文化庁による旧統一教会への質問権初行使から9ヶ月あまり。そんな中、同教団を巡る極めて「きな臭い」ニュースが飛び込んできました。今回のメルマガ『詐欺・悪質商法ジャーナリスト・多田文明が見てきた、口外禁止の「騙し、騙されの世界」』では、かつて旧統一教会の信者だったジャーナリストの多田さんが、南米パラグアイの地元警察が教団敷地内の麻薬輸送滑走路を爆破したというニュースを紹介。その上で、今後信者たちが犯罪に巻き込まれる可能性を指摘しています。
旧統一教会敷地内の「麻薬輸送滑走路が爆破」という“きな臭い”ニュース
1.マスコミが知らない教団の偽装勧誘の実態
「旧統一教会側の施設利用制限、どこまで良いのでしょうか?」の記事について。「どこまで」と読者に問う前に伝えるべきことがある
今月16日に「旧統一教会側の施設利用制限、どこまで良いのでしょうか?」(西日本新聞)という記事が掲載されました。
このなかで「旧統一教会の関連団体に対しての公共施設の利用を許可しない」との判断を自治体がしたことに対して是非を問う形になっています。
その対象には、プールや体育館といったものも含まれていて「布教の場になるとは考えにくい施設」との読者の声も載せています。そして「皆さんは、どう考えますか」との問いになっています。
しかし「どこまで良いのか」と問いかけている時点で、旧統一教会の過去のしてきた偽装勧誘の実態についての理解不足を感じています。
一般の方であれば、教団による高額献金や布教活動に警戒心を抱いているはずですから、そもそもこうした声をわざわざあげないと思います。
つまりこの声自体が、教団の関係者が疑われますので、それの声をもとにした記事もどうかとは思いますが、すでに世に出た記事ですので、あえて私もこれに乗っかって話したいと思います。
2.スポーツイベントも偽装勧誘の舞台に
これまで旧統一教会は長年、正体(教団名)を隠して布教(偽装勧誘)をしてきた団体であり、それにより知らぬ間に教義を刷り込まれて信者にさせられて、高額な献金を強いられてきた人が多くいます。
今、全国統一教会被害対策弁護団が集団交渉を行っていますが、そのなかには正体(教団名)を隠されて勧誘されて、信者になった方も多くいます。
しかし教団本部は関りがないとして、すべてを信徒会なる団体に任せて、被害者へ返金要請に充分な形で応じていません。
つまり正体を隠した伝道により被害に遭った人たちに対して真摯に向き合っておらず、反省をしていないということになります。
2009年にコンプライアンス宣言で「正体隠しの伝道をしない」ことを信者に徹底してきたといいますが、それは表向きだけのことで、教団本部の返金に応じようとしない姿勢から、偽装勧誘についての反省のかけらも見えない状況といえます。
つまり、現実として反省や改めの姿勢をみせていないのですから、今後も偽装勧誘が起こり得る可能性はあります。
そうした行為をしていきた団体に公的施設を貸し出せば、今後、偽装勧誘などの布教の場となる恐れは十分にあるわけです。
記事内には、市民からの「『スポーツなどをしながらどう勧誘するのか。教団の関連団体とはいえ、やり過ぎではないか』との見解が聞かれる」といったコメントを載せています。
しかし私は1987年に偽装勧誘を受けて信者になった一人ですが、信者たちが開催するバレーボール大会に誘われて、それがきっかけに信者になりました。
教団の手口として、スポーツをしながら教団関係者との人間関係を作り、本人の個人情報を聞き出して、逃げられない気持ちにさせながら布教活動をするのです。
「皆さんは、どう考えますか」と問いかける前に、しっかりと元信者などの言葉を通じて、これまでに教団が行ってきた偽装勧誘の実態もしっかりと伝えて頂ければと思います。
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3.「教団敷地内の麻薬輸送滑走路を爆破」というきな臭いニュース
海外から、教団の購入した土地に関するきな臭いニュースが飛び込んできました。
すでにヤフーニュースにもしていますので、そちらを参考にして頂ければと思いますが、ブラジル日報によると、昨年、南米パラグアイの北部のチャコ地域で、地元警察が麻薬取締りのために、旧統一教会の敷地内の麻薬輸送の滑走路を爆破したというのです。
● 南米・旧統一教会敷地内の不穏な滑走路爆破ニュース 今も続く、教祖提唱のニューホープファーム宣言の影響
パラグアイの北部の「レダ」にある8万ヘクタールの土地は文鮮明教祖の指示もあり、旧統一教会が購入したもので、1999年9月以降、教団の関連団体・南北米福地開発協会を中心に20年間以上、継続して開発を進めてきています。
記事では、作戦対象の5本の滑走路のうち4本が旧統一教会の敷地内にあったことです。
この地域は麻薬密売を行う国際的犯罪組織による支配が拡大しているところで、旧統一教会や信者らが関与している証拠は見つかっていないとのことですが、自分たちの敷地内で麻薬輸送が行われたことが本当であれば、非常に危惧される事態です。
4.2022年7月、地球の裏と表で起きていた統一教会がらみの大事件
注目するのは、この麻薬輸送の掃討作戦が行われた日が22年7月6日という日付です。
当初、安倍晋三元首相の銃撃事件もあり、旧統一教会の問題を重く見て、地元警察が麻薬掃討作戦を行ったのかと思いましたが、違っていました。銃撃事件は7月8日11時30分頃ですので、この掃討作戦の2日後に起きています。
パラグアイと日本との時差は13時間ありますから、実際には1日ほどしか変わらないことになります。
まさに地球の裏とオモテで、旧統一教会がらみの問題が同時に噴出していたわけです。
日本では銃撃事件をきっかけに、旧統一教会と自民党を中心にした政治家とのつながりが問題となり、その後、自民党は教団との関係断絶を打ち出しました。
数々の報道を通じて、政治家と旧統一教会のルートが遮断されたわけです。
しかしながら政治家と教団のつながりは、パラグアイの麻薬輸送ルートの滑走路のように目に見えるものではないので、完全になくすのは厄介ではないかと思います。
今後、心配されるのは、信者らがかかわって逮捕されないかとい懸念です。
詐欺組織が、日本人旅行者などを狙う手口に「荷物を運んでくれたら、お金をあげる」と荷物を渡されて、それが薬物と気づかぬままに仕立て上げられるものがあります。
国内の闇バイト募集に調査電話をしても、薬物の運び屋の仕事もあるという話をたびたび聞いており、彼らは犯罪知識に疎い、手足になる存在を常に探しているからです。
いずれにてしも、近くに麻薬地帯が存在するとすれば、そうした犯罪に対して充分な警戒をしておかないと、犯罪組織の正体を隠された行為により、犯罪に巻き込まれるリスクは高くなるわけです。
犯罪組織の恐ろしさを取材を通じてみてきたものとして、こうした組織が身近に存在していることは大きな懸念であり、できるならば、日本人信者をこうした危険にさらさないためにも、この地からの撤収を願うところです――(この記事はメルマガ『詐欺・悪質商法ジャーナリスト・多田文明が見てきた、口外禁止の「騙し、騙されの世界」』2023年8月28日号の一部抜粋です。続きは、ご登録の上お楽しみください、初月無料です)
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image by: Sun Myung Moon, CC BY-SA 4.0, ウィキメディア・コモンズ経由で