当サイトでもこれまで二度に渡り取り上げてきた、神戸市18年間いじめ隠蔽事件。その悪質さは数々の隠蔽事例の中でも類を見ないと言っても過言ではありませんが、被害保護者が入手した数々のファイルは神戸市教育委員会及び学校サイドの悪意を証明して有り余るものでした。今回のメルマガ『伝説の探偵』では、現役探偵で「いじめSOS 特定非営利活動法人ユース・ガーディアン」の代表も務める阿部泰尚(あべ・ひろたか)さんが、被害者の父親が学校での事故や事件を語るシンポジウムで発表したそれらのファイルを紹介しつつ、「隠蔽の5つの手口」を解説。さらに全国で頻発するいじめの隠蔽との共通点を指摘するとともに、「全国的いじめ隠蔽マニュアル」存在の可能性を疑っています。
被害保護者を“モンペ”に。神戸市18年間いじめ隠蔽事件の卑劣
「神戸市18年間いじめ隠ぺい事件」は2度に渡って伝説の探偵でも取り上げてきたので、ご愛読の読者の方はご存じだろう。
2023年9月27日「全国学校事故・事件を語る会」大集会シンポジウムで本事件の保護者であるお父さんが全国的な隠ぺいマニュアルがあるのではないかと発表をした。
実際、この全国的なマニュアルがあるのではないかというのは、様々な被害者が感じていることであり、隠ぺいの手口などが報道されると驚くほど、共有事項が見つかるという奇怪な状態である。今回はお父さんの許可を得て記事化したと同時に、同じ隠蔽被害に遭っている方に手を挙げてもらいこの共通項をこれから特集していきたいという趣旨である。
■神戸市18年間いじめ隠ぺい事件の過去の記事
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積極的に被害側への嫌がらせを続けた学校と市教委
いじめの概要としては、2005年、当時小学5年生だった児童が13名の加害児童から、「きしょい」「ウザイ」「死ね」などの暴言、K-1ごっこと称し殴る蹴る廊下を引きずり回すなどの暴力、もの壊しなどの陰湿ないじめ(被害額およそ10万円)金銭恐喝(被害額およそ50万円)などを受けたいじめ事件である。
このいじめ事件についておよそ15年後、第三者者委員会が設置された。
加害者の一部はいじめを認め謝罪、認めなかった3名は民事提訴し被害側(原告)勝訴、学校はいじめを認め教育委員会に報告、第三者委員会もいじめと隠蔽を認めるも、神戸市教育委員会だけがいじめを認めないという奇怪な事件である。
「神戸市18年間いじめ隠ぺい事件」と呼ばれている。
特筆すべきは、学校と市教委が積極的に被害側への嫌がらせを続けた事だろう。
学校による被害者への嫌がらせとして、転校妨害、被害者の風評被害を黙殺するなどがあり、神戸市教委については、裁判所に虚偽文書を提出、神戸市議会にて虚偽答弁をしたなどがある。
また、唯一、未だにいじめを認めない神戸市教育委員会は、第三者委員会の報告書に難癖をつけ、根拠がないなどと吠えているが、証拠は揃っており、これが世の中にまかり通るのであれば、何が真実かわからないと言えるだろう。ちなみに、第三者委員会の報告書は、様々な専門家が良く調べてあるほぼ完ぺきな調査報告書だと評価している。
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発見された「なかったはず」のダンボール4箱分の資料
さて、隠ぺいの手口が明らかになったキッカケは驚くべきことであった。第三者委員会の設置からこれまで何もないと言っていた資料が段ボールにして4箱分も出てきたのだ。
何も無いはずが、段ボール4箱分の資料とはあまりに驚きである。
神戸市18年間いじめ隠蔽事件で使われた5つの代表的な手口
神戸市18年間いじめ隠ぺい事件では、下記のような代表的な隠ぺい手口が使われた。
- 重要な証拠は不存在と言って隠す
- 自分たちの都合の良い虚構のストーリーを作りあたかも事実のように偽の証拠を作成する
- 被害者の保護者をモンスターペアレンツだとして孤立させる
- 情報公開請求をしても都合の悪いところをマスキングする
- 謝罪のフリをして、被害側に謝罪しない。終わったことにする
例えば、いじめで酷い状態になると、被害者本人は、少なからず、これを話すということに強いストレスがかかる。一緒に過ごす親であれば、その状態がいつもの我が子とは明らかにわかるわけだから、見ず知らずの大人が聞き取りをするという段で、安全配慮を求めるのであるが、隠ぺいをする市教育委員会などは、一切の配慮をしないのだ。
