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完全に見捨てられたウクライナ…世界は「絶望しかない時代」に突入した

国際社会が注視する中、さらなる人道危機の悪化が懸念されるイスラエルによるガザ地区侵攻。しかし世界には、ほとんど顧みられることがない数多の紛争が存在していることもまた事実です。今回のメルマガ『最後の調停官 島田久仁彦の『無敵の交渉・コミュニケーション術』』では元国連紛争調停官の島田さんが、そのような「見捨てられる国と人々の悲劇」が作り出される構図を詳しく解説。さらに今現在の国際社会には、もはや平和的な状況は存在しないとの個人的な見解を記しています。

安定と平和の世界が終わるとき-ガザ・ウクライナ対応の失敗がもたらす地獄絵図

「これまで30年にわたり続くコンゴ東部を主戦場とする戦いで、600万人が命を失い、100万人以上のコンゴ人が国内を明日知れない恐れに駆られながら流浪している」

「コンゴではアメリカのフロリダ州より少し大きいくらいの地域で、100を超える武装勢力が自身の優位性を訴えるために、日々互いに殺戮を繰り返している」

「そのような状況下にも関わらず、コンゴの地下に眠るレアメタルを目当てに外国資本がコンゴに殺到しているが、誰もコンゴ国内で起きている悲劇には目もくれない」

12月19日付のニューヨークタイムズが、アフリカ地域の首席特派員であるDeclan Walsh氏の記事を掲載し、上記のような状況を伝えました。まずWalsh記者とこの記事を掲載したニューヨークタイムズの勇断・英断に敬意を表します。

実際この記事にどれほどの読者、そしてリーダーたちが注目し、具体的な対策を考え、実施に移すのかは分かりませんが、イスラエル・ハマスの戦いやガザにおける人道的危機、ウクライナの市民がロシアからの攻撃に晒される恐怖と悲劇に比べると、欧米諸国とその仲間たちの国々に暮らす私たちの注意を引くことは少ないのではないでしょうか?

ロシアによる侵攻と攻撃を受けて命を落としたり、家を追われたりしたウクライナの市民。

イスラエルからの猛烈な攻撃に晒されて、ガザという非常に狭い折の中で生命を無差別に奪われた2万人超の市民。

ハマスによる攻撃によって人質に取られ、人間の盾に使われているイスラエル市民と外国人。

これらすべての人たちに対し、哀悼の意を表するとともに、即時停戦と人質の即時解放を訴えます。

しかし、この他の地域において同様、またはそれ以上の恐怖に晒され、いつ終わるともわからない地獄に直面する人々はどうでしょうか?

シリアではわかっているだけでも50万人が戦いの巻き添えになり、命を奪われました。

イエメンでは、イランとサウジアラビアの代理戦争と言われる戦いを通じ、これまでに分かっているだけでも37万7,000人以上が命を奪われています。

アフガニスタンでは、アメリカが完全撤退してから、今年起きた大地震による死者を除き、タリバンとその他の武装勢力との間の戦闘で少なくとも24万人ほどの一般市民が亡くなっています。

ごくたまにニュースに登場するスーダンの内戦では、ここ1年ちょっとの間に少なくとも50万人の市民が亡くなっていますし、イラクではアメリカ軍の撤退後、30万人以上が亡くなったという情報が入っています。

そして先ほど紹介したコンゴでは、死者数は600万人を超えましたが、これまで30年間、国際社会からの関心はほぼ皆無と言えます。

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戦争の種となる「もっと、もっと」という心理

ここまで挙げた例は、数だけを見ても惨劇・悲劇という表現が合うかと思いますが、残念ながら「国際社会」は、抗議の声を上げることなく、沈黙を保ち、悲劇は繰り返され、拡大しています。

でも同じ“私たち国際社会”は、イスラエルとハマスの戦いに巻き込まれて命を失った2万人ほどのガザの市民の死とそれを招いたイスラエル軍とハマスに対して激しく怒りの声を上げ、ロシアによるウクライナ人への蛮行に対しても涙し、ロシアに対する抗議の声を上げ、自らの日常生活に支障をきたしても、ロシアへの制裁の悪影響を甘受しつつ、「ロシア派かウクライナ派か、それとも傍観者か」と互いを責め立てて、“国際社会”を分断させています。

