頼清徳氏の台湾総統就任以来、あの手この手で台湾に対する威嚇や圧力を強める中国。台湾サイドも大規模な避難訓練を行うなど警戒を怠りませんが、中国の魔の手は台湾の民間人にも伸びていたようです。今回、台湾出身の評論家・黄文雄さんが主宰するメルマガ『黄文雄の「日本人に教えたい本当の歴史、中国・韓国の真実」』では、複数の台湾人インフルエンサーに対して行われている中国の工作活動を紹介。日本に対してもそうした動きがゼロであるはずはなく、国民に「中国からの危機に敏感であるべき」と警戒を呼びかけています。
※本記事のタイトル・見出しはMAG2NEWS編集部によるものです/原題:【台湾】パリ五輪後、高まる「中国の台湾侵攻」の懸念
全てはパリ五輪後の軍事侵攻のためか。台湾内部にまで伸びる中国の魔の手
● 台北など北部7県市で防空演習 街から通行人の姿消える スマホにアラートも/台湾
台湾では大規模な避難訓練が繰り返されています。頼清徳総督が就任してからは、中国からの軍事的圧力が耐えず、陸海空のあらゆる手段を使って軍事威嚇を続けています。また、前述したように、パリオリンピック後の中国による台湾侵攻も噂されています。
こうした中国の高まる脅威に対して、台湾は防衛のために、中国侵攻を想定した軍事演習や避難訓練を行っているというわけです。
では、どのような避難訓練が行われているのかを、以下、報道を一部引用します。
定例防空演習「万安47号」2日目の23日、台北市や新北市など北部7県市での演習が実施された。開始時刻の午後1時半にサイレンが鳴り響くと、走行中の車両は路肩に停車し、屋外にいた通行人は警察官などの指示に従って屋内に避難した。また演習実施地域にある携帯電話には、ミサイルやロケットによる攻撃があるとして避難を呼びかけるアラートが配信された。
「万安」は年に1度行われる防空演習。今年は22日から25日までの4日間で、全国を4地域に分けて実施されている。各日午後1時半から30分間、防空警報が発令され、対象地域全体で車両の停止や通行人の屋内避難が求められるほか、各県市で1~2箇所設定される指定の地域では、防空避難施設への避難訓練が行われる。
各都市のメトロ(MRT)や鉄道、高速鉄道は演習時間帯も運行が続けられるが駅からは出られない。路線バスは演習開始とともにバス停や路肩に停車し、乗客は下車して避難指示に従う必要がある。23日の演習では、台北メトロ文湖線で六張犁駅を通過させる措置が取られた。
演習中、指示に従わなかった場合は3万台湾元(約15万円)以上15万元(約75万円)以下の過料が科される。台北市政府警察局は23日午後の時点で、同日の演習で摘発された違反者はいないとしている。
24日には東部・花蓮県、台東県、離島・金門県、連江県、澎湖県で、25日には南部・台南市、高雄市、屏東県で行われる。
● 台北など北部7県市で防空演習 街から通行人の姿消える スマホにアラートも/台湾
訓練に参加しない人は罰金が科されるというほど、本気の訓練です。このような演習は、台湾の人々の安全を守るためと、日々中国の圧力があることを意識させるためにやっているのではないでしょうか。それだけ、台湾有事の可能性が高まっているということでもあるのかもしれません。
一方で頼清徳総統は、
東部・花蓮県の空軍基地2カ所を訪れ、定例軍事演習「漢光40号」の実動演習を視察した。頼氏は総統府の報道資料を通じ、国軍の全隊員はいずれも国の安全を守る重要な戦力だとし、隊員の努力と献身に感謝するとともに、引き続き精進し、国を守る決意を世界に見せてほしいと隊員を激励した。
頼氏は新城郷の佳山基地と花蓮基地を相次いで訪問。佳山基地では、隊員がその場の状況に合わせて臨機応変に行動を取る「脱中心化指揮管制」や戦闘機・戦力の温存などを、花蓮基地では戦術的第一線救護(TCCC)などをそれぞれ視察した。
● 漢光40号/実動演習 頼総統が花蓮で基地を視察 軍の努力と献身に感謝示す/台湾
この記事の著者・黄文雄さんのメルマガ
軍事色が日に日に濃くなってきている台中関係ですが、中国からの威嚇はこうした目に見えるものだけではありません。台湾の芸能人が自分は中国人だと発言することを強要されているということは、以前、このメルマガでも書きました。台湾で人気のロックバンド「五月天(メイデイ)」も、その一人で、ぼくらは中国人だと発言したことで、中国での活動を保証されたようなものでした。
中国の魔の手は、さらに台湾内部にまで伸びており、台湾で活躍するインフルエンサーにも接触しているとの報道があります。以下、その報道を一部引用します。
台湾で今、波紋を広げているのが、中国からとみられる若者を狙ったある“誘い”です。美容に関する情報などをSNSで発信し、約4.8万人のフォロワーを抱えるPoppyさんに、2022年、外国の広告会社を名乗る人物から突如、メールが届いたのです。
「一つ特別なご依頼です。中国を褒める内容を投稿してください。極端すぎる言論は求めません。もし興味があれば、ほしい報酬の金額を教えてください」
メールの発信元は見知らぬアドレスでしたが、中国で使われる簡体字で書かれていました。
台湾のインフルエンサー Poppyさん
「とても驚きました。(中国と距離を置く)私の政治的立場は分かりやすい。逆に中国のいい話を言わせようとしている。これはひどい話」
複数のインフルエンサーにあったという中国からの“誘い”。Poppyさんは不安を感じているといいます。
台湾のインフルエンサー Poppyさん
「侵略される不安がある台湾ではなく、子どもには安全で平和な台湾で成長してほしい」
● 【台湾】忍び寄る“中国の影” インフルエンサーや芸能界に“誘い”が…
こうした中国からの接触に対して、積極的に協力し報酬を得る人もいれば、警戒して距離を置こうとする人もいます。中国は、こうして外からも中からも台湾に入り込んでいるのです。
先週のメルマガでは、フィリピンの町長が、中国のスパイだったという話をしました。中国は台湾はもちろん、発覚していないか、あるいはニュースになっていないだけで、日本でも同じようなことをしている可能性は低くありません。
【関連】中国人スパイが市の顔に?カジノ摘発で発覚したフィリピンの市長“なりすまし疑惑”に感じる中国の得体のしれない恐怖
とはいえ、日本で中国の工作活動が明らかになることは、ほとんどありません。もちろんそれは、工作活動がないのではなく、日本側が気づかないか、気づかないふりをしているからでしょう。
日本の危機にもっと敏感であるべきです。
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※ 本記事は有料メルマガ『黄文雄の「日本人に教えたい本当の歴史、中国・韓国の真実」』2024年7月24日号の一部抜粋です。初月無料の定期購読のほか、1ヶ月単位でバックナンバーをご購入いただけます(1ヶ月分:税込660円)。
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