これは学校も同じで、目の前でいじめ行為があり、それを目撃していたのに、助けもせず放置してその場を去ったような教師が改めて被害者本人に聞き取りをしたいと言っても、被害者はその教師を信用できないと思うだろう。
通常そうした場合は、その教師ではなく比較的信頼がある教員を聞き役にしたり、保護者の同席を許可するなどして話を聞いていくための対応を積極的に行うものだが、そのつもりがない学校は、配慮はしないで説得を試みるのだ。
そうして下記のようなロジックで、いじめが無いということにしてしまう。
被害者の保護者がこどもへの聞き取りを拒否している→本人に聞き取りができず調査ができない。→いじめが確認できない 結果、「いじめが無い」とする。
目立つ部分に「不存在」と書かれた資料
さて、隠ぺいの手口を詳しく見ていこう。
1.重要な証拠は不存在にしてしまう
神戸市18年間いじめ隠ぺい事件では、無いはずの資料が段ボール4箱分も出てきたのは前述の通りだが、被害保護者はとんでもない記載を見つけてしまうのだ。
「不存在」確かに資料の上部に目立つようにそう書かれている。
つまりこの資料は不存在という指示なのだろう。仮に開示請求をされても「当該の資料は存在しません」と行って開示しなければいいのだ。
こうした「不存在」手口で、4箱分隠したのであれば、隠ぺいのために職員は動いたということになる。
2.3.自分たちの都合の良い虚構のストーリーを作りあたかも事実のように偽の証拠を作成し、被害保護者をモンペに仕立てる
隠蔽をする教育委員会は、自分たちに都合の良いいじめなんてありませんでしたというストーリーを作るものだ、そして、あまりに酷いところでは、その虚構のストーリーを構成する証拠すらも偽造してしまう。
市教委作成の資料では、被害者の母親が勝手に作文を学年集会で読んだと記載しているが、実際は休んでいる被害児童の代わりにみんなに宛てた手紙を母親が代読したのであり、これは許可があってやったことなのだ。学校作成の報告では、良き学びになったと評価されている。
つまり、市教委は学校報告を受けつつ、これでは都合が悪いと考え虚構のストーリーを作り、被害保護者がルールを守れない感情的な人なんだと印象つけようとしたわけだ。
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神戸市教育委員会に不都合な部分に施されたマスキング
さらに偽造はある。
これは情報開示によって出てきた資料とのことだが、あるはずがない文書なのだ。
事件は18年前のことだ。『女王の教室』『電車男』『ごくせん』『ドラゴン桜』がドラマでやっていたころ、学校の職員室にはパソコンは数台しかなかった時代のこと、パソコンが使えない教員は多くいたという背景があり、当時の担任はパソコンが使えなかったのだが、いじめが起きる1年前から記録をつけていたというパソコンで作った44頁における被害児童についての記録が市教委から出てきたのである。それもこの記録は被害児童にのみ作られ、その他児童については作られていない。
4.情報公開しても都合の悪いところはマスキング
マスキングについては主に個人情報を黒塗りすることになるが、市教委の隠ぺいに都合の悪い部分をマスキングして自分たちの主張の整合性を保とうとする。
マスキングがない資料を見ると、PTAについての話であり、特に個人情報というものではない。この内容にマスキングがないと不都合なのは神戸市教委のみで、学年集会で被害者の母が作文を代読したことが何の許可もなく突然読みだしたとしたい側だけなのだ。真実は、校長の許可の下、プログラムされていたことであるが、真実を隠したい隠ぺい側の都合でマスキングをしてしまうわけだ。
5.謝罪したふり
よくテレビで教育長などが謝罪をして頭を下げる映像があるが、神戸18年間いじめ隠ぺい事件においては、神戸市教委はマスコミに謝罪を前提とするとだまし討ちをして、前撮りという記者会見の前に写真を撮るというよくあるメディア対応をして謝罪をしているよな写真を撮らせて、実際の被害者との面談では一切の謝罪をしなかったのだ。もちろん、被害者には今もなお謝罪はしていない。
これら5つの隠ぺいの様子は、他のいじめ事件でも良く見受けられる。
例えば、山梨県北杜市の被災者いじめでは、情報公開制度を利用して開示請求をしたところ、事実とは全く異なる報告書が出てきたり、第三者委員会の名簿に黒塗りをして誰なのかわからない状態で許可を取り付けようとするなど、とんでもない状態が続いていた。
