米アカデミー賞を『ゴジラ-1.0』『君たちはどう生きるか』の邦画2作品が受賞して世間は祝福ムード。芸能記者歴30年のベテランジャーナリスト・芋澤貞雄さんも、「日本映画の米国進出は着々と進んでいる」と感じたそう。そんな芋澤さん、一方で“日本”アカデミー賞の選考基準には常々疑問を持っており、脳裏に浮かぶのは8年前『母と暮せば』で主演男優賞を受賞した二宮和也さんの憤慨した顔。「ジャニーさん、メリーさんとジュリーさんと、今までずっと迷惑をかけてきた人たちに、これでちょっとは恩返しができたかなと思うと、すごくありがたく、また頑張っていこうと思っています」とスピーチした二宮さんは、いったいどんな“仕打ち”を受けたのでしょうか?当時を振り返ります。
アカデミー賞で日本映画が快挙『ゴジラ-1.0』『君たちはどう生きるか』
ロサンゼルスの日本人ソサエティは日本の3作品のノミニーに大いに盛り上がっていたようですね。前日にはサウス・グランド通りにある日本国総領事館で異例ともいえる総決起集会も行われたということです。
そして日本映画初、アジア映画初の最優秀視覚効果賞受賞を成し遂げたのは『ゴジラ-1.0』!
神木隆之介、浜辺美波、山田裕貴、安藤サクラの歓喜の『X』投稿も続々と…おめでとうございます。
宮﨑駿監督の『君たちはどう生きるか』は最優秀長編アニメーション賞、『千と千尋の神隠し』以来21年ぶり2回目の受賞となりました。
引退会見をしたことを猛省しているという宮﨑監督ですが、こうなったら誰ももうそんなことは気にしていないのではないでしょうか、是非次作もお願いしたい気持ちでいっぱいです。
個人的に私の中では最高の映画と思える『ベルリン・天使の詩』のヴィム・ヴェンダース監督の、役所広司主演『PERFECT DAYS』は最優秀国際映画賞を逃しました。でもノミニーとなるだけでも大変なこと…日本に、そして小津安二郎への愛に溢れる監督の、東京で働く清掃員の描き方には脱帽です。
昨年ハリウッドでは大規模な脚本家や役者らによるストライキが発生し、映画やドラマに多大なる影響が出て製作作品が大幅に減少、遅延しましたが、それにしても日本映画の米国進出は着々と進んでいるなぁ…と中継を見終わった私は感じています。
かたや「日本アカデミー賞」は…『嵐』二宮和也に猛クレーム!?
前置きが長くなってしまいましたが、3月8日には『日本アカデミー賞』が開催されていました。
何かと“灰色”の噂が絶えない同賞ですが、日本でも前出3作品は主要6部門を獲得、その権威は本場ハリウッドに近づいたということなのかもしれませんね。
華やかな日本アカデミーのステージを見ながら私の頭をよぎったのは、8年前に『母と暮せば』で主演男優賞を受賞した『嵐』二宮和也のスピーチでした。
私は同会場で出席者と空気を共有していたのですが、ニノは「ジャニーさん、メリーさんとジュリーさんと、今までずっと迷惑をかけてきた人たちに、これでちょっとは恩返しができたかなと思うと、すごくありがたく、また頑張っていこうと思っています」とスピーチしたのです。
これに事の成り行きを眺めていた私の前で「あんなスピーチ、オンエアできないョ!」と怒鳴りながら走り回る番組中継スタッフの姿が今でも脳裏から消えないでいます(日本アカデミー賞は数時間前に収録されたものを録画放送としてテレビでは放映しているのです)。
授賞式が終わり、ホテルのエントランスで送迎車に乗り込むニノを目撃したのですが、自らのスピーチが不適切扱いされたことに、本人は不満タラタラだったのが特に印象に残っています。
「どこが問題なんだよぉ~」と、見送りにきたスタッフに食ってかかっているようにも見えました。
ニノとしてはストレートに感謝の気持ちを伝えたのでしょうが、番組関係者らにとってこのスピーチは“受賞するための裏工作の恩恵を受けた”と視聴者に解釈されかねないと判断されたわけです。
私も“そこまで…考え過ぎじゃないのか”と思いましたが、ニノには気の毒な授賞式になってしまったわけです。
首を傾げてしまう「日本アカデミー賞の選考基準」
それにしても今年の日本アカデミー賞、個人的には強く違和感を憶えるものがありました。
まぁ今年に限らず…と言った方がいいのかもしれませんけれど。
例えば主演女優賞や助演女優賞のノミニーです。
映画ファンへの浸透度や各カテゴリーの選考基準を真摯に考えるとどうにも納得いかない事も。
映画会社や所属事務所の都合も理解できますが、やはりどうしても「他にもっと実績を印象強く残した女優がいるだろうに…」と悶々としてくるのです。
外見的には地味だけど、観客の心に残る演技をした女優が本当に評価されているのかいないのか…年会費2万円を払っている日本アカデミー会員約4,000人の受け止め方に首を傾げてしまうのです。
「紅白歌合戦と同じでしょ」芸能マネージャーが明かした裏事情
この疑問にベテラン芸能マネージャーは…「視聴率を少しでも上げようとするのは当然だし、何より授賞式を華やかに盛り上げるためだよ。マニアックな“通”の意向だと絵面はどうしても地味になるから“華”が必要なんだよ」と答えてくれました。
「紅白(歌合戦)だってそうでしょ、所属事務所の強弱で“この人、今年のヒット曲なんてあったっけ”って思う出場歌手が必ずいる。それとおんなじ事」とも。
でも『わたしの幸せな結婚』の目黒蓮や今田美桜、『あの花が咲く丘で、君とまた出会えたら。』の水上恒司や福原遥を評価しないのはおかしいと反論してしまいました。
実際『わた婚』は約28億円、『あの花が~』は約43億円の興行収入を残しています。
興収だけの基準ではノミニーになれないのはわかります。
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『バービー』のマーゴット・ロビーが主演女優賞のノミニーにならなかった理由と似たようなものでしょうが、少しぐらい御褒美をあげても罰は当たらないだろう…なんてついつい考えてしまうのです。
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プロフィール:芋澤貞雄
1956年、北海道生まれ。米国でテレビ・映画のコーディネーター業を経て、女性週刊誌などで30年以上、芸能を中心に取材。代表的スクープは「直撃! 松田聖子、ニューヨークの恋人」「眞子妃、エジンバラで初めてのクリスマス」。現在も幅広く取材を続ける。https://twitter.com/ImozawaSadao
記事提供:芸能ジャーナリスト・芋澤貞雄の「本日モ反省ノ色ナシ」
image by: オフィスにの 二宮和也 公式ホームページ