これまでに経験のない速度で進む我が国の少子化。先日政府はその原因分析を含む、2023年度の年次経済財政白書を発表しました。この問題を論じるのは、健康社会学者の河合薫さん。河合さんは自身のメルマガ『デキる男は尻がイイ-河合薫の『社会の窓』』で今回、少子化に本気で取り組む気のない日本政府の姿勢を諦念混じりに紹介するとともに、これまでの制度に拘らない「結婚の抜本期な改革に向けた議論」の必要性を強く訴えています。
プロフィール:河合薫(かわい・かおる)
健康社会学者(Ph.D.,保健学)、気象予報士。東京大学大学院医学系研究科博士課程修了(Ph.D)。ANA国際線CAを経たのち、気象予報士として「ニュースステーション」などに出演。2007年に博士号(Ph.D)取得後は、産業ストレスを専門に調査研究を進めている。主な著書に、同メルマガの連載を元にした『他人をバカにしたがる男たち』(日経プレミアムシリーズ)など多数。
「結婚」とは何なのか?「夫婦」とは何か?制度とリアルの狭間で
家族のあり方、制度のあり方について抜本的に考える必要がでてきたようです。
日本経済を分析し、課題などをまとめた2023年度の経済財政白書が公表され、年収により未婚率に差があり、その格差が4倍にものぼることが明らかになりました。
白書では日本の少子化の原因について「女性人口の減少」「非婚化の進行」「夫婦の出生率の低下」が三重の要因となって進行していると分析。このうち未婚化が進む背景として、賃金水準の低さや男女の賃金格差が深く影響している可能性を指摘しました。
職に就いている30代男性の所得と未婚率の関係を分析したところ、所得が低いほど未婚率が高く、200万円台の層は64.7%、100万円台で76.3%が未婚と壊滅的な状態に。一方で、年収800万円以上の高所得層では17.3%、600万~700万円台で21.4%と未婚率の低さが際立っていたのです。
所得の低さが未婚につながるリスクは10年以上前から認められていましたが、今回は所得階層によって最大4倍超の差があるとして、「構造的な賃上げの実現などで若年層の所得向上を図ることが結婚を増やすのに重要になる」とまとめていました。
構造的な賃上げ…。いったい何度この言葉を聞いてきたでしょうか。非正規と正社員の賃金格差は何度も指摘されてきましたし、男女の賃金格差が大きいことが「女性が高所得の男性を好む傾向」を強めているという指摘も繰り返されています。つくづく「日本は本気で少子化をなんとかしようと考えてないのだなぁ」と暗澹たる気分になります。と同時に「非正規の賃金が低いって?そりゃあ仕方ないでしょ。自己責任だよ」という認識も、日本社会に深く根を下ろしてしまったのです。
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実に悲しいことではありますが、これが日本の現実です。“異次元の少子化”対策は、票集めのためのバラマキであり、同一労働同一賃金がまったく実現せず、非正規が低賃金労働者であり続けるのも、いわば票集めなのでしょう。規制を強めれば経済界から反発をくらいますから。目先のしあわせを追い続けている限り、「未来の大人」は確実かつ想定を超える速さで減りつづけます。
ならばせめて、同性・異性に関係なくパートナーとして法的に認めるとか。婚外子を認めるとか。抜本的な改革にむけた議論をしてほしいです。
フランスでは「法律婚」「PACS=連帯市民協約」「事実婚」の3つのカタチがありますし、ドイツでは「パートナーシップ制度」があり、フランスのPACSと同じで、同性でも異性でも利用できます。ベルギーでも「合法的同居」が認められるなど、多くの欧州諸国で「これまでの結婚制度」に拘らない、第2、第3のカタチを法制化しているのです。
日本は「選択的別姓」すら認めていないので、つくづく日本って…ですよね。
とはいえ、とにもかくにもこのままでは「日本の自殺」です。みなさまのご意見、お聞かせください。
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