ロシアによるウクライナ侵攻に始まった対ロシア制裁の数々は、グローバル化の下で成し得てきた世界の物流網の連帯性をぶった切り、エネルギー・資源・食料などの供給危機を引き起こしています。

そこにイスラエルとハマスの戦いが加わり、ハマスを支持するフーシー派が主導して紅海における船舶への攻撃をおこなったことによって、次々と海運会社が紅海ルートの中止を表明し、その結果、海運網が途切れ、さらなる状況の悪化が予想されます。スエズ運河から紅海ルートは、世界の原油・天然ガスの15%が通過する海域ですが、ここを避けて、タンカーなどが遠回りすることで、運搬する資源やエネルギー源の価格高騰に連結する懸念が高まります。

ただでさえ高いエネルギー料金、供給網が狂ってしまっている食糧、世界の穀倉庫ウクライナが生産不能に陥った後、供給源として注目されたはずのアメリカも、バイデン政権によるエネルギー政策の結果を受けて、飼料用のトウモロコシ価格が暴騰し、バイオエタノール転用により失われる家畜用トウモロコシの供給がひきおこす畜産・酪農セクターへの大打撃…。いろいろな危機が今後、同時多発的に起きて、事態が急激に悪化する可能性が多方面から指摘されています。

その影響をもろに受けるのが南アジア諸国、島嶼国、サハラ以南のアフリカ諸国と言われていますが、その悪影響はすぐにグローバル化された世界を通じて先進国にも押し寄せてくることになります。

私が紛争調停官という仕事にこれまで携わってきたなかではっきりと見えてきているのが、【戦争は宗教や民族の違いによって起きるのではなく、隣人のものを少しでも欲しいと考えて、自分の欲を満たすために起こすもの】という悲しい現実です。

言い換えると“もっと、もっと”の心理が戦争の種となります。

リーダーは常に国民や社員を喜ばせなくてはなりません。今のままでも十分に素晴らしいはずなのに、国民や社会、消費者はすぐに持っているものに飽きてしまい、もっともっとを欲する私たちの性が、リーダーたちを戦争に掻き立ててしまいます。

その傾向は、国際政治学や地政学の分野でよく用いられるランドパワーの国々でも、シーパワーの国々でも共通して存在します。

「ロシアや中国のような陸続きで隣国が多数存在する国にとっては、それらの国々から攻められず、自国民を満足させるためには、隣国を攻めて拡大する他ないのだ」というのは、ランドパワー理論でよく語られるもので、確かによく特徴を捉えているなと感じます。ただこのランドパワー理論に分類される勢力の特徴は、良くも悪くも“隣接しないもの・国に対しては、直接的な関心を、本気で抱かない”というものですので、あまり“国際紛争”に武力介入という形式で、首を突っ込んできません。

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「アメリカの政策的な関心の度合い」に左右される国際社会

ロシアにとって直接的な安全保障上の関心は、ロシアと陸続きで国境を接する16の国々(ウクライナ、ベラルーシ、モンゴル、アゼルバイジャン、北朝鮮、中国、カザフスタン、ジョージア、ラトビア、エストニア、フィンランド、ノルウェー、ポーランド)との力関係です。

国境という意味ではここに海峡を隔ててアメリカ合衆国と日本が加わりますが、海峡の存在は、互いにとって防御壁として存在するため、ランドパワーの直接の脅威としてではなく、別のカテゴリーになることが多くなります。

ロシアは、影響力の拡大という観点から中東やアフリカ、中南米諸国にも手を伸ばしていますが、軍事的なものというよりは、経済的なつながりの構築と強化が主眼であるため、ハードコアな安全保障上の利害では動いていません。

