13日の2時よりおこなわれたアップルの新製品発表会。この中で注目を集めているのがiPhoneなどに搭載の「第2世代のUltra Wideband chip」です。内蔵されたAirtagにより「探す」アプリから簡単に方向と距離がわかるという優れものですが、メルマガ『石川温の「スマホ業界新聞」』の著者で、ケータイ/スマートフォンジャーナリストの石川さんは、これを使った機能は日本では規制があって利用できないようになっているというのです。石川さんは、日本の規制によって使えないことで、「また日本のアップルユーザーは世界から置いていかれる」として、総務省とアップルに早急の見直しを求めています。
日本のiPhoneユーザーがまたも世界から置いていかれる?
今回のアップル新製品、無線関連で注目したいのが、第2世代のUltra Wideband chipを搭載している点だろう。
Apple Watch series 9やUltra 2、iPhone 15シリーズに搭載されている。
動画プレゼンでは、マーケットにいる友人を探し出すのに、Ultra Wideband chipによって、具体的な方向や距離がわかって、すぐに見つけられたというシーンを紹介していた。
実際、Ultra Wideband chipが内蔵されたAirtagにより、自宅のなかで、鍵や財布などが見つからなくても、「探す」アプリから簡単に方向と距離がわかり、すぐに見つけられて助かったということが多い。まさに、そんなことが出先でも可能となるイメージだろう。
個人的には子どもにiPhoneもしくはApple Watchをつけさせておけば、ショッピングセンターやテーマパークで迷っても、すぐに見つけられて便利かも、と思った次第だ。
しかし、ハンズオン会場にいたスタッフによると「第2世代のUltra Wideband chipを使った機能は日本では規制があって利用できないようになっている」とのことだった。
アップルが革新的な機能を載せても、日本の規制によって使えないということが度々あるが、またしても、日本のアップルユーザーは世界から置いていかれることになってしまった。
具体的にどんな規制があるのかは、現場では確認できなかったが、ササッとググってみたところ総務省のホームページには「UWB無線システムの屋外利用時の運用制限について」というページが存在し、「ローバンド及びハイバンドの高帯域(9.0~10.25GHz)は屋外での利用は禁止されています」という文言を見つけることができる。
アップルが言うところの「第2世代のUltra Wideband chip」がどの周波数帯を使っているかは当然、謎なだけにこの運用制限が該当するかは不明だったりする。
当然、総務省としては、他の機器への干渉を避けるために運用制限を設けているのだろうが、すぐにでも見直しに着手すべきだろう。
一方で総務省はハイバンドの低帯域(7.25-9.0GHz)は屋外での利用を認めている。アップルとしても、もうちょっと日本の事情を組んだ上で、第2世代のUltra Wideband chipにおける仕様を考慮してもらいたかった気もする。
ただ、いずれにしても、日本の電波ルールがガラパゴス過ぎることで、これまで国民にとって、様々な弊害が出てきているのも事実だ。
総務省は、端末の割引上限額を決めている暇があったら、もっと、世界と協調した電波行政を心がけるべきではないか。グローバルスタンダードに近い電波利用であれば、海外からのデバイスが日本に輸入され、国民の生活は豊かになる。一方で、日本のメーカーは世界にデバイスを出荷しやすくなる。
政府は「通信分野で国際競争力を高める」と豪語しているが、まずはこうした取り組みから始めるべきだろう。
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