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大谷翔平1015億円契約のたった3分の1。スポーツ国家予算でも判る日本の衰退

昨年12月、ドジャースと10年総額7億ドルという超大型契約を結んだ大谷翔平。サラリーはもちろん、人気・実力ともメジャーリーガーのトップに立ったと言っても過言ではありませんが、米野球界はそんな大谷と「心中覚悟」とする見方もあるようです。今回のメルマガ『ジャーナリスト伊東 森の新しい社会をデザインするニュースレター(有料版)』では著者の伊東さんが、もしまた大谷に万が一のことがあれば、今回の大型契約は「野球というスポーツの終わりを意味する」と判断する理由を解説しています。

「野球2.0」大谷翔平の大型契約が映し出す、日本の野球、そして国家の衰退 日本のスポーツ国家予算359億円は、大谷翔平の巨額契約のわずか3分の1という衝撃

新たな野球の時代の幕開けか?大リーグ・ドジャースと大型契約を結んだ大谷翔平。米メディアの報道によれば、その金額は10年総額7億ドル(約1,014億円※発表時点でのレート)に上る。

契約金の総額の1年間あたりの報酬で比較した場合、大谷翔平はMLB史上でも最高額となる。歴代でも断トツの金額となった。

さらに異例ともいえる後払いを含む大型契約の契約金総額も一時、スポーツ史上最高額とされ、サッカーの“メッシ超え”が話題となっている。

日本時間12月15日にドジャー・スタジアムで行われた大谷翔平の入団会見は全米放送のFOXチャンネルで緊急生放送。同時期、全米で名前もインターネットで検索され、これでアメリカでも知名度も増した。

とはいえ、アメリカで、「No.1スポーツといえばアメフト」というのは揺るぎようのない事実である。さらにいえば、メジャーリーグは怪我明けの大谷翔平と“心中”しようとまでしている。

もし、また今度、大谷翔平に万が一のことがあれば、この大型契約はいよいよ野球というスポーツの終わりを意味するだろう。

大型契約 「スーパースター」効果なるか 他方で球団格差も

今回の契約に限らず、近年のプロスポーツ界では、チームが勝利を追及するために、トップ選手に巨額の資金を投じる。

「ファンは最高のものを見たいから球場に足を運び、テレビ観戦し、グッズを買う。実力差はわずかでも、トップ選手とそれ以外では『価値』が違い、報酬に差がつく。いわゆる『スパースター効果』だ」(*1)

米ホーリクロス大のビクター・マセソン教授(スポーツ経済学)は、朝日新の取材にこのように話す。

実際、トップ選手の年俸の基準は高騰。米フォーブスによると、大リーグのこれまでの最高契約額はエンゼルスのマイク・トラウトが19年に結んだ、12年間で4億2,000万ドルだった。

年平均ではメッツの2人の選手が22年と23年に契約した4,333万ドルが最高。スポーツメディアの米スポルティコによると、年俸が2,600万ドルを超える選手は14年まで1~3人だったが、22年は23人にまでに増加。

他方、金額の大半が“後払い”となったことは波紋を呼ぶ。資金が豊富な球団が「ぜいたく税」と呼ばれる課徴金を逃れるための「抜け穴」との批判が起きた。

今後も資金が少ない球団は、長期にわたり低迷、結果、球団間の格差を招きかねない。

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心中か?

一方で、大谷翔平の今後に不安があることも事実だ。9月になされた二度目の右肘呪術については、詳細は明らかとなっていない。

米メディアは、昨年12月24日の日本のNHK総合で放送された大谷翔平へのインタビューに着目(*2)。

大谷が受けたと思われる手術について、

「こうした手術は興味深い。NFL(アメフト)サンフランシスコ49ersのクォーターバック、ブロック・パーディがUCL断裂から短期間で復帰するために受けたものとよく似ている。こうした靭帯修復・再建の増強手術をしたのはNFLの2選手だけで、公に知られている限りMLBではひとりもいない」(*3)

と記した。続けて、

大谷がふたたび右肘を負傷した場合、「配置転換」を決断する可能性を示唆したことにも触れ、「そうなった場合、もう投手ではなくフルタイムのDHか、どのポジションは分からないが、野手に転向すると解釈できる」(*4)

とも。しかし、アメリカで野球は、「クールじゃない」「おじさんのスポーツ」という状態。結局は“大谷頼み”、悪く言えば“大型契約により、大谷と心中”するつもりなのだ。

日本のスポーツ国家予算359億円は、大谷翔平の巨額契約のわずか3分の1の衝撃

大谷翔平の巨額契約は、日本という国の将来についても心配させる。大谷が後払いで受け取る金額は年平均で100億円を超える。

一方、2023年の日本のプロ野球で最高の年俸は、山本由伸とソフトバンクのロベルト・オスナの6億5,000万円だった。

選手の平均年俸を見ても、2023年のMLBは5億7,500万円であるのに対し、NPB(日本プロ野球)の選手は4,468万円だった。この差も12倍にものぼる。

しかしMLBの人気は日本のプロ野球とそれほど変わらない。

MLBはアメリカとナショナルの両リーグで合計2,430試合を行い、観客動員は7,074万7,365人、1試合あたりの平均入場者数は2万9,114人である。日本の方が入場者数は少ないものの、選手の年俸は10倍以上も高い。

その差異はビジネスモデルの違いに起因している。

結論として、日本のスポーツ国家予算の脆弱さが懸念される。2023年のスポーツ庁の年間予算は359億円で、そのうち約234億円がスポーツ環境の整備や老若男女のスポーツ振興に充てられている(*5)。

大谷翔平の大型契約の1,015億円のうち、約3分の1だけが日本のスポーツ国家予算に使われる…。これは日本の衰退を示唆している。

引用・参考文献

(*1)真海喬生、中井大助「大谷翔平、巨額契約の背景 米球団がねらう『スーパースター効果』」朝日新聞デジタル 2023年12月14日

(*2)「日本で放送された大谷翔平のインタビューに、米ファンが強い関心『みんなGoogle 翻訳を走らせている』と米メディア『手術の謎が深まった』」THE DIGEST 2023年12月26日

(*3)THE DIGEST 2023年12月26日

(*4)THE DIGEST 2023年12月26日

(*5)小林信也「大谷翔平の巨額契約『1015億円』のわずか“3分の1”…スポーツ国家予算『359億円』で“後進国”になり下がった日本の現実」デイリー新潮 2023年12月23日

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image by: Conor P. Fitzgerald / Shutterstock.com

伊東 森この著者の記事一覧

伊東 森(いとう・しん): ジャーナリスト。物書き歴11年。精神疾患歴23年。「新しい社会をデザインする」をテーマに情報発信。 1984年1月28日生まれ。幼少期を福岡県三潴郡大木町で過ごす。小学校時代から、福岡県大川市に居住。高校時代から、福岡市へ転居。 高校時代から、うつ病を発症。うつ病のなか、高校、予備校を経て東洋大学社会学部社会学科へ2006年に入学。2010年卒業。その後、病気療養をしつつ、様々なWEB記事を執筆。大学時代の専攻は、メディア学、スポーツ社会学。2021年より、ジャーナリストとして本格的に活動。

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