これに対し、シーパワーの典型例とされる英国と米国は、海が自然の要塞として機能するため、影響力拡大のターゲットを遠方に求めやすくなります。

アメリカの場合、カナダとメキシコとは地続きではありますが、両国ともアメリカにとっての国家安全保障上の脅威となるほどの強国ではないため、アメリカは外に目を向けやすくなっています。とはいえ、今、米国内で政争の具になっており、見事にウクライナも煽りを食らったのが“メキシコからの移民の流入はアメリカの国家安全保障上の脅威”という主張の存在ですが(主に共和党)、この場合には傍目には理解できないほどの過剰反応を見ることが出来ます。

このシーパワーの皆さんの特徴をあえて過剰に一般化しますと、他国・他大陸のことにやたらとちょっかいを出したくなります。

口を出し、手を出し、欲しいものは取ってきて、場合によっては自らの考え方や文化的な習慣を置いてきて、押し付けます。ゆえに現地からすると異物として捉えられ、大いに嫌われる対象になりやすいのが特徴です(あえて悪いところばかり見ていますが、シーパワーによる影響力拡大が結果としてグローバル化を進め、私たちの生活を便利にしたのは確かです)。

今、起きている国際社会の分断は、この趣を異にするランドパワーの皆さんと、シーパワーの皆さんがぶつかり争うフロントと、それには巻き込まれず、どちらの利点も享受したいグローバルサウスの皆さんという構図だと表現できるのではないかと思います。

このような分類は、実は少し前まで存在した国際協調時代にもあったのですが、大きく変わったのは、シーパワーの皆さん、特にアメリカが、問題が起きたら、いいか悪いかは横に置いておいて、あちらこちらに直接出て行かなくなったことでしょう。

その結果、関心の度合いがアメリカの政策的な関心の度合いによって差別化され、アメリカに“関係がある”“利害がある”国や地域については大騒ぎしますが、その他については、一応、口は出すが手も金もサポートも出さないという図式が出来上がったのではないかと、若干、強引な気もしないでもないですが、考えています。

それが、イスラエルが絡む問題には国内の議論を二分し、国際世論も二分することを厭わずに介入したり、大嫌いなロシアや中国が何かをすると声を大にして介入したりする半面、アフリカ内で起きていることやアジアの片隅で起きていることには関心を持たず、商業的・経済的な利益の拡大と確保のために、そこに存在する政治・社会における不都合な真実を黙認するか無視するという方針を、アメリカも欧州も、そしてその仲間たちも、今やシーパワー的な側面も持とうとしている中国も、ロシアも選択しています。

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「見捨てられる国と人々の悲劇」が作り出される構図

グローバルサウスの皆さんも、それぞれ国内政治的には問題を抱えているところが多いとされていますが、そこには互いに目をつぶり、それぞれの実利に基づいて判断する傾向があるため、自国が直接的に影響を被らない案件にはあまり真剣に首を突っ込んではきません。

この特徴は、紛争の調停役という観点からは望ましい部分もあるのですが、調停・仲介を行う際には、対象国や案件に対してやはり何らかの“関心の存在”が必要ですので、正直なところ、紛争調停の観点からはあまり期待できません(インドの場合、もしロシア的に「アフリカ諸国にはインドから渡ったインド系の同胞がたくさんいるのだから、同胞を保護するために介入する」という強引な観点を取るのであれば積極介入もするでしょうが、実際にはインドはそこからは距離を置いているようです)。

このような戦略的無関心と選択的関心の構図が、今の世界の分裂の構図の一因となり、“見捨てられる”国と人々の悲劇を作っているのではないでしょうか。

コンゴでは600万人の死者が出ながらも30年にもわたって紛争が続いているのを黙認し、武装勢力が割拠し、血で血を洗う戦いを繰り返している傍らで、豊富に産出されるレアメタルの争奪戦を繰り広げる欧米諸国と中国の存在があります。

時折コンゴの案件は国連安保理の場にも出され、継続する武力紛争への懸念が述べられ、状況の改善と即時停戦が叫ばれるのですが、実質的な行動もとられず、またサポートもありません(私も何度か紛争調停の任でコンゴに赴きましたが、あまりにも当事者が多く、その聴取と調整は困難の度合いを極め、実質的には調停不成立となってしまい、今も継続案件です)。

