今年1月から新しいNISA制度が開始されましたが、我々消費者はお金を巡るあれこれについて、これまで以上に注意を払いつつ生活してゆく必要があるようです。今回のメルマガ『伝説の探偵』では、現役探偵で「いじめSOS 特定非営利活動法人ユース・ガーディアン」の代表も務める阿部泰尚(あべ・ひろたか)さんが、新NISAスタートとは無縁ではない激増する「投資詐欺」の手口を公開。さらに詐欺を見分ける2つの方法と、資産家から直接聞いたという「投資の3か条」を紹介しています。
現役探偵に「投資詐欺」の相談が爆増中。新NISAスタートとの関連は?
現代日本国内では、官民キャンペーンを展開し、投資ブームだと言っても過言ではない。
そもそも失われた30年間と言われるように、預金の金利は恐ろしく下がり、経済成長どころか給与は上がらない、社会保障も薄くなることは明白で、国民負担率は数十年前と比べれば重くなり過ぎている。つまり、稼げる額は変わらないのに、社会保険など払う金額は増えているから、それだけで生活が苦しくなるわけだ。
そこで僅かなお金を投資に回し資産を運用することになるわけだが、NISAが誕生し、非課税など優遇措置が取られた。
財テク雑誌やTV番組などでも盛んに投資テクニックや成功者が紹介されるようになった。
タンス預金を吐き出させよう、預金から投資へ移行させようというのはもちろんの思惑として、いまや投資をする事は当たり前のことになってきた。
ところが、ここのところ投資詐欺の相談は爆増と言っていいほど増えている。
平成15年の開業当初から、詐欺の相談と対応は多かったが、この数年の急増ぶりは、いったいどうしたのだと思うほどなのだ。
当然、新NISAが始まったからとかではないだろうが…。
この記事の著者・阿部泰尚さんのメルマガ
探偵が教えるもっとも多いパクリの手口
ポンジスキームとは、新しい投資家から集めた資金を、以前の投資家に配当や利益として支払うことで、新しい投資家を引きつける詐欺的な投資計画のこと。その名の由来は、ポンジさんが考えたからだ。
そして、ここにねずみ講的仕組みを構築するというのが現在主流の投資詐欺だ。
例えば、Aさんが1,000万円を詐欺投資会社に預けたとする。すると、数か月は約束通りの配当が支払われる。多くのケースでは、月利にして2~5%というところだ。月利5%というのは年利にすればとんでもないことになる。複利運用した場合、元金倍率にすれば、わずか1年で1.79倍にもなるのだ。
日本国内の銀行に預金をした場合の金利はメガバンクでだいたい0.003%程度、高金利を出しますというネット銀行でも0.2%程度だろう。そして、これは年利である。
月利で1%というだけでも、とんでもない配当なのだということがわかろう。
つまり、Aさんは1,000万円の元金を減らすことなく、毎月50万円の配当をもらえるわけだ。
仮に半年もらい続ければ、配当だけで300万円になる。多くの場合、この段階になる前で詐欺会社を信用してしまうのだ。そして、投資家だけが呼ばれるセミナーや個別の面談で、こう勧められるのだ。
「どなたか紹介してもらえませんか?」と。
この場合、配当の月利の一部を紹介者となるAさんに渡すというケースが多い。Aさんは、10人紹介すれば、2倍の配当を手にするなど、働く必要がないと思えるほどの配当を手にすることになるわけだ。
こうした拡がり方で、詐欺被害総額は破壊的な被害総額に育っていくのだ。
しかし、ポンジ・スキームは預かったお金を次々と配金していくだけの仕組みであり、預かる額が多くなり、預ける人が多くなるほど、リスクが大きくなり、時間が経てば破たんするのである。早い場合で3年、もって5年ほどで運営がおかしくなっていく。
しかし、金融の世界を含め戦争や大災害などは5年もすれば何か起きるのだ。
詐欺会社はそういう事件を理由に破たんしましたと整理してしまえばいいのだ。
銀行だって潰れる時代、投資会社に見せ掛けた詐欺会社やその実、詐欺師が有名トレーダーに化けているのだから、時代の波には勝てませんでしたと逃げてしまうのだ。
