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韓国の一部国民から大絶賛。毎朝3時台に出発する“8146番バス”ちょっとイイ話

韓国で一番早く出発するバスは毎日明け方3時50分が始発だそうです。なぜこんなにも早いのか、今回、無料メルマガ『キムチパワー』の著者で韓国在住歴30年を超え教育関係の仕事に従事している日本人著者が、韓国のバス事情と、ほっこりするエピソードを紹介しています。

ソウルを明け方3時50分に出発するバス

ソウル蘆原区上渓洞(ノウォング・サンゲドン)から江南区(カンナムグ)ノンヒョンドンまで運行する「8146番」バスは、毎日明け方3時50分に始発が出発する。ソウルで最も早く動きだす出勤バスだ。この時間だけ5分間隔で3台が出発するが、客はこの3台をまとめて「始発」と呼んでいる。お客さんは江南のビル街で清掃員や警備員として仕事をする50~60代が多い。早い時間だが席はすぐに埋まり江南まで1時間20分ほど立ったまま行くこともある。

1月19日、午前3時50分、上渓洞の車庫で出発を準備している8146番バスに乗客が一人二人と乗り込んだ。2駅ほど過ぎてオ・ヒョンソさん(62)が乗った。始発で出勤する彼は、君子(グンジャ)駅のあるマンション団地で清掃の仕事をしている。オさんは過去、京畿道九里(クリ)市の在来市場で農産物流通をしていた社長だった。彼は「いつも夜明けより前に家を出なければならないので、自分が可哀想で胸が痛む時も多いけれど、それでも体がどこも悪くなく仕事ができていることがありがたいだけ」と話す。

毎朝8146番のバスに乗る客はお互いの顔を知っている。どこで乗って、どこで降りるのか、どんな仕事をしているのかも互いにほとんど知っている。バスに乗って降りる時、お互いに挨拶もする。

上渓洞を出発したバスが20分ほど過ぎて、中渓(チュンゲ)駅を通る頃には足の踏み場もなくなるほど込んできた。前のドアまで客でいっぱいで、後ろのドアから1、2人が降りればなんとか前のドアから1、2人がまたやっと乗れるという具合いだった。毎日出勤途中に出会う嬉しい顔を見た乗客(座れている)は、「カバンをこちらにください」「ここに置いてください」と言って他人の乗客のカバンを受け取ってくれる。

他の市内バスの始発を運転する運転手たちも8146番バスに乗って出勤する。蘆原区下渓洞(ハゲドン)の車庫まで行くバス運転手のチェ・フェマン氏(66)は、午前4時30分に出発するバスを運行する。チェさんは「8146番のバスであらかじめ行っておいて車も車庫から出しておき、お金の入れ物も点検しなければならない」として「以前は出勤時間に合わせられる交通便がなくマイカーに乗って通っていたが、昨年から8146番ができて本当にうれしい」と話した。

8146番バスの始発出発時刻が午前3時50分に繰り上げられたのは、昨年1月16日からだ。元々は朝4時5分に出発する146番バスだった。ハン・ドクス国務総理が「明け方の満員バス」体験をしようと146番バスに乗ったのだが、「始発時刻を操り上げてくれ」という乗客の要求があふれた。

「どうせ早く行かなければならないわたしたちです。5分でも早く行くことになればミックスコーヒー一杯飲んで仕事を始められるじゃないですか」という人がいたり、「始発の出発時刻を15分ほど早めてくれると座って行くこともできるんだけど」という人もいた。この時から出発時刻を繰り上げ「オーダーメード型路線」を区分する「8」の字を頭に付けて8146を作った。

8146番バスで会ったキム某さん(65)は「以前はバスがあまりにも混んでいて降りなければならない停留所を乗り過ごしたこともあり、走ってバスに乗ったり押したりしてやっと乗る場合も多かったが、今は一層余裕ができた」と笑った。また別の乗客は「出発時刻が早まったので車があまり渋滞せず出勤にかかる時間が30分ほど減った」として「会社に早く到着し同僚とコーヒー一杯をいっしょに飲める面白さがある」と話した。

バスが永東大橋(ヨンドンデギョ)の北端に到着した時刻は午前4時50分ごろ。この時からバスから降りる人が増えた。乗客の間に挟まって挨拶を交わすことができなかった人たちが「そこにいたんだ?」「最初から立ってきたの?」と言って降りるドアの前で挨拶を交わしたりした。

午前5時10分頃、折り返し終点の江南区シンノンヒョン駅に近づくと、乗客の大部分が先を争ってバスから降りた。乗客たちは「もう今日は金曜日だね。オンニ(お姉さん)、月曜日に会いましょ」と言ってお互いに挨拶を交わしては各自仕事場に向かった。

5年間、シンノンヒョン駅近くのビルで清掃の仕事をしているパク・チャンブンさん(67)は、「始発に乗る人たちはみんな丈夫で強い人たちです」とし「子供たちがいくら成功しても、小遣いを一人一人にたくさんあげます。大変ではあるけれど、自分が直接稼いであげるので、堂々としていられるし、とても良いですよ」と笑った。

8146番バスを運行する運転手のユン・ジョンスさん(64)は「私の出勤時間が前よりずっと早くなったけど、家族よりも頻繁に会う乗客たちが時間が早まったと喜ぶのを見ると私も嬉しい」とし「コーヒーやみかん、柚子茶(ユジャチャ)などを差し入れてくれる乗客もいたり、いつも乗っていたお客さんが乗らないと『どこか具合が悪いのか』と心配になったりする。今年もお客さん全員が元気にバスで会ってほしい」
と話した。

image by: 2p2play / Shutterstock.com

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韓国暮らし4分1世紀オーバー。そんな筆者のエッセイ+韓国語講座。折々のエッセイに加えて、韓国語の勉強もやってます。韓国語の勉強のほうは、面白い漢字語とか独特な韓国語などをモチーフにやさしく解説しております。発酵食品「キムチ」にあやかりキムチパワーと名づけました。熟成した文章をお届けしたいと考えております。

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【著者】 キムチパワー 【発行周期】 ほぼ 月刊

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