シリアの案件は、アサド政権の蛮行を糾弾する間は関心が続いていましたし、欧州では人道支援の拡大が叫ばれましたが、欧州国内での治安状況の悪化や、生活環境の違いなどから、欧州に押し寄せ、受け入れてもらったはずの難民が迫害対象になってしまうという事態が進むにつれ、トルコとの外交的なカードにも使われましたが、シリア問題から目を背けるという政策的選択が欧州各国で行われたがゆえに、50万人を超えるとされる死者を生む悲劇は急速に関心を失いました。

それはアフガニスタンも、イエメンも、スーダンも、イラク、そしてミャンマーも同じです。

どこかで紛争が起こり、悲劇が報告される度に関心が高まり、支援の声も挙げられますが、次の何かがどこかで起きると(ほとんどの場合、自国の安全保障には関係がない)、そのことを忘れて、次の新しい危機に熱狂する。

この傾向は、ロシアによるウクライナ侵攻、ハマスによるイスラエルへの同時攻撃と人質事件、それに対するイスラエルからの苛烈な報復とガザ地区における非人道的な攻撃へと移行しているのが分かるでしょうか。

今、世界各地でイスラエル軍による無差別攻撃に反対する抗議デモが起こり、同時にハマスによる凶行を非難するデモも起きていますが、ところであれほど激しく行われていた“ロシアによるウクライナ侵攻に対するデモ”や“Stand with Ukraine”の集会はどこにいってしまったのでしょうか?

対ウクライナ熱は残念ながら冷めてしまっているようです。

その証拠にゼレンスキー大統領とウクライナに対する各国政府の関心は著しく低下しています。

イスラエル・ハマスの問題だけが理由ではなく、ウクライナの反転攻勢が期待はずれだったことや、ロシアが想像以上に強いまま残っていること、反ロシア包囲網が思うように形成されておらず、親ロシアまたは中立的な立場を保つ国々が多いこと、そしてウクライナの後ろ盾となった国々が、ウクライナ国内にある完全なる3分割の構図を理解しきれていなかったことなどがあります。

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ウクライナ国内で揺らぎ始めたゼレンスキー大統領への支持

ワシントンを訪問し、バイデン大統領をはじめ、連邦議会の幹部とも面会し、対ウクライナ支援の継続と強化を依頼しましたが、バイデン大統領からの空約束は得られたものの、実質的に予算を握る下院からは支持を得られず、すでに議会がクリスマス休暇に入ったという時期的な不運もあり、対ウクライナ支援の予算が枯渇する前に、その予算の延長も拡大も行われず、実際には打ち止めとなるという事態に直面しています(民主党・共和党の別なく、実際には議会において「ウクライナに対しては、あと1年は持ちこたえられるだけの財政・軍事支援は行ったはず」という認識が広がっているようで、新規・追加の支援には後ろ向きという背景も存在するようです)。

続いてブリュッセルに赴き、EU加盟交渉を開始するという“成果”を得たものの、それは先述のように、ゆうに10年以上かかることから、実際には欧州各国からの支援の打ち切り通告の代わりに、“希望”を持たせるためだけのリップサービスだったのではないかと思われます。

実際には欧州の支援の要のドイツは、国内の予算調整が与野党で困難を極めており、現時点でウクライナに対する追加支援の実施はほぼ不可能な状況と言われていますし、これまでウクライナに寛容だったはずのフランス政府も、ウクライナをヨーロッパとは見なしていないことに加え、ロシアへの配慮から、あまり積極的な支援の輪には加わるつもりはないようです。

そしてUNの場では、安全保障はもちろん、開発や気候変動などの議論が行われる場で、途上国の代表から公然と“ウクライナやイスラエルにシンパシーを表明して湯水のように迅速に支援を提供するのに、もっと多くの人命にかかわる問題に対しての支援には後ろ向きなのはどうなのか”という非難の対象としても使われ始め、これ以上、実効的な支持をウクライナがUNの場で受けることはなさそうな気配です。

極めつけはウクライナ国内でゼレンスキー大統領への支持が揺らいでいます。ウクライナ国民を困難な際にも鼓舞し続ける姿はカリスマとして称えられた時もありましたが、その後、度重なる閣僚や軍幹部の更迭、汚職疑惑などに襲われ、戦線も膠着状態にあることから、その指導力に疑問符が付けられ始めています。