裁判をすればいい。という人もいるだろうが、詐欺側は資産を隠すことに多くの力を注ぐのだ。名義を変えたり、現物にしたり、海外送金は限度もあるが、リスクさえ承知の上で資金を逃がそうと思えば方法はいくらでもあるだろう。
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「投資詐欺」を簡単に見抜く2つの方法
詐欺師や詐欺会社の多くは金融商品を取り扱うことができる許可を受けていないことが、ほとんどだ。金融庁のホームページで取扱業者は確認できるので、検索すればわかる。
ここに載っていなければ、もはやお金を預けるには値しないと考えてまず間違いない。
例えるのであれば、登録業者である銀行にお金を預けるのと、登録されていない隣に住んでいるおじさんにお金を預けるのと同じくらいの差だ。
もしかしたら、競馬で儲けた一時金で隣りのおじさんが高級焼き肉を奢ってくれるかもしれないが、まず元金は戻ってこないだろう。
中には、金融商品を取り扱うことができる会社を買収しているなどの会社もあろうが、その場合は会社名を検索すれば、かなりの数で被害を告発するサイトや書き込みを目にする事だろう。
まず簡単に素人が無料で調べるというならば、登録を確認していくだけで大方の見抜きにはなるはずだ。
実際、探偵が調査をするとなれば、実態を見る行動系調査から各評判などを確認する信用系調査を含め様々な情報収集を行うし、有料で情報を買うのは当然だろう。
これら手法をここに書いてもよいのだが、あまりに一般的ではないしやるには訓練が必要不可欠だ。尾行なんて簡単という素人をたくさん見てきたが、まず30分ともたないし、張り込みなんて2時間で飽きるだろう。さらに、調査が発覚するというリスクもある。
もう1つ見抜き方を付け加えるとすれば、月利で表記してきたらまず危険、月利2%以上はまずあり得ないのではないかということだ。業者であれば当然に従業員に給与を払うわけだが、それは投資によって得られた収益からだろう。そうして経費があって顧客への配当があるわけだから、高配当はリスクの方が多いのだ。
安全に資産を防御しようと考えるならば、まず手を出していい案件ではない。ギャンブルがしたいのであれば別であるが、その場合は元金がなくなる覚悟をしてからだ。
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資産家が教える「投資の3か条」
実際のところ、私の本業である探偵としては、定期的な依頼を発注してくれる法人さんや紹介をしてくれる弁護士さんなどがありがたくもいるのだが、その中には資産家と呼ばれる人たちがいる。
彼らが口々にする中で投資をしていくのに絶対必要な3か条は以下のとおりだ。
その1:消費よりも先に投資せよ、投資より先に貯蓄せよ
つまりは資金がないならまず貯めろということだ。貯める余力がないなら働けということだろう。
その2:わからんことに手を出すな
株がわからないのに株に手を出せば失敗するだろう。当然だが、きちんと学んでから投資をしようということだ。
その3:ギャンブル、ギャンブル性の高いものは必ず破たんする
あまりに高配当であったりレバレッジをかけるような身の丈に合わないものはギャンブルと同じ、成功者1につき万の敗者がいるとよく話していた。
これらについて私は専門家でもないし、特に取材をしたわけでもないから、聞いた話なのだが、10年前に100円で買えたものが、今買おうとすると140円になっている。と資産家は缶ジュースを指さして、私に言った。
つまり、現金の価値が下がった、もしくは物価が上がった。どちらにせよ、今100円出してもこの缶ジュースは買えないのだ。
だから後生大事に現金を金利もつかないところに貯めこんでいても、いざ使おうというときは、貯め始めたころより価値が下がっているのではないか?と問われた。ということがある。
なんとなく反論もしたくなったが、確かにそうだなと私はその時感じたのだ。
だからというわけではないが、資産運用というのは始めた方がいい。
その場合は短期間で判断せず、中長期的な考えで運用する方がいいと私は教えてもらった。
