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「処理中の汚染水」を「海洋投棄」という真実を伝えない日本メディアの大問題

8月24日13時、海洋放出が開始された福島第一原発の処理水。政府は安全性を強調しますが、漁業関係者らからは不安の声が上がっているのが現状です。この問題を論じているのは、ジャーナリストの内田誠さん。内田さんは自身のメルマガ『uttiiジャーナル』で、今回の国の行為は「処理水の海洋放出」ではなく「処理を始めた汚染水の海洋投棄」にほかならないとの見解を示すとともに、真実を伝えない日本メディアの姿勢を問題視しています。

「処理水」ではなく「処理を始めた汚染水」、「海洋放出」ではなく「海洋投棄」という言葉の問題

東京電力の福島第一原子力発電所の事故から10年以上経って、いわゆる処理水について海洋放出をするということになりました。政府はそういう決定をしました。もうその決定からちょっと経ちますけどね。

でも、それっていうのは非常におかしなことで、福島県の県漁連と政府および東電の間でも、話し合いで国民及び県漁連ですけど、漁師さん側から見て納得できないような形で放出する、納得しないのに放出をすることは無いという約束があって、それを今回破るという面が一つ。

それから、まあ、いろいろ国際的な反響を生んでるっていうことはちょっと置いておきますけど、これって、一つは言葉の問題がありますよね。もうメディアはこぞってみんな「処理水」「処理水」って言ってるんだけど、おかしいでしょ。処理水っていう言い方をすると、つまり処理をし終えた、完全に処理しきった水っていう感じがしますよね。

でもストロンチウムなどは完全には取りきれてないんですよね。基準よりは低いからいいんだっていうことになってるだけで、事故によって、事故の…何て言うんでしょうね、事故によって生まれた汚染された水であって、確かに処理は始まってるから、その処理をし始めた水ではあるんだけれども、処理水と言ってしまうことには問題がある。あくまで「処理を始めた汚染水」っていう風にまず考えなきゃおかしいということが一つ。

それと、言葉の問題で言うともう一つあって、「海洋放出」と言いますよね。でも、まあ基準云々、濃度の基準というのは正直よくわかんないですけれども、海に本来流すべきでないものを流すわけでしょ。これ「海洋投棄」ですよね。おそらく法律用語として「投棄」じゃないっていう抗弁を官僚の皆さんはなさるんだろうと思いますけど。

だってね、今現在タンクがあるところから相当沖合の方まで引っ張っていって、しかもそれをわざわざ薄めてですね、まあそれは風評被害を防ぐためだっていうのかもしれないけれども、そんなことをしなきゃいけない水をですよ、わざわざ海の中に捨てる。放射線の量で言って数百兆ベクレル、薄めようがなにしようが、それだけの放射性物質を海中に投棄するわけですよね。だからこれは、アルプスという機械によって処理を始めた処理中の汚染水を、「海洋投棄」する、そういう話だと思うんです。

でもこんな風に表現するメディアってないですよね、おそらくね。まあメディアこぞって「大丈夫だよ」「安全なんだよ」っていう、もちろんそういうふうに直接には言わないかもしれないですけれど。そういう気分を醸成するのに役立つような用語法を、徹底して取っているのが現在のメディアのあり方だと思います。やっぱりこれはとてもよろしくないことですよね。

それから、風評被害が心配なんだっていう形でこの問題をまあある種まとめ上げていくっていう感じになってるんだけど。先ほどもちょっと言ったようにこれって当初は800兆ベクルっていう数字はどっか出てましたけど、とてつもない大量の放射性物質を環境外に放出するということじゃないですか環境内ね。これによって何がどう起こるかって、多分誰にもわからない世界ですね。しかも30年間やるって言ってるんだよね。まあ少しずつやるからなんでしょうけど。30年の間に廃炉が済んでいるわけではないから…。

