【金融政策と株価】量的緩和から脱却する時の相場の重大シグナルを見落とすな

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経済が失速した時には量的緩和が効くと米国が教えてくれた

『山崎和邦 週報「投機の流儀」』より抜粋

経済が失速したら蘇生させるのにいかに時間と犠牲を払うかを経済大国アメリカは、歴史上で骨身に沁みて知っている。そこで、08年末に導入した「伝統的金利政策」は旨く効かないとわかったら、FRBは「非伝統的な方法」で債券買い取り等を含め量的緩和を始めた。

これは株価・為替相場・債券利回り・銀行貸し出しなどのチャネルを使って米国民の雇用回復・賃金押し上げに努力してきた。

このFRBの「非伝統的方法」が、どれだけ大国の回復に効き目があったかを、米はQE1・2・3を通して顕在化させた。

世界に先駆けて中央銀行の役割を経済大国が示してきたことになった。そして今度は、「非伝統的」な「異常事態」から「正常事態への回帰」を図ろうとしている。QE1終了のとき、NYダウは約19%下げたし、QE2終了の時は約15%下げた。日本株は民主党政権下だったせいもあったが、もっと下げた。これらはあまり参考にならないであろう。日米ともに経済の実体が当時と大差あるからだ。

日本はバブル崩壊の後、経済収縮とデフレの長期化を世界に先駆けて示したが、今の非伝統的金融政策からの脱却は少なくとも米の何年か後になり、しかも米より大変であろうと思われる。その時、古典経済学やクルーグマンのような新型経済学がいかなる役割を果たすか、そのとき為替はどう動くか、株価はどう動くか、長期見通しは今のところ筆者に建てられない、と言うのが実情である。

だが、相場は相場に聞けと言う。思えば90年大発会から始まった70年ぶりの大暴落が、その後の金融不況と長期デフレとを象徴して市場が送っていたシグナルだったのだ。が、それを読みとったのは野村総研の高尾義一氏ただ一人『平成金融不況」(95年、中公新書刊)だけだった。しかも、それの副題は「いまだ中間報告にすぎない。本番のデフレはこれから始まる」という意味で「国際金融危機の中間報告」とあった。これを言う人は他に誰もいなかった。強いて言えば長谷川慶太郎氏の『東西冷戦が終わったから、これからは永遠にデフレです」であろう。これらの書とR.クー氏の『マンデー・ミーティング』の警告がなかったら、筆者も平成デフレで手痛い目に遭遇していたろう。

世の中には先の読める人がいるものだ。それと鬼面人を驚かすトンデモ本との区別は易しい。その人の実績を見ることだ。よく言う「What He Says」でなく「What He Does」を見よと、あれである。

そして、「トンデモ本」は常に出る。本当の危機が近づいたら筆者は「トンデモ本とホンモノとの区別」を本稿で従前のように無遠慮に書くであろう。一部の古い読者諸賢は「その毒舌が痛快だ」「わかりやすい」と評してくれたが。不愉快に思う読者もおられるであろう。それを気にしたら何も書けない。

誰が何を書いても何を言ってもいいのだ。それもまた市場現象だ。受け取る側に見識があれば済むことである。

 

『山崎和邦 週報「投機の流儀」』より抜粋
著者:山崎和邦(大学教授/投資家)
野村證券、三井ホームエンジニアリング社長を経て、武蔵野学院大学名誉教授に就任。投資歴51年の現職の投資家。著書に「投機学入門ー不滅の相場常勝哲学」(講談社文庫)、「投資詐欺」(同)など。メルマガ「週報『投機の流儀』」では最新の経済動向に合わせた先読みを掲載。
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