ただ思うのは資産家という人たちには、特別な情報が入る。併せて、危険な詐欺情報も集まってくる。特別な情報は一般には出回らないから、そういう一握りの資産家に勝とうと思わなければいいのだ。そもそも資産自体が一般的な貯蓄の数百倍、数千倍なのだから。身の丈に合った資産運用を続けていけばいいのだ。
落とし穴しかない高額の投資セミナー
資産家の言葉から、投資のセミナーでも受けようかと考える人もいようが、せいぜい本を3冊ほど読み、シミュレーションができるゲームやアプリでやり方を知ればそれで十分だ。
何か特殊は投資をするなら別だが、そもそもそれは3か条から外れているだろう。
中には、1か月で数万円かかるようなセミナーもあるそうだが、たいていそうしたセミナーの主催者は眉唾モノでアヤシイのだ。
結果、そういうセミナーには詐欺金融商品を売りさばき、参加者をカモにしようとする詐欺師がいたりもするし、その主催者自身が詐欺の協力者の可能性もある。
金欲を満たすアヤシイ広告に引っ掛かった無知識の素人を、自らのテリトリーで詐欺師が騙すなどというのは造作もないことだろう。
そもそも、有名な投資家はだいたい出版社から本を出している。そういう人の話を聞きたければ、そういう人が運営しているビジネスとしてのサロンなりメルマガを読んでもいいだろう。
高額セミナーは落とし穴しかないのだ。
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年に数度は確認すべき老親の保険契約や資産運用
年末年始、帰省した人も多い事だろう。その際、保険契約や投資などの契約をチェックしただろうか。人を信じることが美学として騙され続けてきた高齢世代は、狡猾な企業体や詐欺師の格好の餌食となりやすい。最近では闇バイトのような犯罪組織に加担した素人が、タンス預金を狙って高齢者宅を襲ったりもする。
相談でも多いのだが、多重の保険契約をさせられていたり、銀行が窓口になって広げているなぜか元金が減り高額手数料の資産運用をさせられていたという高齢者が増えている。
「老いては子に従え」の通り、子として親の老後を守る意味でも、高齢な親がいる読者の方々には、年に数度はそうしたチェックをすることを強くお勧めする。
全く油断の隙も無い安心できない社会にドンドン向かっていく気配もあるが、守りを固めて損をする事はないだろう。
常人には理解できない犯罪者の思考
今でも詐欺師などは追うのが仕事なのですが、過去の詐欺師をみても、逃げ切りをする詐欺師は多いと思います。素人が、きっと詐欺師は刑務所に入るのが怖いだろうと勝手に想像して納得するのですが、情報源になっている元詐欺師に訊けばわかります。彼らは逮捕されたり起訴されるリスクを敢えて背負って、詐欺をやっているのです。当然、逮捕されるなどのリスクは徹底的に排除しようとするわけですが、金か逮捕かとなれば、彼らは迷わず、逮捕を選ぶわけです。
犯罪者の思考というのはそうでないものにはないということですね。
そういえば、いじめで自殺者を出した加害者が、学校の軽い指導を受けた後、手首を剃刀で切ったという事件が過去にありました。その後、我が子を責めていた加害者の親は、弁護士さんを雇い、学校に不適切指導だと攻め立てました。学校はそれで沈黙です。
被害者の親にも、我が子は悪くないと主張し、PTAを利用して、被害側を孤立方向へ向かわせました。ありとあらゆる嫌がらせを行い、裁判で負けても、それでもウチは悪くないと言い張るのみ。
でも、私は聞いたのです。その加害児童が、塾帰りに寄ったファーストフード店で、いじめ当時一緒に加害を加えていたとされる友人に、「計算通り」って言ったのを。
ゾッとしました。何か別の生き物がそこにいると感じました。
我々にできることは、被害リスクを極力減らすことだと思います。
いじめの場合は、今の仕組みではどうにもならないところはありますが、詐欺は未然に防げるし、最小限の被害に収めることもできるでしょう。
というわけで、皆様が今年も健やかに、安全に、過ごせますように。
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