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カスハラ、盗難、不法投棄。創業57年の銭湯を廃業に追い込んだ“自分ファースト”な客がやらかし続けてきたこと

そもそもは自分を尊重し自身を大切にして生きるという意味合いで用いられてきた「自分ファースト」という言葉。しかし昨今は、「自分さえ良ければそれでいい」という考え方を持つ勝手極まりない人々を指すワードとして使われることが多くなってきていることも事実です。そんな「自分ファースト」な人々が引き起こした「実害」を取り上げているのは、人気ブロガーのきっこさん。きっこさんは今回の『きっこのメルマガ』で、一部の客の止まらない迷惑行為に廃業を決意した銭湯のX(旧Twitter)へのポストを紹介するとともに、自身が考える「自分ファースト」の人が増加する要因を記しています。
※本記事のタイトル・見出しはMAG2NEWS編集部によるものです/原題:自分ファーストの時代

迷惑行為で銭湯を廃業に。日本を蝕む“自分ファースト”な人々

5月16日、X(旧ツイッター)に一軒の銭湯の「閉店のお知らせ」が投稿され、その閉店理由が話題になっています。それは神奈川県座間市にある「亀の湯」という老舗の銭湯なのですが、以下が投稿された文面です。

亀の湯@座間 @zamakamenoyu

閉店のお知らせ
5月30日の営業をもって、亀の湯は閉店することとなりました。
詳しい内容は添付画像でご確認ください。
残り2週間、最後まで宜しくお願い致します。

(以下、添付画像の文面)

亀の湯 閉店のお知らせ

昭和42年にこの地に公衆浴場を開業し、約57年営業を続けてきました。
私の祖父が建てた最後の銭湯として、少しでも長く、と励んでまいりました。
大変残念ではありますが
令和6年5月30日で閉店することとなりました。
閉店の理由は様々ありますが、何よりも、営業する中で、駐車場のルール違反、カスハラ、壊したものを何も報告されないこと、備品を盗まれること、サウナ代を支払わずに無断利用されること、店舗敷地内並びに駐車場への一般ごみ、木材や家具などの不法投棄をされること、一度注意したことをやめてくれないなど、悲しい出来事があまりにも多いことで、営業を続ける意欲が無くなったことが一番の理由になります。
そういったことが一切ない、本当に亀の湯を大切に想って通い続けていただいているお客様がいることも、大変有り難く、その方達を励みに頑張ってきました。 ですが、もう限界です。
皆様が大切に想うお店が続けられるのは、お客様一人一人の誠意があってだと思います。これから先も他の公衆浴場や入浴施設を利用される方が多いと思います。もちろん同業以外の全てのお店でも同様です。
どうか、誠意あるお客様でいてください。お願します。

最後に、私たちに代わってから11年間、ご迷惑をお掛けすることも多々ありましたが、何とか営業を続けることができましたのは、ひとえにご来店いただくお客様、近隣住民の方のご理解があってのことです。本当にありがとうございました。 店主

午後1:37 2024年5月16日

この投稿は、5月21日の時点で430万回以上も閲覧され、1万2,000件を超える「いいね」と7400件を超えるリポストがありました。また、以下のようなコメントが数多く寄せられました。

《一番心折れるパターンか。お疲れ様でしたとしか言いようがない》

《迷惑行為で閉店に追い込まれるなんて悲しい》

《ここまで書かれるということは相当だったんですね…》

《客に混じるゴミのせいで…お疲れさまでした…》

《この閉店理由は悲しい。一部の客に閉店に追い込まれたと…》

《人の劣化が著しいなと感じる今日この頃です。大変、残念です》

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脱衣場に貼るも効果がなかった「魂の叫び」

店主に同情するコメントが続く中、あたしは次のコメントに目が止まりました。

《ついに、これをポストする時が来てしまったのですね。脱衣場に貼られた「魂の叫び」を拝読し、とても悲しい気持ちになりました。そのお約束通り、公式にリリースされるまで、口外せずにおりました。本当に、本当に残念でなりません。ありがとうございました。》

このコメントから察するに、今回の「閉店」は突発的なことではなかったのです。以前から一部のマナーの悪い客に業を煮やしていた店主は、脱衣所に「魂の叫び」と題する貼り紙をして、このままでは営業ができなくなってしまう、どうかマナーを守ってほしい、と訴えていたのです。しかし、今の世の中、こうした貼り紙はSNSであっと言う間に広まってしまい、その結果、逆効果になってしまうケースも多いため、店主は口外しないようにと書き添えていたのです。

このコメント主は、店主が言うところの「本当に亀の湯を大切に想って通い続けていただいているお客様」の1人だったのでしょう。そのため「本当に、本当に残念でなりません」という言葉から、店主と同じ悔しさが伝わって来ました。

いくら口頭で注意しても直してくれない。中には注意をすると逆ギレしてカスハラ(カスタマーハラスメント)に豹変する者もいる。仕方なく貼り紙をしても効果がない。耐えて、耐えて、耐えて来たが、もう限界だ…ということなのでしょう。

「亀の湯」のXのプロフィール欄には「神奈川県座間市で唯一の銭湯です。井戸水を薪で沸かしたお湯は、体の芯まで温まり、疲れが取れます」と書いてあります。こんなに大切な銭湯が、一部の非常識な客のせいで閉店に追い込まれてしまうなんて、本当に残念ですし、本当に悲しいことです。

あたしの中学時代の恩師である国語の先生は「常識は持っていて当たり前のものです。常識の上に他人に配慮する良識を持ってこそ一人前の大人です」と教えてくださいました。しかし、今回のような悲しい出来事を見聞きするたびに、あたしは、持っていて当たり前の常識さえも欠落した大人が増えて来たように感じるのです。

原材料費や人件費の高騰によって中小企業の倒産件数が過去最多を更新し続ける中、商売としては成り立っていたのに、別の理由で長年続けて来た家業を廃業しなくてはならないなんて、あまりにも気の毒です。例えは悪いかもしれませんが、せっかく震災で命を取り留めたのに、その後の避難生活の中で命を落としてしまった「震災関連死」と同じような無念さを感じます。

自分さえ良ければ他人などどうでもいいという「自分ファースト」の人が増えて来たのはSNSなどでも実感しますが、今回のように実害が出てしまうのは大きな問題だと思います。ま、日本のリーダーである総理大臣が、被災者や社会的弱者など二の次の「自分ファースト」の政治を続けているのですから、銭湯に通う庶民の中にも「自分ファースト」の人が増えて来るのは自明の理でしょう。

(『きっこのメルマガ』2024年5月22日号より一部抜粋・文中敬称略)

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