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神戸市18年間いじめ隠ぺい事件。未だに詭弁と逃げ、もはや救いよう無し
前回記事化した「神戸市17年間いじめ隠ぺい事件」だが、更新されて18年間となった。
【関連】恐ろしい同調圧力。神戸市が17年間も隠蔽し続けた凄惨いじめ全真相」
改めて「神戸市18年間いじめ隠ぺい事件」としよう。
出来れば報道記事を含め、上の記事を改めて読んでもらえればと思うが、一言で言えば、前代未聞の隠ぺい事件である。
2005年当時小学5年生だった男子児童が、暴力暴言や金銭を脅し取られるなどしたいじめや犯罪行為のほとんどが行われたいじめ事件を、神戸市教委や校長らが「自己保身」と「同調圧力」によって、隠ぺいした。
加害者らがいじめ行為などを認め、裁判所がいじめを認定しても、神戸市教委は「被害者から直接聞き取りをしていない」と実際は16回も聞き取りが行われていたにもかかわらず、これらの証拠を「不存在」だとして隠し、虚偽の理由でいじめを認めず、市議会においても虚偽答弁を繰り返したり、報道機関についても虚偽説明などを繰り返していたという前代未聞の隠ぺいと嘘のオンパレードの事件である。
この件を調べた第三者委員会は、「組織的な隠ぺいがあった」として批判しているが、当初、神戸市教委は「故意に隠ぺいしたとは判断できない」と釈明したのだ。
これらのことが2023年5月12日あたりに報じられるや、神戸市教委には責任を追及する声や卑怯にも往生際の悪さを指摘する声があったという。
確かにそうだ。いじめ自体は、被害者はもちろん、加害者も認め、裁判所が認定したわけだ。隠蔽についても、公務員による公文書の隠ぺいやこの隠蔽を隠すための虚偽答弁や、被害側への陳情の妨害など、「やれるだけの不正」と繰り返してきたわけだ。
時代劇で見る悪代官をはるかに超えるその悪行が公に発覚し公表されたにもかかわらず、謝りもしなければ、認めもしないのだ。
市民からすれば、安心して子育てができないと思うのは当然だし、真っ当に教育に携わっている教員らからも、教員が増えない理由はこういうアホが教委だからじゃないのか?という声すら出ている。
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母親が報道機関に配布した「手記」に書かれていたこと
今回、第三者委員会の報告の後、被害側は記者会見を行っている。関西の方は夕方のニュースなどでも流れていただろうから観たという方もいるだろう。
この記者会見に先立って、各報道機関には、「母の手記」が配られている。
「手書き」の手記は、葛藤しつつもなんとか前を向こうとするお母さんの正直な心情が綴られている。
手記
私にとって、子どもが恐喝されいじめられた事件は、思い出したくもない出来事です。その数年後、心ならずもいじめ加害者を相手に裁判を起こすことになりましたが、事件自体を頭から追い払うようにして、子育てに専念してきました。
一方で夫は、神戸市教育委員会が事件をなかったものとして扱うことを許さず、西尾様ほか心ある方々に支えられながら、再検証を求め市議会に何度も陳情を繰り返してきました。陳情回数は13回、期間にして12年。ようやく設置された第三者委員会は「いじめはあった」としたうえで、このたび、以下のような事実を洗い出しました。
- 神戸市教育委員会は、当時の学校担当者に対し、いじめの隠ぺいを指示した
- いじめを認めず、それを理由とした転校を妨害した
- いじめをなかったことにするために、今に至るまで関係者が作成した書類を隠しつづけた
私自身は、これまで教育委員会の隠ぺい追及にいっさい関わりませんでした。夫が家でこの話題を口にしたときは、頼むからその話をやめてほしいと言ったときもありました。当時の校長や担任、関係者らの表情や態度を思い出すと、いまでも動悸が早くなり、総毛立ってしまう自分がいるからです。
「おかあさん、いじめられる子どもさんには理由というか、特徴があるんですよねぇ」
「おかあさん、僕の目にはお子さんがいじめられているという景色は映ってなかったです」
母親は弱く御しやすい存在だとして見くびられていたのでしょう、二転三転する矛盾だらけの言葉で「悪いのはお前ら親子だ」と洗脳すべく、数えきれないほど説教されました。
特に、転校妨害をうけた時期はひどかったです。いじめを理由とした転校を認めるな、と教育委員会から指示が出ていたのだとおもいます。あるときは同情の猫なで声を出し、あるときは恫喝し、あきらめさせようとしました。こちらは精神を病む一歩手前までいきました。ですが、子どもが受けた1年間にわたるいじめに比べればなんてことはない、と自分を励ましてふんばりました。
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神戸市教委はどれだけの家族を不幸に陥れれば気が済むのか
あんな卑劣な人たちが、今回の調査報告書によって、すぐ改心するとは思えません。近年の学校事故事件に対する教育委員会の対応を見れば、なおさらです。口先でこう言うだけでしょう。