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廃炉に40年ぐらいかかると言ってましたっけ。40年掛かると言ってる人たちの話を、じゃあ41年目にはもう廃炉になってるんですねっていう風に信じることはできないですよね。おそらく締め切りはどんどんと伸ばされていくでしょう。それもすでにそうなってますからね。それはもう十分想像ができる、しかもね、岸田さんの言動っていうのは総理大臣の言動なんだけれども、彼を総理大臣にするにあたってそのスプリングボードになった自民党の総裁選においては、もっとはるかに実際にやっていることよりもはるかにリベラルな政策を打ち出していたし、そういう意味では実際に総理になってからはそうしたものの撤回の連続。

しかもまあ広島出身ということで、核の問題でも大きな前進をするかと思いきや、G7でのいわゆる広島宣言、これは一般に批判されているものなんで私はちょっとへそ曲がりで、「でもあれだけ大勢の世界の首脳にですね広島の資料館を見せるっていうのは意味があったんじゃないか」っていう意味合いで発言しましたけれども、その後の行動を見てると、結局何だったんでしょうねっていうことになった。これからはおそらく増税ということをどこでどう言い出すかっていうことを勘案しながら、いずれどっかで選挙にならなきゃいけないんで。またどこかで大嘘つかれるかもしれないっていう感覚をみんな持っているじゃないですか。

マイナカードについてもね、もうあれは破綻しちゃったのはよくわかりますよね。だって3年後に健康保険証を全部廃止するって言ったのはもう撤回しましたね。結局、「廃止するんだけどカードがない人が保険の恩恵に預かれないと困るので資格はありますよという証明書は出して差し上げます」って。これって廃止できないってことだよね。そんな政権のもとで、原発の事故によって生み出された汚染水の処理に関してじゃあ今からやりますよと言ったことを30年間、これからですよ、やり続けることができるか。もちろん30年間岸田さんが続けるわけじゃないでしょうけれども、少なくとも岸田さんの世の中の間にね、言った通りやってくれるんですかっていうことも不安に思われている。

で、よく考えてみると、これってその数百兆ベクレルの放射性物質を海洋に海中に投棄する、これって原発事故のあり方そのものなんじゃないの。原発事故っていうのは、原子力発電所が何らかの事故に見舞われることによって、その発電によって常に作り出されている放射性物質を大量に環境中に放出する、これが事故の本質でしょ。

まあ言ったら、それを政府がこの段階でやろうとしてるって事ですよ。だから逆に言うと、事故はまだ全く終わっていない。事故はまだ継続しているということ。だって燃料のデブリ一つ、どうなってか分からない。一部映像も捉えつつありますけれども、そこに水をぶっかけて日々生み出されている汚染水、それをストロンチウムなんかを除去しその他の核種のものも除去してトリチウム、基本的にトリチウムばっかりのものになりましたよと、一部嘘なんだけどね、そういう風に言って環境中に出すわけでしょ。だからやっぱり事故は収束していないんですよ。この事柄っていうのは事故の延長線上に起こっている、そのことをとりあえず、確認しておきたいなと思いました。

(『uttiiジャーナル』2023年8月27日号より一部抜粋。全てお読みになりたい方はご登録ください)

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image by: 首相官邸

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ニュースステーションを皮切りにテレビの世界に入って34年。サンデープロジェクト(テレビ朝日)で数々の取材とリポートに携わり、スーパーニュース・アンカー(関西テレビ)や吉田照美ソコダイジナトコ(文化放送)でコメンテーター、J-WAVEのジャム・ザ・ワールドではナビゲーターを務めた。ネット上のメディア、『デモクラTV』の創立メンバーで、自身が司会を務める「デモくらジオ」(金曜夜8時から10時。「ヴィンテージ・ジャズをアナログ・プレーヤーで聴きながら、リラックスして一週間を振り返る名物プログラム」)は番組開始以来、放送300回を超えた。

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【著者】 内田誠 【月額】 月額330円(税込) 【発行周期】 週1回程度

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