和歌山県海南市教育委員会では、記者さん達の取材が入っても虚偽回答ばかりを続け、メディアの間で、これはおかしいぞとなった。
静岡県湖西市でも、大阪でも同じような教育委員会や学校側の隠ぺい工作はあったことが確認されているのだ。
さて、神戸市18年間いじめ隠ぺい事件で行われた隠ぺいについては、動画が上がっているので、ぜひとも皆様には観てもらいたい。本記事では取り上げていないAIからの回答などもあり、率直な当事者の思いもわかる。
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「一般の共通認識」が通じぬ教育機関
いじめの隠ぺい、学校の事故の隠ぺいなど教育機関が行う隠ぺいは様々だが、率直に思うのは、隠ぺいは「ついうっかり―」のレベルではない故意によるものだ。やろうとおもってやる、何もなかった、特に問題ないのに親と被害者が騒いでいるんですとしたいなど目的があってやっていることだ。
こういう者は、実行者と指示した者など全員処分していいのではないかと思うのだ。少なからず、不正であろう。公務員ならば、あるまじき行為であろうし、これが処分対象にならないという意味もわからないし身内に甘過ぎはしないかと思うのだ。文書偽造は重大な違法行為であるというのが一般の共通認識のはずだ。
ただこういうことを書くと、一部の支援団体と御用側のお歴々、そこに忖度する文教族と文教族になりたい大先生方とゴマをすらないとネタすら取れない物書きの方々から大批判を受けるのだ。実際、私は一緒に活動したことがある団体の長が、被害者支援から被害側攻撃へと変節していく様子を垣間見た。権力にすり寄り補助金や助成金、団体の地位を得るためには仕方がないのだそうだが、敢えて言う。
事実を目的のために捻じ曲げ隠蔽という不正を働いたものやそれを指示した者は、処罰の対象となるのは当然の話であり、これを自らの地位や利害のために見なかったことにするのは、ほぼ同罪である。
ただし、いじめ防止対策推進法には処罰規定がない。私はこの立法に関わった専門家に話を聞いたことが何度もあるが、そのときみな口を揃えていったのだ。
「こんなに腐っているとは思わなかった」
想定外に腐っていたことがわかったのが今なのだ。
いじめ防止対策推進法から10年の今、もういいんじゃないか。もっと厳しく襟を正さなければならぬ真の法律に改正させても。
■お知らせ
いじめ被害者の方、その保護者の方々で同様の隠ぺいがあったという方は、共通項についてこれから特集を行いますので、ぜひ、阿部までご連絡を頂ければ幸いです。
他の事件でも隠蔽を主導していた神戸市教委
「神戸市18年間いじめ隠ぺい事件」はいじめ事件史の中でも極めて凶悪かつ組織の闇がある事件だと思います。
確かに教育委員会制度や全国にある教育委員会の中には真っ当にこどもたちのためのみならず、地域の教育や文化などをしっかり守っているところもたくさんあることは、私はよく知っています。そして、しっかり真っ当な人たちが、こうした闇ばかりの組織をみて、同じにしないで欲しいと思うのもよくわかります。
もちろん、同じではありません。ですから、こうした事件の際はできる限り私はまともなところもあるのにと付け加えています。
さて、神戸市18年間いじめ隠ぺい事件では第三者委員会によっても「隠ぺいの事実」が強く指摘されました。実は神戸市においては他の事件でも教育委員会は隠ぺいを主導していることが新聞報道などでも明らかになっています。垂水の「先生も腹くくってください」事件です。いじめ重大事態や第三者委員会がいくつも設置されて、教育行政側が隠ぺいをしている様子がよく報じられる地域であることはニュースを収集して分析していても明らかです。
しかし、同様に隠ぺいが起きている地域は多くあり、確かに共通している隠ぺい手法があります。今回取り上げた5つの代表的隠ぺい手法はまさにその典型です。
肌感覚では確信があっても、バラバラに報じられるもので数を数えて集計しても、完全なる共通項だとするには、専門的な調査と統計と言えるところまでエビデンスを揃える必要があります。ですので、この隠蔽共通項については特集として取り扱い、本誌を通じて、広く事例を取材し、実地検証することにしました。
確かに私は取材や調査などを通じ、隠蔽被害の当事者をたくさん知っていますが、まだ知らない事例もあります。もしもあなたが当事者である場合や、同様の隠ぺいを1つでも受けた場合は私までお知らせください。
この記事の著者・阿部泰尚さんのメルマガ
image by: 伝説の探偵