生活保護制度やその受給者を侮蔑する“ナマポ”という言葉。SNSなどでよく見かける表現ですが、そもそも、なぜ生活保護は「恥ずかしいこと」とされているのでしょうか?これに関して、「生活保護は国民すべての権利であり、本来、驚くほど受給のハードルが低いもの」と指摘するのは、元国税調査官で作家の大村大次郎さん。大企業や投資家ばかりを優遇する日本政府の失政が貧困の原因である以上、私たちはいざとなれば、誰もが堂々と生活保護を申請すべきだと提言します。(メルマガ『大村大次郎の本音で役に立つ税金情報』より)
※本記事のタイトル・見出しはMAG2NEWS編集部によるものです/原題:知って損はない生活保護の基本ルール
元国税調査官が生活保護の申請方法を“宣伝”する理由
今回から数回に分けて、生活保護に関する基本、「どういう人がどういう手続きで生活保護を受けられるか」についてご説明したいと思います。
「バカにするな!俺は生活保護なんて関係ない」と思ってしまった方もいると思います。まあ、少し私の話を聞いてください。
今後の日本では、年金だけでは到底、老後の生活はできず、国のほうから「2000万円以上のお金が必要」などと提言をしています。
しかも多くの人が2000万円あっても、必ずしも十分とは言えないのです。
我々がもらえる公的年金はかなり少なく、多くの人が生活保護以下の水準しかもらえない可能性があります。
こういう日本社会になってしまった一番の要因は、国の失策です。
このメルマガでもさんざん述べてきたことですが、少子高齢化社会が到来することは、半世紀前からわかっていたのに、政府が何の手も打たないどころか、むしろ子育て世代に重税を課してきました。
しかも、わずかな予算で解決できる待機児童問題を20年以上も放置し続けたり、公立大学の授業料を10倍以上に激増させるなど、「少子高齢化をわざと加速させた」としか言えない政治をこの数十年間行ってきたのです。
その一方で、大企業や投資家には減税につぐ減税です。
【関連】トヨタという“日本の病巣”を国税OBが告発! 株価以外すべて破壊「日本人の給料を下げ続けたトヨタ」失われた30年の真実
我々が頑張って払った税金は、大企業や富裕層の減税の穴埋めに使われてきたのです。
もう無能な国に遠慮するな。生活保護は国民すべての権利だ
そんな国に対して、もう何も遠慮する必要はありません。
自分たちの権利は、しっかり享受していきましょう。
生活保護というのは、国民の誰しもが持つ当然の権利です。一定以下の収入しかない人は、誰でも受給できるのです。
しかし、現在、日本人で生活保護以下の収入の人の7割くらいは、生活保護を受給していないと見られています。
日本人は、社会に迷惑をかけたくないという心情があり、なかなか生活保護を申請できないのです。
そんな遠慮は、もうこの国には必要ないのです。
今は、「生活保護などは関係ない」「年金もそれなりにもらえるはず」と思っている人でも、今後、日本社会はどうなるかわかりません。
円安が止まらず物価上昇が続き、年金の価値が半減してしまう可能性もあるのです。
そういうときのために、いざとなったらいつでも生活保護を申請できるような、心構えというか、最低限度の知識は持っていて損はないはずです。
「役所の窓口」に、生活保護申請を拒む権限はない
日本の生活保護には大きな問題があります。それは「役人が不当に生活保護受給を阻止する」という問題です。
世間の人たちの多くは、生活保護の具体的な仕組みについて詳しくありません。
それをいいことに窓口の役人が適当なことを言って、生活保護の申請をさせないというようなことが非常によくあるのです。
本当は、生活保護を受ける資格があるのに、役人が窓口で追い返すのです。これは本来は違法行為であり、先進国ではあり得ないようなことです。
しかし、日本の役所では慣習的にこういうことが行なわれてきたのです。これを防ぐには、生活保護の知識を持っておかなければなりません。
生活保護の申請自体は、それほど難しいものではないので、生活保護を受ける資格があり、ちょっとした知識さえあれば、生活保護は簡単に受けられるのです。
悪徳役人がいかに嘘をついて阻止しようとしても、普通に申請すればいいだけなのです。
しかしそのためには、生活保護に関する基本的な仕組みを知っておく必要があります。なので、これから生活保護について具体的な仕組みをご紹介していきたいと思います。
「若い人」や「働ける人」も生活保護を受けられる
まずは、生活保護を受けられる条件を確認しておきます。
生活保護を受けられる条件というのは、実は非常に単純です。現行の法制では、生活保護を受ける条件は、次の4つとなっています。
(1)日本人であること
(2)生活保護の申請がされていること
(3)収入が基準以下であること
(4)資産が基準以下であること
この4つの条件さえクリアしていれば、生活保護は誰でも受けることができるのです。生活保護というのは本来、驚くほどハードルが低いものなのです。
この4つの条件に関しても、別に難しい解釈は必要ありません。ごくごく単純にこの条件をクリアしていればいいのです。
つまりは、日本人であり、収入と資産が基準以下の人が、生活保護の申請を出しさえすれば、必ず生活保護が受給できるものなのです。
また日本人ではなくとも、難民認定者や永住者、もしくは日本人、永住者の配偶者などは、生活保護を受けることができます。
収入や資産の基準なども、各自治体で明確に決められています。役人が恣意的に決めるようなものではないのです。
また生活保護は、「働ける人は受給できない」というふうにも言われています。が、これは単なる都市伝説です。
本人は働ける状態でも、自分のできる仕事がないケースは多々あります。だから、本人が働ける健康体だから、役人が生活保護の受給を却下できる、というものではないのです。年齢が若い場合は生活保護が受けられない、というのも都市伝説です。
このように、生活保護というのは本来、現場の役人が受給させるかどうかを判断する余地はまったくないのです。条件さえ満たしていれば、誰でも受けられるものなのです。
収入条件からみて「もらえるのにもらっていない人」だらけ
むしろ、役人の恣意的な操作ができないからこそ、役人は法的にギリギリ、いや違法ともいえるような妨害をして、生活保護を受給させまいとしてくるのです。もちろん、役人のこの妨害工作も、淡々と法に沿った手続きさえ取っていれば、何の影響もないのです。
次に収入や資産の基準についてご説明しましょう。生活保護の受給できる基準は、厚生労働省が定めています。
この基準額は、家族構成によって違ってくるし、各市区町村によっても若干違ってきます。この基準額は、厚生労働省のサイトに載っています。
都心部の一人暮らしの50歳の人の場合、家賃を除いて約8万円以下の収入であれば、生活保護を受けられることになります。だからこの人がもし家賃4万円のアパートに住んでいた場合は、約12万円以下の収入であれば生活保護が受けられるということです。
地域によって基準額の差はありますが、一人暮らしではおおむね月12万円以下の収入ならば生活保護を受けることができるといえます。
これは、月12万円以下の収入になったら生活保護が12万円もらえる、ということではありません。基準を下回った場合には、その下回った分だけをもらえるのです。たとえば、月10万円の収入しかない場合は――(メルマガ2024年7月1日号より一部抜粋)
メルマガ7月1日号ではこの続きとして、「子供が2人いる家庭の場合」や「夫婦2人で年金生活をしている場合」などの生活保護について解説。さらに最新7月16日号では、持ち家の人が生活保護を受ける際の条件や、自家用車・加入中の各種保険に関する注意点についても詳しく取り上げています。
(メルマガ『大村大次郎の本音で役に立つ税金情報』2024年7月1日号より一部抜粋。全文はご登録の上お楽しみください。初月無料です)
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