「過去にこのようなことがあったことを真摯に受け止め、再発防止に努める」
いじめで学校に居場所をなくし、転校という手段さえうばわれ、絶望してこの世から逃げてしまう子ども多くいます。私どもの事件の後も、家庭が崩壊した例をたくさん見ました。
神戸市教育委員会は、いったいいくつの家族を不幸に陥れたら気が済むのでしょう。
ならば調査報告書の意義はどこにあるのか。それは、かつての私と同じ立場に追いこまれている親に、気づきを得てもらえる点です。事件が起こると、神戸市をはじめ大半の教育委員会は、必ずと言っていいほど、被害者をだまらせて事件をもみ消す方向に動きます。「悪いのはお前らだ」と洗脳されている最中に、「これは事件もみ消しのための方便ではないか」と頭の片隅でひらめくかもしれません。
また学校は、いい意味で一枚板ではありません。今回の教育委員会のやり口を知って、胸を痛めている学校関係者もいるはずです。このような事件が起こったら、隠ぺい指示に従わず、子どもを守り抜こう、とあらためて誓ってもらえることを願っています。私どもの家族は、そんな先生方に支えられてきました。
おかげさまで子どもは成人し、社会人として働いています。あらためて、教育委員会の意向に異を立て転校を受け入れてくださった小学校の校長や担任、その後成長を温かく見守っていただいた中学・高校の先生方に感謝をお伝えしたいです。
以上
お母さんは隠ぺい側の二次被害を受けている。洗脳するかのように「悪いのはあんただ」と何度も何度もそういうメッセージを刷り込まれてきた。
こうした手口で、心が折れてしまう保護者を私は大勢見てきたし、こんな馬鹿どもと付き合うのを止めて引っ越そうと勇気ある退避を選ぶ家庭もある。
被害者本人が、報道インタビューに答え、「両親には本当に感謝している」と答えていたことを考えれば、それがすべてにおける答えだともいえるだろう。
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未だに詭弁を弄し続け逃げまわる神戸市教育長
神教委児第314号令和5年5月18日付、教育長が被害側に発した文面にはこうある。
いじめの事実を認定するとともに、あまりに消極的な姿勢であったと言わざるを得ず、もっと真摯に徹底した調査を行うべきであったと考えております。不十分・不適切な対応があったことは、大いに反省しなければならず、深くお詫び申し上げます。
しかし、これは、被害側が組織的な隠ぺいを認め批判した第三者委員会の報告書に基づき、未だに反省の弁もその機会も通知しない教育長らに対して、「説明を求める要望」への回答なのである。そして、被害側は現在の最高責任者であり、報告が大きく報道されるまで虚偽答弁をするなどしていた教育長に一番はじめに説明してもらいたいと要望していた。
教育長文書はさらに続きがある。
まずは、窓口である教育委員会事務局児童生徒課がお会いし、お話しさせていただきたいと考えております。
つきましては、下記のとおり5月末までの対応可能な日を提示いたしますので、ご検討いただきますようお願いいたします。
その窓口は、児童生徒課の課長である。
簡単に言えば、
教育長 「謝る気はあるよ。でも、まずは窓口の担当者と話してよ。謝るのはそれからだからさ」
ということであろう。
もはや解体するしか再生の芽はない神戸市教委
被害側は市長に陳情を行っているが、ここには「教育委員会の再生」がある。
18年間の隠ぺいを続け、表では反省したふりをしつつも裏では被害側に「無くてもよいハードル」を用意するそんな醜悪な組織は、いったん解体しない限り、根っこも頭も腐っているから交換した方が早いということだろう。
実際に、真っ当に教育に向き合うまともな教職は多数いるのだ。18年間隠ぺい被害者や支援者である西尾さんを含め多くの被害者の声を受け止め、教育組織の再生を新たな人材で行ってほしいものである。
市教委が校長に指示。隠ぺい事件の端緒
神戸市18年間いじめ隠ぺい事件は、あまりに多くの問題があって、問題の中枢というところが見えづらくなっているように感じます。
私が見て最も問題というところは、そもそも本件の隠ぺいの実行は、市教委が校長に指示をしているというところです。
そして、転校妨害や被害側が悪いというような風評被害が起きたということです。第三者委員会の報告書にはこの点が詳しく記されていますが、市教委の主導で指示があったということです。
さらに脈々とこの隠蔽は引き継がれ、陳情に関する妨害のみならず市議会での虚偽答弁などで公としての動きを封じ込めようとして、ついに18年間の更新となったということです。
もはやだれが責任と言えば、全員と言える状態であり、組織として責任を取るとすれば、解体をしてこうした悪しき伝統が完全になくなるように再生する以外、道はないと思います。
本件は、教育委員会制度やその関連する法律などを含め、国として研究し、見直すべき事件だと思います。
この記事の著者・阿部泰尚さんのメルマガ
image by: 神戸市教育委員会