そしてロシアによるウクライナ侵攻以降、武器弾薬はもちろん、政府機能の維持、教育、医療、年金などを維持するために欧米諸国とその仲間たちからの支援が使われていることと、戦争による破壊により実質的に穀物や鉱石などの収入源を失っていることもあり、欧米頼みの国家運営に対する不安と不満の矛先が、プーチン大統領とロシアだけでなく、ゼレンスキー大統領にも向かいつつあると言われています。

自国と自国民を支えるための支援を欧米諸国とその仲間たちから引き出してこれなくなったことで、一旦は延期を提案した来春の大統領選挙を予定通りに実施してゼレンスキーを追い出すべきとの声も、反対派から起きていると言われています。

そして大統領と統合参謀本部議長との確執と権力争いが表ざたになってきたことで、内政上の危機も訪れていると言われています。

国際社会から次第に煙たがられ、国内でも支持基盤の揺らぎが出てくる中、もし欧米諸国とその仲間たちがウクライナ支援から手を退くようなことがあれば、これは確実にウクライナを見捨てることとなり、プーチン大統領による蛮行を、間接的に容認する結果に繋がります。

今のところ、大方の見方は時間がプーチン大統領とロシアの味方となっており、対ウクライナ戦が長引くほど、ロシアは軍事面でも経済面でも体勢を立て直し、ウクライナに対してend gameをしかける可能性が高まるとされています。

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非常に危険な状態に追いやられている国際社会

今、ロシア・ウクライナに加え、イスラエル・ハマスの問題を抱え、その背後ではかなりの数の国際紛争を抱える世界は、言い換えると多くの世界戦争の引き金となりかねない案件を同時に抱え込み、安全保障環境維持のための仕組みが機能不全になりつつあると考えます。

ロシア・ウクライナ、イスラエル・ハマス、そしてアフリカで数多く継続している紛争、アゼルバイジャンの報復と野望、コソボで再燃するセルビアとアルメニアの主導権争い、不穏なアフガニスタン情勢、激しさを増すミャンマー情勢、トルコとシリア、イラク、イランが抱えるクルド人問題…どこかの火の粉が他の紛争に火をつけ、その戦火が広がり、延焼するような事態になった場合、もう安全保障体制の崩壊の炎の広がりをだれも止めることが出来なくなると思われます。

包括的な国際安全保障体制は、常に非常にデリケートなバランスの下、何とか和平と安定が保たれています。

どこかで火の手が上がれば、迅速に協力して火を消し、争いの理由・原因を一旦キャンセルアウトして、何とか安定的な状況に戻すという作業が通常は行われてきましたが、これだけ大きな紛争が世界各地で勃発してくると、このバランシング機能が動かなくなり、危機的な状況に陥ります。

「どの紛争からまず停止すべきか」

そのような質問をよくいろいろな場で尋ねられるようになりましたが、私からはあえて自身の考えを述べることは避けています。

それは答えを持っているからというよりは、恐らく私自身もわからないからだと思います。

武力によらずに戦争を解決できる状態を私は“平和”と呼びますが、少なくとも今はその平和的な状況はもう存在せず、非常に危険な状態に私たちは追いやられているように感じています。

もちろん、そのような中でも調停グループはしっかりと力を尽くします。

以上、今週の国際情勢の裏側でした。

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image by: Ericky Boniphace / Shutterstock.com

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世界各地の紛争地で調停官として数々の紛争を収め、いつしか「最後の調停官」と呼ばれるようになった島田久仁彦が、相手の心をつかみ、納得へと導く交渉・コミュニケーション術を伝授。今日からすぐに使える技の解説をはじめ、現在起こっている国際情勢・時事問題の”本当の話”(裏側)についても、ぎりぎりのところまで語ります。もちろん、読者の方々が抱くコミュニケーション上の悩みや問題などについてのご質問にもお答えします。

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【著者】 島田久仁彦(国際交渉人) 【月額】 ¥880/月(税込) 初月無料! 【発行周期】 毎週 金曜日(年末年始を除く) 発行予定

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